インドネシア中央銀行、金融政策における安定化の動き―2会合連続で金利据え置き
2025年11月19日、インドネシア中央銀行(BI)は2回連続となる金融政策の据え置きを決定しました。この背景には、通貨ルピアの安定化への強い意志と、世界的な金融不安定の中で国内経済の確実な管理が求められる状況があります。
今会合の注目点―7日物リバースレポ金利は4.75%で維持
インドネシア銀行の指標となる7日物リバースレポ金利は、今回も4.75%に据え置かれました。この金利は中央銀行の主要な政策金利であり、金融機関への貸し出しや預金など、多くの金融取引の基準となっています。また、翌日物預金金利は3.75%、貸出金利は5.50%に維持されました。
- 7日物リバースレポ金利:4.75%(前回と同じ)
- 翌日物預金金利:3.75%
- 貸出金利:5.50%
この据え置きの判断は、9月から150ベーシスポイントという大幅な利下げを実施した後、ルピアの安定や物価動向を慎重に見極める必要があるという認識から導かれています。
背景にある国際的な金融不安定とルピアの弱含み
世界的な金融市場の変動が続く中、インドネシアの通貨ルピアは対ドルでアジア新興国通貨の中でもっとも弱いパフォーマンスとなっています。2025年10月以降、ルピアは下落基調が続き、過去最安値付近で取引される日もありました。そのため、ルピア安止めとインフレ抑制が今回の会合の最優先課題とされました。
また、2025年から2026年までのインフレ率見通しは「2.5%±1%」の目標範囲に収まるとされており、これに沿った政策金利維持が意識されています。
ペリー・ワルジヨ総裁の会見内容から読み解く中銀の意図
インドネシア中央銀行のペリー・ワルジヨ総裁は記者会見にて、「今回の決定はルピアの安定維持という短期的な焦点に沿ったもの」と明言しました。また、直近の利下げサイクルの効果を慎重に評価しつつ、更なる金融政策動向を見定めていく考えです。
「金利引き下げは経済の下支え要因となるが、ルピア安が続く状況では安定を優先せざるを得ない。今後も世界的な不確実性の中で慎重な政策運営が求められます。」という発言からも、金融市場やエネルギー価格など外部要因への警戒感が強いことが伺えます。
過去の金利推移と現状の意味
- インドネシア中央銀行は2024年9月以降、基準金利を合計150ベーシスポイント引き下げてきました。
- 基準金利の4.75%は、2022年10月以来の最低水準となっています。
- 経済成長率は2025年に4.6%から5.4%の範囲に着地する見通しであり、比較的堅調な動きです。
- インフレ管理と為替安定のバランスで、政策の微調整が続いています。
7日物リバースレポの発表と市場動向
7日物リバースレポは、金融機関が中央銀行に預けた資金の調達コストを示す、重要な短期金利指標です。2025年11月発表においても、予想・前回値とも4.75%と事前予想通りの結果となりました。市場参加者はここ数ヶ月の利下げ効果への評価を慎重に進めており、今後の金利動向に敏感な姿勢を保っています。
インドネシア経済指標の概要
- ラスト(直近の政策金利):4.75%(2025年11月)
- 預金ファシリティレート:3.75%
- 貸出ファシリティレート:5.50%
- 外貨準備高:約1499億ドル(2025年10月)
- 銀行間レート:5.48%(2025年11月)
これらの指標は、金融機関における資金調達や貸出動向、外貨準備状況を包括的に反映しています。
国内経済への影響と今後の見通し
インドネシアでは経済成長率が5.1%程度と予想されるなど、グローバルな金融不安の中でも安定成長が見込まれています。しかし、ルピア安や資源価格の変動、不透明な世界経済など、不確実要素が根強いのも事実です。
今後の金融政策は、物価とルピア安定を最優先に、必要に応じて柔軟に運営される可能性が高いでしょう。「不確実性が高い中で利子を維持する可能性がある」という指摘もあり、過度な利下げによる為替への悪影響を警戒する姿勢が、中長期的な安定経済を重視するBIの政策方針に繋がっています。
まとめ:インドネシア中央銀行の金融政策は安定を重視
本記事でお伝えした通り、インドネシア中央銀行は、2会合連続の金利据え置きでルピア安定に最優先で取り組んでいます。世界的に不安定な状況の中でも、インフレ見通しや経済成長率を慎重に見極めつつ、堅実な金融政策運営を続けています。
この政策は、国内経済の安定と国際的な信頼を保つための重要な分岐点となっており、今後も市場参加者や国民からの注目が集まっています。現地の人々や企業にも密接に関係する動きですので、今後も中央銀行の発表に目を向けていきましょう。
参考:関連用語の解説
- インドネシア中央銀行(BI):インドネシアの金融政策を担当する政府機関。
- リバースレポ金利:金融機関が中央銀行に資金を預ける際の金利のこと。
- ベーシスポイント:金利や利回りの変動を表す単位(1ベーシスポイント=0.01%)。
- ルピア:インドネシアの法定通貨。
インドネシアの金融政策は経済と生活の土台です。今後も中央銀行の動向に注目しましょう。



