「ギフテッド」児童生徒への新たな支援体制――理数教科に焦点を当てた文部科学省の次期学習指導要領案とは

文部科学省は2025年11月13日、次期学習指導要領に向けた中教審作業部会にて、特定の分野で著しい才能を持つ「ギフテッド」と呼ばれる児童生徒への支援について、重要な方針を示しました。今回、その支援策の中でも特に算数・数学や理科など、理数教科を主な対象とする新たな特例制度案を発表し、注目を集めています。

ギフテッドとは?

ギフテッドとは、一般的にはある特定分野において顕著な才能や高い能力を持つ子どもたちを指します。日本国内においても、従来から「飛び級」や「特別支援教育」などの仕組みは存在していましたが、より体系的な支援の必要性が指摘されてきました。

  • 知能や創造性が際立って高い
  • 学習スピードが非常に速い
  • 独創的なアイデアや論理的思考力を発揮する
  • その反面で、発達上の特性や困難さを併せ持つ場合も多い

今回の文部科学省案のポイント

文部科学省が示した次期学習指導要領案では、ギフテッド児童生徒の個々の特性に応じた個別学習指導計画を作成できる特例制度の導入が打ち出されました。注目されるのは、その主な対象領域として算数・数学や理科を挙げている点です。

  • 特に理数分野で突出した能力を持つ児童生徒を対象とする
  • 個別に学習指導計画を作成し、学びたい意欲や能力を最大限に伸ばす環境を整える
  • 例えば、中学生が高校で授業を受けたり、空き教室で大学のオンライン講義を受講する形も想定
  • ギフテッドの特性による学習や生活の困難さにも配慮し、支援を組み込む

ギフテッド児童生徒の課題と今後の支援のあり方

ギフテッドの子どもたちは、ただ才能を発揮するだけでなく、その発達特性ゆえに学習や学校生活で悩みや困難を感じることも少なくありません。たとえば、周囲とのコミュニケーションに不安を持ったり、既存のカリキュラムでは知的好奇心が満たされず、学習意欲の低下につながる例もあります。

今回の支援制度によって

  • 才能を持つ子どもたちが、自分の力を活かせる場を持つことができる
  • その一方で、精神的なサポートや周囲との協調性を育む取組も重要視されている

多面的な配慮が求められています。

どんな学び方になる?想定される支援内容

具体的に想定されている支援方法は、従来のクラス活動に加えて、児童生徒の学習段階に応じた柔軟な学習プランの導入です。

  • 高校の科目を先取り受講

    中学生であっても、高校レベルの数学や理科の科目を受講できるようにする
  • 大学のオンライン講義の活用

    校内の空き教室や自宅で、大学が提供する先端的なオンライン講座に参加
  • 総合的な学習の時間の活用

    規定の授業以外にも、特別な課題研究やプロジェクト学習に取り組む
  • 個別学習指導計画の作成

    各児童生徒の能力や希望に応じて、先生や専門家と相談しながら最適な学習計画を立案

さらに、ギフテッド児童生徒の多様な困りごとにも配慮し、心理的なサポートや周囲の理解を促す取り組みも検討されています。

なぜ理数系に焦点を当てるのか?

今回、主な対象教科が算数・数学・理科とされた点については、次のような背景や理由が考えられます。

  • 理数分野で突出した成績や発想を示す「ギフテッド」児童生徒が、現行の一斉指導体系では力を十分に伸ばしきれないケースが多かった
  • 社会のデジタル化や科学技術分野の発展にともない、理数系人材の育成が国全体の戦略課題とされている
  • 専門知識や探究的学びがより重要視され、既存の学年やカリキュラムにとらわれない柔軟な教育体制の重要性が増している

もちろん、今後は他の教科領域への拡大や、「複数分野にまたがる才能」への配慮も指摘されていますが、まずは理数教科を中心に運用を始める形となります。

支援ガイドライン作成へ――今後の社会的議論と期待

支援の具体的な対象や制度運用については、今後、文科省によるガイドラインの作成が予定されており、様々な現場の意見や専門家知見も踏まえた議論が必要とされています。

  • 学校現場での受け入れ体制や教員の研修
  • 保護者や同級生への理解促進活動
  • 必要に応じて専門機関や外部専門家との連携

また、支援制度の公平性や、制度利用によるラベリング(差別や分断)への懸念も議論の的となっています。「ギフテッド」支援が特別な子だけのものではなく、全ての子どもの成長を後押しする教育環境づくりと両立することが強く求められています。

ギフテッド支援を通じて目指す未来とは

新たな時代の教育改革として、今回の文部科学省案には多数の期待と課題が乗せられています。ギフテッド児童生徒がより自分らしく学び、成長できる機会が広まり、理数分野における先端的な才能が日本社会を牽引する原動力となることが期待されています。

学校現場や教育関係者、保護者、そして社会全体で、どのように子どもたち一人ひとりの「個性」と「才能」を伸ばし、多様性を大切にする共生社会を築いていくか――これからの議論と実践が注目されます。

参考元