荏原製作所グループ概観 ― 歴史と成長の歩み
荏原製作所は、流体技術を核に、ポンプやコンプレッサ、タービン、送風機、冷凍機といった幅広い製品を創出し、長年にわたり日本および世界の産業やインフラを支えてきた企業です。創業当初のポンプ事業で培われた技術と経験を基盤に、建築・産業、エネルギー、インフラ、環境、精密・電子事業と事業領域を拡大し、多様な社会課題の解決に取り組んでいます。特に近年では、最先端の半導体市場や、水・環境インフラ、防災・減災分野への貢献が注目を集めています。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって、現場作業の属人化解消や技能伝承の効率化も推進しており、持続可能な社会への貢献が企業理念の中核となっています。
荏原実業が発表した2025年12月期業績予想の上方修正
2025年11月6日、荏原製作所グループの中核子会社である荏原実業(証券コード:6328)は、2025年12月期の連結業績予想のうち営業利益を45億円から51億円(前年比19.9%増)へ上方修正すると正式に発表しました。売上高予想は400億円(前年比6.7%増)と据え置かれたものの、利益予想の上方修正は大きな好材料となり、翌日の株式市場では同社株が大幅に続伸しました。
この背景には、以下の要因があります。
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エンジニアリング事業の好調
特に公共水インフラ設備の老朽化に伴う更新・整備需要や、国の「国土強靱化基本計画」による防災・減災需要の増加が続いています。社会的なインフラ再整備機運が高まる中で、同分野での受注増加と、高い利益率を維持できていることが、全体業績を押し上げています。 -
メーカー事業・商社事業の課題
一方で、荏原実業のメーカー事業・商社事業は当初見込んでいた売上規模に届かない見通しとなっていますが、これを充分に補うエンジニアリング事業の収益拡大が評価されています。
このような状況により、2025年12月期の利益成長に大きな期待が寄せられています。
最新決算実績と株式分割発表のインパクト
2025年1月~9月の第3四半期累計決算として、売上高は292億5600万円(前年比10.0%増)、営業利益は43億800万円(同42.1%増)という著しい増収増益の結果が示されました。これにより、同社の事業好調ぶりと収益力の大幅な向上が実証される格好となりました。
加えて、2025年12月31日を基準日とする1株を2株に分割する株式分割の実施も併せて発表されました。これにより、
投資単位を引き下げて投資家の参入障壁を下げるとともに、株式の流動性向上や新たな投資家層の拡大効果が期待されます。市場では、将来の成長性と健全な株主政策の双方が強く意識されました。
エンジニアリング事業の社会的重要性と今後の展望
エンジニアリング事業は、近年特に公共インフラ維持と環境対応分野において社会的使命を増しています。日本国内では上下水道や浄化施設といった水インフラの老朽化が急速に進行しており、更新・再整備の需要が増大しています。また、「国土強靱化基本計画」をはじめとする国の大型予算投入により、防災・減災に資する設備投資も活発化しています。
このような強い社会的ニーズに応え、荏原実業では高度な技術力とプロジェクトマネジメント力を背景に、多数の設備更新・整備工事を受注。売上総利益率も着実に改善し、企業収益の基盤としての存在感を高めています。今後も各地自治体や民間企業と連携しながら、持続可能な都市インフラ整備の一翼を担う展望です。
荏原製作所本体の成長姿勢とコア技術の展開
荏原製作所グループ全体としても、事業多角化と技術融合による成長を着実に続けています。流体解析・制御、回転機械、振動・騒音抑制などのコア技術を生かし、たとえば精密・電子セグメントでは先端半導体市場向け真空ポンプや排ガス処理装置を展開。さらに、インフラ事業では水処理プラント・防食技術へと応用されています。
最近では、生成AI向け半導体需要の高まりにも対応し、関連部品・システムの供給責任を果たしている点が特徴です。また、同社独自の製造DXプロジェクト「EBARA-D3」を通じて、技能の伝承や現場ノウハウのデータ化、新人教育の効率化など、ものづくり現場への最新技術導入も進行中です。
中期経営計画「E-Plan2025」とサステナビリティへの取り組み
荏原製作所は中期経営計画「E-Plan2025」により、基幹システムのIoT化やメンテナンスクラウドの導入など、さらなる省力化・最適運用・事後保全の効率化に力を入れています。これにより、人手不足やコスト増といった社会課題にも柔軟に対応。持続的成長と社会的課題解決への貢献を両立する経営方針を鮮明にしています。
また、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資の観点からも評価されるよう、環境負荷削減や資源循環に取り組み、サステナビリティ経営の推進に余念がありません。とくに、精密・電子セグメントにおける水浄化技術や、エネルギー・カーボンニュートラル社会への技術提供などが注目されています。
今後の社会的期待と課題
これまでの業績好調や社会インフラ分野での実績を背景として、今後も荏原製作所および荏原実業には、老朽インフラの安定運営、都市の防災・減災対策、最先端産業の技術支援など多岐にわたる活躍が期待されます。その一方で、景気動向や原材料コスト、投資サイクルの変化には引き続き注意が必要です。また、デジタル技術活用やグローバル市場での競争力強化にも継続的な対応が求められるでしょう。
企業はこれからも「熱と誠」をスローガンに、社会・産業インフラの安全安心とイノベーション推進に努める姿勢を明確にしつつ、成長の軌道を描いていくものと見られます。
参考情報/最新関連ニュース
- 荏原実業は2025年12月期連結営業利益予想を51億円と上方修正。エンジニアリング事業の好調に加え、株式分割も発表。
- 最新第3四半期決算では売上高292億5600万円、営業利益43億800万円と高成長を記録。
- 荏原製作所グループはDX推進・ESG経営を加速し、水・環境・半導体分野でも先進的な取り組みを展開。
荏原実業および荏原製作所グループの一段と広がる未来に、さらなる注目と期待が高まっています。



