ホンダ株価に直撃する「ネクスペリア問題」――自動車業界を揺るがすサプライチェーン混乱、その実態と広がる波紋

はじめに――ホンダを襲った緊急事態

ホンダの株価が急激に変動し、自動車業界全体が大きく揺れています。背景にあるのは、「ネクスペリア問題」と呼ばれる半導体供給の混乱です。
半導体は現代のクルマにとって不可欠な電子部品。その出荷が突如停止したことで、ホンダをはじめ日産やトヨタ、欧州メーカーまで対応に追われる事態になっています。
このニュース記事では、「ネクスペリア問題」がなぜ発生し、ホンダの株価や自動車業界全体へどんな影響をもたらしているのか、分かりやすく丁寧にご説明します。

「ネクスペリア問題」とは何か?

今回の混乱の発端は、オランダの中国系半導体メーカー「ネクスペリア」による半導体チップの出荷停止にあります。
ネクスペリアは、自動車向け電子部品で世界的に高いシェアを持っています。
特に信号処理用のチップやパワーデバイスなど、小型車から高級車まで幅広く搭載されており、ほぼ全てのメーカーがその製品を使っているのが現状です。

2025年9月末、オランダ政府が経済安全保障上の理由からネクスペリアの経営権を管理下に置く措置を取りました。
これに対し中国政府が強く反発し、10月4日には中国国内からネクスペリア製品を海外へ輸出することを禁止する措置を発表。これが「ネクスペリア問題」の発端です。

この結果、ホンダ、日産、マツダなど日本の自動車メーカーのみならず、世界中のメーカーにも大きな衝撃が走りました。
「単一の部材サプライヤーからの調達に偏っていたリスクが現実化した」との声も上がっています。

ホンダの生産停止と株価への直接的影響

ネクスペリアの出荷停止により、2025年10月28日からホンダはメキシコの四輪車工場で生産を一時停止しました。また、北米市場でも生産調整を余儀なくされ、米国・カナダでは生産規模を大幅に縮小し、およそ「7割減産」という深刻な状況となりました。

「HR-V」など人気車種の生産ラインが止まったことで、ホンダは2026年3月期の通期営業利益予想を1,500億円下方修正
「生産影響は約11万台に及ぶ」とも言われており、投資家心理にも大きな不安が拡がりました。
こうした事態は当然株価にも大きな影響を与え、ネクスペリア問題発覚後、ホンダ株は大きく値を下げました。

  • メキシコ工場、米国・カナダでの減産により北米市場での販売計画が大きく狂う
  • 営業利益の大幅減額修正により株価下落、投資家が警戒感を強める
  • サプライチェーン依存リスクが鮮明化し、株主・顧客両面で信頼喪失の恐れ

さらに、香港や欧州など海外市場にも影響が及び、ホンダ株価は世界的に不安定な動きを見せました。
経営トップも「できるだけ早く対策を講じる」と強調しましたが、先行き不透明感が払拭されず、市場の動揺は容易に収まっていません。

日産・トヨタ・マツダ…広がる波紋、業界全体へ拡大する影響

ホンダだけでなく、日産やマツダ、トヨタといった他の自動車メーカーにもネクスペリア問題は波及しています。
日産は九州工場で11月24日から再び減産計画に入る見通しで、国内外工場で生産ラインの調整を進めています。

マツダ・トヨタもサプライヤーへの影響把握や代替品調達の検討を急いでいますが、「半導体の種類が多く、そのほとんどが自動車製造に不可欠」とされており、状況の打開は容易ではありません。

一方、部品サプライヤー大手ジェイテクトのトップは、「直接的な影響よりもネクスペリア部品を使う他サプライヤーでの不足が懸念材料」と発言するなど、サプライチェーン全体が複雑に絡み合う問題となっています。

  • 日産は一次サプライヤーでの影響確認に注力、さらに2次サプライヤー以降での波及調査を継続
  • トヨタやトヨタ紡織も「クルマ全体への生産影響を注視。リスク管理強化が急務」とコメント
  • 自動車工業会(自工会)としても「業界の危機」として緊急声明を発表する事態に

ネクスペリア問題が暴いた「サプライチェーンのぜい弱性」

半導体不足への教訓を活かすべく、各社はコロナ後に一定量の中間在庫確保やサプライヤー分散化を進めていました。
しかし今回は、中国による即時の輸出ストップという「緊急事態」に右往左往する形となり、「地政学リスク・有事対応の難しさ」が改めて浮き彫りになりました。

サプライチェーン関係者は、「3か月以上の準備期間があれば何とかなったが、今回は突然すぎてどのメーカーも想定外だった」と説明。
世界に張り巡らされた供給網の一部で問題が生じても全体が大混乱に陥る――グローバル経済時代の弱点が露呈した形です。

さらに、ネクスペリア問題が長期化すると、メーカー各社はコスト増加分を商品価格へ転嫁せざるを得なくなり、最終的には私たち消費者の生活にも広く影響が波及するリスクも指摘されています。

一時的な収束と今後の展望

一方で、11月初旬には中国側がネクスペリア製品の一部輸出を解禁する動きがあり、オランダ政府も事態の沈静化へ向け協議を続けています。
ホンダは「できるだけ早く生産再開したい」とし、11月17日~21日に生産正常化を目指す方針を発表しました。
それでも、完全な正常化には時間を要し、部品不足への恒久的な対策構築が求められています。

業界全体でサプライチェーンの多元化や調達リスク分散が加速するのは間違いなく、グローバルなビジネス構造の変化が進みそうです。
「今後は、サプライヤー選定や在庫戦略、地政学的リスク対応力がメーカー存続のカギとなる」という声が広がっています。

まとめ――ホンダ株価と自動車業界のこれからに注目

ホンダの株価は、ネクスペリア問題発覚以降、営業利益の下方修正や減産発表など連日の悪材料で下値を探る展開が続いています。
ただし、サプライチェーン再構築や部品調達の多様化、政府間協議による一時的な緩和策など、今後の動きしだいで反発の可能性もあります。

今回の一連の騒動は「電子部品一社依存の危うさ」、「グローバルなリスク管理の重要性」を世界中の自動車業界へ突きつける出来事となりました。
私たち消費者にも、価格変動や品不足などの形で身近な影響が及ぶかもしれません。
今後も業界動向やホンダ株価の推移に注目したいところです。

  • ホンダはサプライヤー多元化や在庫調整戦略の見直しを急ぐとともに、政府間協議による安定供給にも期待。
  • 日産・トヨタ・マツダなど他社もサプライチェーン強靭化の動きを強めている。
  • 株価は悪材料が織り込まれつつも、ネクスペリア問題の早期収束や需給正常化が市場の安心材料となる可能性も。

今後もネクスペリア問題の推移と共に、各自動車メーカーの対応策や株価動向から目が離せません。

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