ヤクルトスワローズ2025年秋季キャンプ特集 ― チーム一丸で「全体の底上げ」目指した松山キャンプの舞台裏
2025年11月2日から11月17日まで、東京ヤクルトスワローズの秋季キャンプが愛媛県松山市・松山中央公園野球場(坊っちゃんスタジアム)で開催されました。球団を支える選手たちと新生指導陣が一丸となり、これまでの常識とは異なる「選手をふるい落とす」ことよりも「全体のレベルアップ」をテーマに、例年以上に熱気あふれる秋が繰り広げられました。今季のキャンプをじっくり振り返り、その狙い、注目の動き、今後への期待感を分かりやすくお届けします。
これまでと違う、2025年秋季キャンプの方針
例年、秋季キャンプというと若手の育成や競争が強調されがちでした。しかし、今年のヤクルトは「総合力を高める」ことに重きを置き、各選手が自分の成長ポイントに着実に取り組みながら、全体としての完成度を高める姿勢が目立ちました。実戦形式の練習や個別課題への取り組み、そして選手同士のフィードバックが随所で交わされるなど、「ふるい落とす」という従来型の選別路線からの大きな脱却が感じられました。
「世界のムーチョ」中村悠平、最年長の存在感
秋季キャンプでも特に大きな注目を集めたのが、最年長の中村悠平捕手です。ベテランらしい確かな技術と多彩なリード力はもちろん、若手選手の模範となる姿勢やプレーでグラウンドの空気を一変させる存在となりました。「やっぱり凄い」「さすが世界のムーチョ」と、ファンの間でも驚きと感嘆の声が広がりました。中村選手の野球観や日々の取り組みが、キャンプの模範となり、選手間での相乗効果を生み出しました。
心を一つに ― 新主将・古賀優大選手の手締め
キャンプが終盤に差し掛かると、新たに選手会長に就任した古賀優大捕手が中心となり、<自分の課題に真正面から向き合う>ことを改めて全体に呼びかける場面も。最終日の手締めでは「それぞれが自分の課題克服への取り組みを持ち帰ろう」と語り、仲間たちの努力や成長を拍手でたたえ合う光景が印象的でした。新たなリーダーシップの誕生が、来季に向けてのチームの一体感を大きく育んでいます。
キャンプ参加メンバーと注目の選手たち
2025年秋季キャンプには、投手陣から中村優斗選手、奥川恭伸選手、石原勇輝選手など15名、捕手には内山壮真選手、鈴木叶選手、中川拓真選手等が参加。内野手の若手筆頭格・赤羽由紘、西村瑠伊斗、北村恵吾、外野手の丸山和郁、モイセエフなど将来性豊かな面々が名を連ねました。それぞれが個性と課題をぶつけ合い、キャンプ限定ならではの濃密な練習時間が続きました。
- 特打で柵越え連発 ― 捕手・鈴木叶選手など、若手の台頭も目立ちました
- “バットを持つ監督” ― 実戦練習では池山隆寛監督自らがバッティングピッチャーを務め、若手にダイレクトで打撃指導を行うなど、徹底した現場主義が貫かれました
- 多くの選手が自身のフォームや守備、コンディション調整にじっくり時間を割き、特に「とにかく反復、細部にこだわる」練習精神が根付いていたのが印象的でした
地域と歩むキャンプ、愛媛からの贈り物と歓迎セレモニー
ヤクルトスワローズの秋季キャンプは地域との深い交流も大きな特徴となっています。初日には池山監督以下全メンバーが松山空港に到着し、地元ファンや関係者による歓迎セレモニーが華やかに開催されました。また、愛媛県からは食材の「愛育フィッシュ」が贈られるなど、地域一丸となった応援ムードがチームの士気を後押ししました。プロ野球キャンプが地域活性やスポーツ振興の一助となっている様子がよく伝わります。
ベテラン・若手が一体となった「成長型キャンプ」
印象的だったのは、ベテランが若手を牽引し、かつ若手も自発的にチャレンジするという「全員参加型」の空気。中村悠平選手の守備や配球に若手捕手たちが食い入るように学び、またベンチやブルペン外でもポジティブな声かけが随所で見られました。主力でありながらも全員が「自分ごと」として課題に果敢に取り組む姿勢から、来季にきっと繋がるであろう“底上げの手応え”を多くの関係者が口にしています。
「一人じゃない」という意識が根付いた今季のキャンプ。個々の殻を破る挑戦とチームワークの強化が、スワローズの新たな伝統になりそうな気配です。
ファンの声―現地レポートとSNSの反響
坊っちゃんスタジアムには平日でも多くのファンが詰めかけ、練習の合間には「成長してる」「昨年と全然違う」といった前向きな声が飛び交いました。TwitterやYouTube配信でも「池山監督の熱血指導が伝わる」「若手の表情が活き活きしている」といった感想が溢れ、現地パワーが日本全国のファンへと波及しました。
また、遠方からの観戦客や家族連れ、地元小学生の体験イベントなど、キャンプが市内の憩いの場として溶け込んでいる様子も確認できました。選手が身近に感じられる距離感が、ヤクルトスワローズの魅力をより高めているといえるでしょう。
まとめ ― 「ふるい落とす」から「全体進化」へ。スワローズの未来に期待
今回の松山秋季キャンプは、これまでの選手競争偏重路線から「全体のレベルアップ」へ大きく舵を切った、新しい時代を感じさせる内容となりました。ベテランの手本、若手の台頭、新リーダーの誕生、そして現場主義の徹底――そのすべてが、来シーズンのスワローズの大躍進へと向かう力となっています。選手たちの「気づき」や「成長」に溢れたこの17日間は、ファンにとっても心強い希望となりました。
2026年春、より進化した東京ヤクルトスワローズの活躍と、優しいチームカラーが日本球界に新たな風を吹き込んでくれることに、期待が高まります。



