生活保護費2.5%引き下げ案了承と全額支給案の併記―揺れる支援の今をやさしく解説
2025年11月17日、厚生労働省の専門委員会は「生活保護費2.5%引き下げ案」を了承すると同時に、「全額支給案」も併記するという重要な決定をしました。これは現在の経済状況や国民生活への影響が強く意識される中で、生活保護制度のあり方が大きく問われている現状を反映したものです。本記事では、このニュースの内容や背景、今後の見通しについて、わかりやすくていねいに解説します。
生活保護費とは?――安心を守る社会的な制度
生活保護は、経済的に困難な状況にある方々の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための公的制度です。生活に必要な費用(食費・住宅費・医療費など)を基準に計算し、国や地方自治体が支給します。2025年6月時点で、日本全体では約198万8,497人が生活保護の対象となっており、その世帯数は164万5,202世帯にも上ります。
- 生活扶助:食費・被服費・光熱水費など、日常生活を送るために最低必要な費用
- 住宅扶助:家賃や地代など住居関連の費用
- 医療扶助:治療や療養にかかる医療費
- 教育扶助:義務教育に必要な費用
生活保護の基準や支給額は、物価や生活費の動向、地域の事情、世帯の構成などを踏まえて、定期的に見直されています。
今回の「2.5%引き下げ案」とは?
2025年度の生活保護基準の見直しで、専門委員会では2.5%の引き下げ案が了承されました。都市部の高齢単身者世帯では、月あたり数千円の減額になることも想定されています。
背景には、物価や賃金の動向、他の先進国との比較、そして財政状況などさまざまな要因があります。特に、高齢者や単身世帯に対しては減額幅が大きくなる可能性が指摘されており、受給世帯の55%を占める高齢者世帯や都市部居住世帯の多くで手取り額が減ることが心配されています。
「全額支給案」も併記――なぜ対立する意見が並ぶのか?
しかし、この「引き下げ案」には強い反発もありました。専門委員会では、最低限度の生活保障の観点から、「全額支給案」も併記する異例の対応が取られています。これは、物価高騰や収入格差の拡大、長期的な貧困層の増大など、社会問題化する課題が山積しているためです。
さらに、厚生労働省はこの議論を受けて「全額支給を引き続き検討すべし」という意見も尊重し、柔軟な調整の余地を残す姿勢を示しました。国会では、より広い議論が求められています。
過去の減額と最高裁判決――違法とされた経緯
生活保護の引き下げは初めてではありません。平成25年以降、数度の大幅な減額措置が実施されてきましたが、2025年6月、最高裁はこうした過去の引き下げ処分について違法と判断し、取消しを命じる画期的判決を出しました。
この判決は、憲法25条が定める「生存権」を守るべきとの立場を明確にしたものであり、政府にも影響を与えています。一部の生活保護基準や各種加算項目(母子加算など)も過去の減額が違法とされ、再計算や返還手続が進行しています。
国際比較でも問われる「最低生活保障」の水準
生活保護基準の引き下げは、国際的な水準とも比較され議論されています。たとえば、日本の高齢単身生活保護基準は他のOECD先進国と比べ低下傾向にあり、2024年度には韓国やドイツの基準額に追い抜かれている現状も指摘されています。
ドイツでは法改正により、基準額の引き下げが必要な場合でも法律上「据え置き」が定められ、減額には慎重です。日本と同様に物価連動で引き上げられる国が増えている中、日本の引き下げ方針は「先進国として異例」とする厳しい意見も生まれています。
物価高騰と追加加算――現場の生活はどう変わる?
一方で、厚生労働省は2025年10月から2年間、生活扶助の特例加算を月1,500円へ引き上げることも決定しています。これは物価や生活費の高騰に対応し、低所得世帯や高齢者、単身世帯への支援を強化する狙いがあります。
具体的には、これまでの月1,000円の上乗せから500円増額し、各世帯でより多くの支援が受けられる仕組みです。基準額自体は居住地や世帯構成、年齢など複雑な要素で計算されますが、「一律の加算」によって底上げ効果が期待されています。
それでも一部の専門家や議員からは、「物価高に追いつかない十分な加算ではない」として、さらなる支給拡大や基準額の抜本的見直しを求める声も強まっています。
現場からの悲鳴と期待――「引き下げ反対」「全額支給を」
現場の支援団体や当事者からは、「生活の実態に合わない減額は困る」「セーフティネットが十分ではない」といった切実な訴えが高まっています。特に、高齢者や子育て世帯、障害のある方にとってはわずかな減額でも生活の質に大きな影響が及ぶため、慎重な運用が強く求められています。
一方、政府も「適切な最低生活保障」の意義を認め、今後の経済状況や調査をもとに、改めて基準額や加算の見直しを検討するとしています。
- 全額支給案の併記は、弱い立場の人々の声を政策に反映し続ける意志の現れ
- 今回の引き下げ案はあくまで「案」であり、今後の情勢や議論で見直される可能性もある
今後の見通しと課題――国民的な議論へ
今後の最大のポイントは、今回併記された「全額支給案」がどのように扱われるか、そして国民や関係者の動向にどう応えるかです。生活保護水準の維持・向上を求める声は高まり続けており、国会や地方自治体、福祉関係者の間で活発な議論が予想されます。
また、生活保護は単なる金銭給付ではなく、住居、医療、教育、自立支援などさまざまな支援が連携している制度です。今後は、現場と政策をじっくりつなぐ「対話」を重ねながら、国民の信頼と安心を守る抜本的な制度設計が求められるでしょう。
皆さんも今後のニュースや政策議論にぜひ注目し、ご自身や周りの人たちの暮らしと社会の未来を考えるきっかけにしてください。



