日本製紙、豪州経済停滞で通期計画を下方修正―上期は利益堅調、Opal社収益強化に注力

はじめに

日本製紙株式会社(東証プライム上場)は、2026年3月期(2025年度)における上半期決算を発表し、主力事業の一部が堅調に推移したものの、海外グループ会社であるOpal社の拠点を持つオーストラリア経済の停滞等を背景に、2026年3月期通期の業績計画を下方修正したことが大きな話題となりました。

2026年3月期第2四半期決算のポイント

日本製紙の2026年3月期第2四半期(2025年4月〜9月)は、売上高5,892.17億円(前年同期比0.8%増)営業利益90.06億円(同338.0%増)と増収増益になりました。特に営業利益の飛躍的な伸びは、主要製品の値上げやコスト削減努力の成果が表れた結果です。

  • 売上高:5,892億1,700万円(前年比0.8%増)
  • 営業利益:90億600万円(前年比338.0%増)
  • 経常利益:8,547百万円(アナリスト予想を上回る)

一方で、純利益に関しては、一部海外事業の伸び悩みや減損損失の計上等の影響も受けています。

通期業績予想の下方修正とその背景

日本製紙は2026年3月期通期の連結業績予想を下方修正しました。その理由として、オーストラリア経済の停滞によるグループ会社Opal社の販売伸び悩みが直接的な要素となっています。

  • 売上高:1兆2,000億円(前期比1.5%増)
  • 営業利益:300億円(同52.2%増)
  • 経常利益:240億円(同54.8%増)
  • 当期純利益予想:100億円(同120.3%増) ※こちらも下方修正

オーストラリアは日本製紙が注力するグローバル事業の中でも重要な地域ですが、現地経済の停滞に加え、パッケージ需要なども苦戦したことでOpal社の収益が想定を下回る結果となりました。

上半期の堅調な進捗とその理由

2026年3月期上半期については、ほぼ全事業で収益が堅調に推移しました。主な要因は以下の通りです:

  • 国内市場では、為替の円安傾向や各種製品の価格修正(値上げ)による恩恵を受けた
  • 新聞用紙や印刷用紙の需要減少や電力・エネルギーコストの上昇といった逆風もありましたが、固定資産売却や政策保有株売却等の特別利益を計上し、収益面を下支えした
  • 板紙事業や家庭紙(生活関連事業)は価格政策が功を奏し、増収に寄与した

実際の当期利益は4,539百万円(前年比80.0%減)と一時的に落ち込んだものの、キャッシュフローの安定や自己資本の増強など、財務基盤にも配慮した経営がなされています。

豪州グループ・Opal社の現状

Opal社は日本製紙グループ傘下で、オーストラリアを代表するパッケージングメーカーです。売上高や利益の一定部分を占めますが、オーストラリア国内の経済停滞、物価上昇や輸送コストの高止まり、消費低迷といった悪条件が今期は重なりました。

その結果、Opal社関連の事業損失や構造改善コスト、販売数量の伸び悩みが、日本製紙全体の通期見通しを下押しする一因となりました。

下期以降は「Opal社の一層の収益力強化」に経営資源を集中的に投下し、パッケージ部門の構造改革、オペレーション効率化、現地企業とのアライアンス強化などを戦略的に進めていく方針です。

決算内容の詳細

  • 2025年3月期(前期)の通期決算では、売上高1兆1,824億円(対前年+1.3%)営業利益197億円(+14.1%)経常利益155億円(+6.6%)でした。
  • 当期純利益は45億円(前年比-80.05%)となり、特別損失や一部事業再編コスト(主にグラフィック用紙事業の見直し等)が影響しました。
  • 26年3月期(今期)は、売上増・営業利益増を見込む一方で、海外要因(豪州)が利益面でのリスク要因となっています。

事業別の状況と戦略

  • 紙・板紙事業:国内需要は引き続き下落傾向にあり、物価上昇の影響も受けている。ただし、価格改定で下支え。
  • 生活関連事業(家庭紙、生活用品等):収益性が着実に改善し、売上は前期比4.8%増。営業損失も縮小傾向。
  • 木材・建材・土木建設事業:資材高騰という逆風はあるものの、売上増。
  • エネルギー事業:電力市況の不透明さもあり減収。ただし経営の多角化という点で今後も収益基盤の一つを担う部門。

特に今後注力するべき分野としては、豪州Opal社の黒字回復施策と、AI・DX活用による事業全体の効率化が挙げられます。

財務の健全性と成長投資

2025年3月末時点の総資産は1兆7,033億円純資産5,104億円となっており、利益剰余金は前年同期比+62.59%の115億4,700万円に拡大しました。また、営業活動によるキャッシュフローは依然として堅調です。

国内外の成長領域への積極投資と、収益性の追求、既存事業の再編や撤退を柔軟に進めることで財務バランスと成長を両立させる経営方針が示されています。

株主還元と今後の課題

今期の業績見通しの下方修正と純利益の落ち込みを受け、株主還元(配当等)の姿勢についても注目されます。日本製紙は中長期的な事業安定および配当政策の一貫性に配慮しつつ、市場や株主からの信頼を維持する方針を打ち出しています。

一方で、構造改革や新規領域へのリソース配分など、次世代の基盤づくりが喫緊の課題として浮上しています。

まとめ

  • 2026年3月期上半期は利益面で堅調な進捗を見せたものの、豪州経済の停滞により通期業績は下方修正された
  • Opal社の収益強化がグループ全体の再成長の鍵とされ、中長期的視野での抜本的改革が進行中
  • 国内事業や生活関連事業でも収益改善の余地があり、今後の投資・改革の成否が注目される

2025年度以降、日本製紙は「環境・社会への貢献と持続成長」に向けて、グローバル経営の抜本強化という新たなチャレンジに挑む局面を迎えています。

参考元