ロバート・デ・ニーロと共演 名作「タクシードライバー」NHK BSで放送決定──その魅力と作品の深淵に迫る

はじめに ── 伝説の名作がまたスクリーンに蘇る

1976年、ニューヨークの街を舞台に一人の男の孤独と狂気を描き切った名作映画「タクシードライバー」ロバート・デ・ニーロが主演を務め、マーティン・スコセッシ監督との黄金タッグによって生み出された本作は、映画史に確かな爪痕を残した一本です。その「タクシードライバー」が2025年11月18日(火)午後1:00〜午後2:55、NHK BSにて放送されます。名優による伝説の名演、そして時代を超えて語り継がれる物語が、いま改めて日本のお茶の間に届けられます

「タクシードライバー」とはどんな作品か?

  • 監督:マーティン・スコセッシ
  • 主演:ロバート・デ・ニーロ
  • 脚本:ポール・シュレイダー
  • 公開:1976年
  • 音楽:バーナード・ハーマン
  • 主要キャスト:シビル・シェパード、ジョディ・フォスター
  • 受賞歴:第29回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞

本作は、ベトナム戦争帰還兵の青年トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)が、眠れぬ夜のニューヨークをタクシーで流しながら社会への絶望と孤独に飲み込まれていくさまを描きます。脚本家ポール・シュレイダーとスコセッシ、そしてデ・ニーロの三者の才能がぶつかりあって生まれたこの物語は、アメリカ社会が抱える闇や混沌、人間が持つ危うさを鮮烈にあぶり出します

ストーリーの概要 ── 孤独と暴力の彼方へ

トラヴィス・ビックルは、ベトナム戦争から帰還したものの不眠症に苦しみ、夜のタクシー運転手を始めます。ニューヨークの退廃する空気の中で、彼は汚れた街と人間を憎むようになるのです。仕事中、選挙事務所スタッフの女性ベッツィに淡い恋心を抱きますが、常識外れのデートで拒絶されてしまいます。やがて、13歳の少女アイリス(ジョディ・フォスター)と出会うことで、トラヴィスの心はさらに暴力の衝動へと駆り立てられます。本作の終盤では、彼の「正義感」による衝動的な行動が混沌と暴力のクライマックスを迎えます。

  • 社会に適応できない孤独な男として描かれたトラヴィスの物語は、都市生活の病理と個人の心の闇を象徴しています。
  • 複雑な人間心理、そして「正義」と「狂気」が曖昧に混ざり合う構図が、今なお多くの観客の胸を打つ要因となっています

ロバート・デ・ニーロの驚異的な存在感

主演のロバート・デ・ニーロは、「タクシードライバー」にて俳優人生の代表ともいえる鬼気迫る演技を披露しました。彼はトラヴィス役のためにタクシー運転手の研修を受け、極限まで役に同化。劇中の有名なセリフ「You talkin’ to me?」は、まさに映画史に残る瞬間です。彼の孤独、苦悩、狂気の表現はリアルかつ圧倒的であり、観る者すべてを物語の闇へと引き込みます

ジョディ・フォスター、13歳での衝撃的な挑戦

もう一人、忘れてはならないのがジョディ・フォスター。当時13歳だった彼女が演じたアイリスという役は、複雑な環境下にある少女を体当たりで演じ、映画界に強烈な足跡を残しました。アイリスという存在は、トラヴィスの暴走や物語に不可欠な存在として描かれ、フォスター自身のキャリアにおいても大きな分岐点となった作品です

スコセッシ監督が描き出したニューヨークの光と影

マーティン・スコセッシ監督は、本作を通じて1970年代のニューヨークの荒廃した空気、混沌と犯罪が渦巻く社会の現実、そしてその中で蠢く人間の孤独や絶望を、ドキュメンタリーのようなリアリズムで捉えました。ニューヨークの闇に飲み込まれていく一人の人間の姿と、そこに潜む危うい救済の予感――このバランス感覚が「タクシードライバー」をただの犯罪映画から、映画史に残る芸術作品へと押し上げています

社会背景──アメリカン・ニューシネマの金字塔

  • 「タクシードライバー」は、1970年代のアメリカ社会のリアリティ──ベトナム戦争後の社会不安、都市の犯罪・貧困、帰還兵の精神的孤立──を色濃く反映する作品です。
  • アメリカン・ニューシネマの流れを汲み、従来のハリウッド映画の価値観から大きく脱却し、リアルな暴力や倫理観の揺らぎを描き出しました。
  • 公開当時から賛否を巻き起こしつつも、その芸術性・心理描写・社会性が世界中で高く評価され、後続の作家に影響を与え続けています

名作が世代を超えて愛される理由

「タクシードライバー」が誕生からおよそ50年を経てもなお、色褪せず語り継がれる理由はいくつもあります。デ・ニーロの圧倒的パフォーマンスとリアルなキャラクター造形、スコセッシの演出の力に加え、シュレイダーの脚本が社会の病巣と個人の孤独をリアルかつ鮮烈に描き出していることが挙げられます。ニューヨークという都市の持つ不安定さと退廃、そこに生きる人々の希望と絶望が、現代の私たちにも強く訴えかけるのです

NHK BSでの放送、その意義と楽しみ方

  • NHK BSは、世界各国の名作映画を高画質・ノーカットで放送する取り組みをここ数年継続してきました。
  • 今回「タクシードライバー」もその一環としてラインナップされ、日本の映画ファンにとってまたとない機会となります。
  • デ・ニーロの演技や、1970年代のニューヨークの街並み、独特の色彩や音楽など、スクリーンでなければ味わえない強烈な体験を、ぜひこの機会に堪能してほしいものです

他にも並ぶ名作たち(11月後半NHK BS編)

NHK BSでは、11月後半にかけて「タクシードライバー」をはじめとする珠玉の名作映画がラインナップされています。映画通もうなる重厚な作品がそろい、各作品の映像美やメッセージ性、俳優たちの演技合戦も見逃せません。

  • 社会派ドラマ、サスペンス、ヒューマンストーリーなど、映画史に刻まれた本物の名作ばかり。
  • 作品ごとに時代背景や社会の問題意識も異なり、それぞれ違った角度から“人間とはなにか”を問いかけてきます。
  • やさしく解説される特集や識者のコメントなど副音声的な解説も充実しており、初めて観る方にもおすすめです。

おわりに──「タクシードライバー」が遺したもの

「タクシードライバー」は、ただの映画ではありません。社会の中で孤独を抱える現代人の痛みを鋭く抉り、退廃した都市の現実を冷徹に、そして詩的に映し出します。ロバート・デ・ニーロの鬼気迫る存在感、マーティン・スコセッシ監督の革新的な映像表現、そして生々しく不穏な音楽──それらすべてが混ざり合い、いまだ多くの人々に影響を与え続けているのです。

11月18日のNHK BS放送は、新たな世代にもこの「危うさ」と「美しさ」を伝える貴重な機会となるでしょう。かつて本作を観た方も、初めて触れる方も、この名作が持つ人間味と狂気、そして芸術としての深い魅力を、ぜひご自宅で味わってみてください。

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