東京海上ホールディングス、自己株式TOB(公開買付)を発表

東京海上ホールディングス株式会社(証券コード:8766、以下「東京海上」)は、2025年11月19日、同社の発行済み株式総数の4.2%を上限とする自己株式取得、いわゆる株式公開買付(TOB: Take Over Bid)を実施することを発表しました。この決定は、同社が近年進めている資本政策の一環として、機動的な資本構成の最適化および株主還元強化を目的としています。

TOBの詳細──価格・期間・株数

  • 公開買付価格:1株あたり5,220円
  • 公開買付期間:2025年11月20日(木)〜2025年12月18日(木)
  • 取得対象株数:最大24,904,100株(発行済み株式総数の約4.2%)
  • 買付総額:約1,300億円
  • 公開買付代理人:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • 応募予定株主:三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行

東京海上の発表によれば、今回のTOBは特定株主(三菱UFJ銀行および三菱UFJ信託銀行)が所有する政策保有株式を取得し、政策保有株をゼロに近づけることを主な目的としています。

TOB価格の特徴と株主への影響

  • 公開買付価格(5,220円)は、発表日前日(2025年11月18日)の終値(5,811円)と比較して約10%のディスカウントとなっています。
  • マーケット価格より低い水準でのTOB(ディスカウントTOB)は株主にとって珍しい形式であり、一般的なプレミアム(上乗せ)価格とは逆の動きです。

このディスカウントTOBにより、市場で売却した方が高値で売れるため、大多数の個人株主にとっては「市場で売る」「そのまま保有する」という選択肢が優位ですが、政策保有株としてまとまった株数を持つ機関投資家の売却ニーズを迅速かつ確実に消化するための公開買付となっています。

政策保有株式ゼロ方針の背景

近年、日本の大手企業を中心に、政策保有株式の削減、またはゼロ化を目指す動きが加速しています。政策保有株式とは、取引先や関係企業と資本関係を強化し企業間取引を安定化するために保有する株式ですが、グローバルなコーポレートガバナンス強化や資本効率向上の要請を受けて、保有意義が見直されています。ガバナンス改革の流れを受け、東京海上もこの方針に沿うかたちで自社株の取得を進めています。

今回のTOBの目的と期待される効果

  • 資本効率(ROE等)の向上
  • 資本政策の自由度向上による中長期的な競争力強化
  • 株主還元の観点での株価下支え効果
  • 政策保有株式削減による資本の流動性向上とガバナンス強化

また、上場の維持を前提としつつ、流通株式比率や株主構成の見直しによる資本市場での評価向上も期待されます。

株主の選択肢──どう対応すべきか?

  • 1:市場で売る

    公開買付価格より高い値段で売却できます。特に個人株主にとっては最も簡単かつ有利な選択肢となります。
  • 2:TOBに応募する

    三菱UFJモルガン・スタンレー証券を通じて応募できます。ただし、ディスカウントTOBのため、市場価格より安い価格での成立となります。
  • 3:そのまま保有する

    今後の資本政策や株主還元策、株価の動向を見据えて中長期保有も選択肢となります。

今回のTOBは特定の大株主の持ち分解消が主要な目的であり、一般投資家には直接的な強制力や特別なメリットはありません。自社株買いによる需給改善や長期的な資本効率向上の効果が期待される一方、TOB応募そのものは個人株主には有利とならないため、対応には注意が必要です。

他社動向・市場への波及効果

同日発表の中では、他にも複数の上場企業が自己株式取得やTOBを実施しており、東証の要請やガバナンス改革、キャッシュリッチ企業の還元姿勢強化が業界全体に浸透していることがうかがえます。

東京海上ホールディングスの今後

今後も国内大手金融グループを中心に、経営の効率性やコーポレートガバナンスに重点を置いた資本政策の動きは加速することが予想されます。自己株式取得の積極姿勢、さらなる株主還元策、グローバル展開など、東京海上の成長戦略や経営方針にも引き続き注目が集まることとなるでしょう。

まとめ

東京海上ホールディングスによる自己株式TOBは、政策保有株式ゼロ方針に基づく資本政策と、資本効率向上を目的とした重要な施策です。一部大株主向けのディスカウントTOBという珍しい形式ですが、株主還元や市場全体へのポジティブな影響も期待されています。

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