妊婦向けRSウイルスワクチン、2026年度から定期接種開始へ
厚生労働省は2025年11月19日、RSウイルス感染症を防ぐワクチンを妊婦を対象に2026年度から定期接種化すると発表しました。
これは日本では初めて妊婦向けの「母子免疫ワクチン」が定期接種となる画期的な取り組みです。
これにより、妊娠中にワクチンを接種した母親から胎児に免疫が受け継がれ、
生まれたばかりの赤ちゃんがRSウイルスによる重症化を防ぐ効果が期待されています。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染症は、
せきや発熱などの風邪症状を引き起こし、
特に生後間もない赤ちゃんが感染すると肺炎など重症化を招く感染症です。
毎年多くの乳幼児が入院し、医療現場ではRSウイルス感染症対策が課題となっていました。
日本小児科学会によると、RSウイルスは乳児にとって最重要感染症の一つとされており、
重症化した場合は入院や特別な治療が必要となるケースも少なくありません。
ワクチン定期接種化の背景
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赤ちゃんの重症化リスク軽減
生後間もない新生児は自身の免疫力が弱いため、RSウイルスに感染すると肺炎や気管支炎など
重い呼吸器症状を起こすリスクが高いです。 -
母子免疫による防御
妊婦がワクチンを接種することで、母体の免疫が胎盤を通じて胎児に移行し、
生まれてから数ヶ月間、赤ちゃんをRSウイルスから守ることができます。 -
医療現場の声
全国の小児科医から、赤ちゃんや乳幼児の重症RSウイルス感染に対する予防策の重要性が指摘されており、
専門協議会などから厚労省へ早期定期接種化の要望書が提出されていました。
RSウイルスワクチンとは
近年、世界各国でRSウイルス感染症に対するワクチン開発が進み、
日本でも厚生労働省の専門部会で安全性・有効性の審査が行われてきました。
今回定期接種化される「母子免疫ワクチン」は、妊婦が妊娠中に接種することで
赤ちゃんに免疫を付与できる仕組みです。
こうしたタイプのワクチンは「母子免疫ワクチン」と呼ばれ、
海外でも米国などで導入が進んでいますが、
日本国内での妊婦向け定期接種化は初めての試みです。
定期接種化の内容と今後の流れ
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開始時期
2026年度(令和8年度)から、全国の妊婦を対象に定期接種が始まります。
実際の接種開始は2026年4月以降を予定しています。 -
対象と接種方法
定期接種の対象はすべての妊婦です。妊娠中期以降にかかりつけの医師と相談しながら
医療機関で接種を受けます。費用は公費で賄われるため、負担は軽減されます。 -
妊婦への説明と相談体制
産婦人科や自治体ではワクチンの効果や副反応、安全性について
わかりやすく説明し、妊婦や家族が安心して接種できる体制を強化します。
妊婦向けワクチン定期接種化の意義
妊婦へのRSウイルスワクチン定期接種は、わが国のワクチン政策にとって大きな転換点です。
これまでは小児や高齢者向けのワクチン接種が中心でしたが、
母子免疫ワクチンにより、妊娠中から赤ちゃんを守る「母子の命を守る」先制的な予防策が導入されます。
これによって医療現場の負担が減り、重症化による乳幼児の入院や医療費も削減されると期待されます。
また、世界保健機関(WHO)が推奨する母子免疫戦略とも合致し、国際的に重要な動きです。
今後の課題と取り組み
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ワクチンの安全性監視
妊婦への新たな定期接種制度導入にあたり、安全性確認や副反応報告制度が慎重に運用されます。
信頼できる情報提供とフォロー体制強化が求められています。 -
普及啓発活動
地域医療機関や自治体、母子健康センターが連携し、
妊婦や家族への啓発活動が進められます。
正しい知識と理解を広げることで、安心してワクチンを受ける環境づくりが重要です。 -
医療従事者の研修
ワクチン接種の現場で産婦人科医や助産師を中心に研修プログラムが拡充し、
適切な問診・情報提供・副反応対応が行われます。
よくある質問
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接種はいつ推奨されるの?
妊娠中期以降、医師と相談して体調などを考慮しながら接種します。安全性や副反応のデータに基づいて推奨時期が示されています。 -
副作用はあるの?
発熱や腫れなど軽度の副反応が報告されていますが、臨床試験で重篤な副作用は極めて稀とされています。
妊婦・胎児への安全性確認は専門部会が慎重に審査しました。 -
費用はかかるの?
定期接種は公費助成のため、原則的に自己負担はありません。 -
赤ちゃんへの効果は?
妊婦が接種することで胎盤を経由して赤ちゃんの免疫防御力が高まります。
生後数ヶ月のRSウイルス感染症重症化リスクを大幅に減少させる効果が期待されています。
まとめと展望
2026年度から始まる妊婦向けRSウイルスワクチン定期接種は、赤ちゃんや家族を守る大切な施策です。
新しい「母子免疫ワクチン」の普及により、これまで重症化のリスクが高かった
新生児期・乳児期の感染症対策が大きく前進することになります。
妊婦自身と赤ちゃんを守るため、ワクチン接種について疑問や不安がある方は、
医療機関の窓口や自治体の相談窓口で気軽にご相談ください。



