【総力特集】歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」2025年公演 伝統と革新が織り成す舞台の魅力
2025年11月、東京・東銀座の歌舞伎座で「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕しました。歌舞伎界の年末を飾るこの伝統公演は、毎年11月になると全国から熱心な観客が集まり、多彩な演目と俳優陣が華々しく競演します。今年も初日から大盛況となり、世代交代の波と新たな芸が舞台に息吹を与えています。
伝統と歴史を受け継ぐ「吉例顔見世大歌舞伎」とは
「吉例顔見世大歌舞伎」は、江戸時代から続く歌舞伎興行の伝統行事です。俳優たちが一堂に会し、いわば“顔見せ”として繰り広げられます。芝居好きにとっては“年の瀬の風物詩”であり、また俳優たちにとっても節目となる公演です。2025年は松竹創業百三十周年という大きな節目にもあたり、例年以上に注目が集まりました。
- 公演期間:2025年11月2日(日)~26日(水)
- 会場:歌舞伎座(東京都中央区銀座)
- 主な出演者:七代目尾上菊五郎、松本白鸚、中村歌六、中村幸四郎、尾上松緑 ほか
進む世代交代、光る若手俳優たちの活躍
今年の「吉例顔見世大歌舞伎」では、歌舞伎界の世代交代がいっそう進んでいることが大きな話題となりました。経験豊富な大御所俳優だけでなく、次代を担う若手俳優たちが重要な役柄に抜擢され、大舞台で腕を競い合っています。
たとえば、昼の部の舞踊劇『鳥獣戯画絵巻』は、祖父・二世松緑が生んだ作品を現代の松緑が初上演。蛙や猿など動物たちの躍動感ある踊りと、映像や照明を巧みに組み合わせた幻想的な舞台で観客を魅了しました。男蛙役の芝翫と男猿役の巳之助など、華やかな若手俳優陣が個性豊かに舞台を彩ります。群舞の熱気、躍動感、音楽が一体となり、現代の歌舞伎らしい新たなアプローチも光りました。
また、名作者・河竹黙阿弥作『曽我綉俠御所染』「御所五郎蔵」でも、“男伊達”の代表・御所五郎蔵役の愛之助、対立する星影土右衛門の松緑、それを調停する甲屋与五郎役の幸四郎という若手から中堅まで幅広い俳優の競演がみられました。息詰まる駆け引きと迫力ある立ち回りで場内は大いに盛り上がりました。
印象的な演技とその評判――巳之助の弁慶に注目
一方、矢内賢二氏をはじめとした多くの観劇評では、若手俳優のひとり巳之助に注目が集まっています。彼が演じた強烈な弁慶は“小気味いい”と評され、伝統の型をしっかり継承しながらも軽妙なテンポや表現力で観客を惹きつけています。
ベテランが多い舞台の中でも存在感を放ち、観客からは「これからの歌舞伎界を背負う逸材」と言われるほどです。巳之助の成長、そして脇を固める同世代俳優たちの実力向上が、歌舞伎界に新しい風をもたらしています。
型破りの新作――三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)』
今年の夜の部では、脚本家で演出家の三谷幸喜氏による最新作『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)~幕を閉めるな~』が大きな目玉となりました。「笑いに特化」した三谷かぶきは、型にはまらない自由な発想と現代的なギャグがふんだんに盛り込まれており、伝統歌舞伎ファンだけでなく若い世代や初心者も楽しめる内容です。
- 三谷幸喜氏による現代的な脚本・演出
- 既存の型にとらわれず、観客の笑いを誘うストーリー展開
- 山本小平太 役に市川獅童など、個性的な役者陣が登場
この新作公演は公演日だけでなくライブ配信も行われ、劇場に足を運べない全国のファンにもリアルタイムで歌舞伎の魅力を届けました。三谷氏らしい「舞台愛」と「エンターテインメント」との融合が、歌舞伎の未来を切り開く鮮烈な舞台となっています。
公演全体を盛り上げる多彩な演目と俳優陣
「吉例顔見世大歌舞伎」は上記のほかにも、多数の伝統演目やアクロバティックな立ち回りが楽しめる舞台が揃いました。初めて観劇する人にもわかりやすく、リピーターには新たな発見のある多層的な構成も人気の理由です。
- 伝統ある古典劇から現代作まで豊富な演目構成
- 音楽・照明・衣裳の美しさと華やかさ
- 若手から大御所まで充実した出演者層
- 観客の年齢層も幅広く、老若男女が集う劇場空間
歌舞伎界のこれから――世代交代と新たな可能性
今年の公演を通じて、ベテラン俳優が若手を支え、若手が自由な発想や挑戦で舞台を刷新していく光景が顕著です。これはまさに、歌舞伎という伝統芸能が時代ごとに更新され続ける証です。
世代交代が進み新たなスターが台頭することで、公演や物語の魅力はますます広がっています。若手の躍動感と創造性、そしてベテランの経験がうまく調和し、観る者を飽きさせない舞台が生まれました。さらなる進化が今後も期待されています。
劇場情報・アクセス
- 劇場名:歌舞伎座
- 所在地:東京都中央区銀座4-12-15
- 公演日程:2025年11月2日~26日
- 主催:松竹株式会社
まとめ――伝統と革新が融合する舞台の魅力を体感しよう
歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」2025年公演は、世代を超えた俳優陣の息の合った舞台、新たな挑戦と伝統へのリスペクト、そして観客を魅了する多彩な演目で大盛況となりました。歌舞伎初心者から熱心なファンまで、様々な人に“生の舞台”ならではの感動が届けられています。今後の歌舞伎界にも、さらなる期待が高まる舞台となりました。




