がん5年生存率の最新動向:胃がん・大腸がん・膵臓がん・胆のうがんの現状と日本の医療の進歩

はじめに

がん(癌)は現在、日本人の2人に1人が生涯のうちに診断されると言われるほど身近な病気です。医療技術の進歩や早期発見が進み、生存率は年々向上していますが、がんの種類によって生存率には大きな違いが見られます。
本記事では、国立がん研究センターが発表した最新の「がん5年生存率」のデータをもとに、特に注目される胃がん大腸がん膵臓がん胆のうがんを中心に、日本のがん医療の現状と課題をわかりやすく解説します。

がんの5年生存率とは?

5年生存率とは、「がん」と診断された方が治療開始から5年後に生存している割合を示す重要な指標です。一般的には「相対生存率」や「純生存率」のいずれかで示されますが、ここでは主に最新の大規模集計データによる「純生存率」を取り上げます。

  • 相対生存率:同じ年齢・性別などの一般集団と比べた生存率
  • 純生存率:がん以外の死亡を除いた純粋ながん治療の成績

生存率は治療技術の向上や早期発見により着実に向上してきていますが、がんの部位ごとにその数字は大きく異なり、課題も残っています。

がん5年生存率の全体像

国立がん研究センターの最新発表によると、成人(15歳以上)における全がんの5年生存率(純生存率)は約64%となっています。また、10年生存率も約59%まで到達しています。これは、がんと診断された方のうち、10年後にも約6割が生存しているということです。

  • 全がん5年生存率(成人・男女計):約64%
  • 10年生存率(成人・男女計):約59%
  • 生涯でがんと診断される確率:男性約62%、女性約49%(およそ2人に1人)

部位別がん5年生存率:胃がん・大腸がん・膵臓がん・胆のうがんは?

がんの部位によって5年生存率には大きな違いがあります。ここでは、特に注目される4つの部位について詳しく見てみましょう。

胃がん

胃がんの5年生存率は約64%(成人全体、2012~2015年診断データ:63.5%、便宜上64%と記載)。以前に比べて大きく向上しており、早期発見や治療の進歩が反映されています。一方、進行度によって生存率に大きな差があり、早期(限局)の場合は92%超と非常に高い数値を示しています。

大腸がん

大腸がん(結腸・直腸)の5年生存率は約67%(67.2%)。大腸がんも早期発見が重要であり、限局がん(早期発見例)では92%超の非常に高い生存率です。ただし、進行してから発見された場合は生存率が下がるため、検診の重要性が改めて指摘されています。

膵臓がん

膵臓がんの5年生存率は約10%(男性10.7%、女性10.2%)で、がんの中で最も生存率が低い部類に入ります。発症時に自覚症状が乏しく、進行してから発見される例が多いためです。1990年代から現在まで僅かながら生存率は向上していますが、依然として厳しい数値が続いています。

胆のう・胆管がん

胆のう・胆管がんの5年生存率も低く、約15%前後です(データによって若干のばらつきあり)。こちらも早期発見が難しく、また治療選択肢が限られるため、生存率は他のがんに比べて低い水準にとどまっています。

部位別5年生存率: 比較表

がんの部位 5年生存率(%) 主な特徴
63.5 早期発見なら9割超。進行度で大きな差。
大腸 67.2 早期発見で高い生存率。定期検診の重要性。
膵臓 10.7(男性)/10.2(女性) 生存率で最下位クラス。自覚症状に乏しい。
胆のう・胆管 約15前後 早期発見が難しく依然低水準。
乳房(女性) 88.7 非常に高い。検診受診率向上も要因。
子宮(女性) 75.9 比較的高いが、検診重要。
前立腺(男性) 94.3 がんの中でも最も高い部位。

このように、日本全体で見るとがん治療成績は着実に進歩していますが、膵臓や胆のう・胆管のがんは依然として厳しい課題を抱えています。

都道府県や地域別データの意義

今回の調査から、都道府県単位や地域別の生存率比較が可能になった点も非常に重要です。これにより、地域ごとの医療体制や受診環境、検診制度の整備状況などが浮き彫りとなり、今後の政策や取り組みに活かされることが期待されています。

特に、罹患率・生存率いずれにおいても「早期発見」と「適切な治療体制」の格差が数値となって現れるため、行政的な支援や住民への啓発の必要性が強調されています。

がん治療成績の年次推移と今後の課題

1990年代に比べて、ほとんどすべてのがん種で5年生存率は着実に上昇してきました。背景には手術・化学療法・放射線治療など医療技術の進歩、早期発見の普及、患者さんの治療への積極的参加などがあります。

  • 平均生存率(5年・10年ともに)上昇傾向
  • 前立腺、乳房、大腸などで大きく改善
  • 膵臓、胆のう・胆管、肝臓などは依然厳しい
  • 地域ごとの格差解消、検診受診率向上が喫緊の課題

一方で、膵臓がんなどのように、「早期発見が難しい」「有効な治療法が限られている」部位については、今なお生存率が低止まりの傾向にあります。このため、治療法の革新だけでなく、生体マーカーや画像診断など、より早い段階での発見技術の普及が今後の重要な課題となっています。

まとめとメッセージ

がんの5年生存率は、国民一人ひとりががんのリスク・現状を知るうえで非常に大切な指標です。日本の医療は着実に進化していますが、部位によって生存率に差があること、検診や健康管理の大切さを改めて意識する必要があります。
今後も、医療の進歩はもちろん、地域や社会全体で「がん」に立ち向かう仕組みづくりがますます求められています。ご自身やご家族の健康のためにも、がん検診や正しい知識を身につけることの大切さを忘れずに、安心して日々を過ごせる社会の実現を目指しましょう。

参考元