函館市恵山で初の火山噴火総合防災訓練―地域と行政が一体となって有事に備える

2025年11月18日、北海道函館市の恵山で、初めての火山噴火総合防災訓練が開催されました。本訓練は、函館市と周辺地域の住民、警察、消防、自衛隊や関係行政機関など異なる立場の約200人が参加し、地域防災力の向上と万全の準備を目的に実施されました

恵山とは―歴史ある活火山、絶えず観測される存在

恵山(標高618メートル)は、函館市の東側にそびえる活火山のひとつです。1800年代に2度の噴火記録があり、現在も気象庁による24時間体制の常時観測火山として監視されています。近年は目立った火山活動は認められていませんが、北海道には他にも活動的な火山が点在しているため、リスク管理は常に重要です

防災訓練の経緯とねらい

近年、全国的に頻発する火山活動や地震リスクに備える意識が高まる中、函館市恵山地区も例外ではありません。今回の防災訓練は、道、函館市、自衛隊、道警、海上保安部など11の関係機関で構成される恵山火山防災協議会の主催で実現しました。主要なねらいは、火山噴火発生時の初動対応や情報収集、避難指示・避難誘導の流れを関係者全員で具体的に体験し、実践的な手順を確認することです

訓練のシナリオと進行

  • 訓練は噴火警戒レベル2からレベル4あるいは5への引き上げが気象台から発表された、という想定から始まりました。
  • 地域住民への避難情報伝達や、住民・行政・機関が連携した避難の流れ、災害情報の収集、避難所の設営と運営に至るまで、多岐にわたる内容が盛り込まれています。
  • 恵山コミュニティセンターでは、受付を済ませた住民が体育館へ集まり、中学生などの若い世代も参加し、避難所設営や避難生活のシミュレーションを行いました。
  • 今回は特に、孤立地域発生を想定した海上輸送訓練(船による避難)も注目されました。地域ごとの実情を反映させた実践型のシナリオが工夫されています。
  • 避難所体験では、段ボールベッドなど避難所生活用品の活用も含め、多様な場面での課題を実感する場となりました。

参加者の声と現場の学び

参加した住民からは、

  • 「近くに火山があるので、もしもの時に迅速に避難できるようにしたい。」
  • 「年齢を重ねていると、避難時の要配慮者対策が大切だと感じる。」
  • 「段ボールベッドを使ってみると、多少のストレスはあるが、プライバシーが守られる面もあって有用だ。」
  • 「実際に体験することで素早く行動できる意識が高まった。」

といった声があがりました。学校の部活動単位や地域の役員も加わり、地域の垣根を越えた協力体制が築かれています

専門家によるアドバイスと防災の課題

火山防災の現場では、ただシステムや訓練手順が整うだけでなく、「住民自身の違和感への気づき」が大きなカギを握ります。北海道大学などの専門家は「火山の表面現象の小さな変化には、現地に頻繁に立ち寄る地元住民こそが速やかに気づける」と指摘しています。最新の監視技術や気象台の観測網でも、すべての前兆を把握できるわけではないため、日頃からの観察と住民の意識向上が不可欠です

北海道の火山災害の現状と今後

北海道地域は、雌阿寒岳や有珠山、北海道駒ケ岳など複数の活火山を抱えており、2025年9月には雌阿寒岳で小規模な噴火が記録され、警戒レベルの引き上げも行われました。また、2000年の有珠山噴火時には、事前予測と計画的な避難で犠牲者ゼロを実現するなど防災の重要性が再確認されています。

地域のつながりが生む減災の力

今回の訓練を通して見えてきたことは、地域住民、行政、専門家が一体となって防災力を高めることの重要さです。公式な観測だけに頼らず、住民自身が「昨日と違う」と思った変化を共有する意識――これが次の災害を防ぎ、減災へとつなげるのです。今回、多世代が積極的に訓練に参加し、住民同士が互いの状況に配慮する姿勢は、今後あらゆる自然災害への備えとして模範となるでしょう。

訓練の今後と期待される発展

恵山噴火総合防災訓練は、今後も年1回のペースで地域ごとに内容をカスタマイズしながら継続される予定です。災害時に孤立する可能性のある地域・住民や、子どもから高齢者まで多様な参加者を巻き込んだ取り組みに期待が寄せられています。今後も、行政と住民、そして専門家との連携強化により「誰も取り残されない防災体制」が築かれることでしょう。

おわりに

初の大規模な火山噴火総合防災訓練を経験した恵山地域は、新たなスタートラインに立ちました。未来の安全を守るためには、地域全体の防災意識を高め、それぞれが役割を理解して迅速に行動できる環境をつくることが何より大切です。誰一人取り残さない安心・安全なまちづくりのため、今後も恵山の取り組みが全国に広がっていくことを願います。

  • 訓練実施日:2025年11月18日
  • 場所:函館市恵山地区(コミュニティセンター・港湾など)
  • 参加者:約200人(住民・中学生含む)
  • 主催:恵山火山防災協議会(市・警察・消防・自衛隊ほか)

参考元