たねや「ラ コリーナ近江八幡」、環境省「自然共生サイト」認定の快挙

和菓子の老舗「たねや」グループが運営する滋賀県・近江八幡市の複合型施設「ラ コリーナ近江八幡」が、2025年10月、環境省より「自然共生サイト」に認定されました。この認定は、生物多様性の保全や地域の自然環境と共生する先進的な施設や場所に与えられるものであり、たねやの長年にわたる地域貢献や、自然と人・文化の調和を重んじた運営姿勢が高く評価されてのものです。今、全国的に注目を集めているこのニュースを、背景や取り組み、地域社会への波及効果まで詳しくお伝えします。

ラ コリーナ近江八幡とは?

  • 和菓子の「たねや」・洋菓子の「クラブハリエ」のフラッグシップ店舗
  • 2015年、滋賀県近江八幡市にオープン
  • 敷地面積約36,000坪に本社、ショップ、カフェ、バウムクーヘン工場、田畑や森など多彩なエリアを展開
  • 著名な建築家・藤森照信氏設計の草屋根メインショップがシンボル

ラ コリーナ近江八幡は単なる店舗ではなく、「自然に学ぶ」をコンセプトにした複合体験施設です。美しい里山の風景が広がる「近江八幡」の地で、自然環境の恩恵とともに歩む日本の伝統的なものづくりや食文化、農業の未来像を提案しています。訪れる人は、四季折々の自然豊かな風景や、伝統和菓子づくり体験、地元食材を味わえるレストランなど、多様な形で近江の自然や文化に触れられます

環境省「自然共生サイト」認定とは?

  • 生物多様性保全に寄与する先進施設・取組を認定する公的制度
  • 持続可能な開発目標「30by30」(2030年までに陸と海の30%を保全)推進の一環
  • 企業や個人、自治体など多様な主体による自主的な保全活動を評価・奨励

環境省の「自然共生サイト」認定は2022年から始まり、日本各地の里山・森、農地や湿地など数多くの場所が認定対象となっています。企業所有地であるラ コリーナ近江八幡が選ばれたのは、
伝統産業・地域食文化・生物多様性の保全を三位一体で実現している希少な事例であったためです。地方創生や観光資源としての機能だけでなく、生態系ネットワークの拠点としての役割にも期待が寄せられています

「ラ コリーナ近江八幡」が評価された理由

近江の原風景の再生と持続可能な森づくり

ラ コリーナ近江八幡では、八幡山につらなる森を目指して、山野草やどんぐり育成による苗木の植樹など長期的な森づくり計画を展開しています。敷地内にはたねやグループ自らが栽培する米や野菜、果樹をはじめ、訪問者が参加できる植樹体験ツアーの開催など、環境保全と市民参加型の体験教育を一体化した活動も特徴です

  • どんぐり拾いから始まる植樹活動
  • 里山の在来種を守るための森の再生活動
  • 地域住民や子供たちの環境学習参加

伝統文化の継承と地域資源の発信

和菓子に欠かせない木型職人の技を施設内に展示したり、「千利休」など歴史的人物をモチーフにした繊細な木型アートを紹介するなど、職人技術の保存・普及にも力を入れています。さらには地元米を使った食の提供や伝統農法の継承、「ラ コリーナ米」の生産販売による地産地消の推進など、地域経済文化への貢献度も高く評価されています

建築デザインと自然への敬意

シンボルの草屋根メインショップは、建築家・藤森照信氏の手によるもの。屋根部分に広がる「草」は季節ごとに色を変え、風景と共存する設計思想そのものです。棟梁の伝統木工技術と現代的な機械加工を融合し、持続可能な材料利用と調和した空間美を演出しています。

  • 草屋根の活用による景観づくり
  • 県産材の調達・地産地消
  • 繊細な木工細工を取り入れた設計

自然共生サイト認定の波及効果と地域社会への価値

地域経済の新たな循環

観光拠点として国内外から多くの来訪者を惹きつける一方、「サステナビリティ」「生きた自然と文化の学び舎」として地元農業や伝統産業と多面的につながるラ コリーナ。地元農家が生産した米や野菜が消費されるだけでなく、施設運営や商品開発という形で新たな雇用や交流が生まれています。

教育・体験の場としての役割

植樹体験や田植え・稲刈りイベント、和菓子づくりワークショップなど、多世代が「たねや」の理念に基づいた自然や文化への敬意を学べるプログラムが充実。地域の子供たちだけでなく観光客に対しても、命をつなぐ大切さや食の循環、伝統文化の創造性を伝える場となっています

伝統技術の承継と新しい価値創造

たねやグループは130年の伝統の中で培った職人技術を誇る一方、現代社会の課題に呼応した新しい価値観(エシカルな消費や地域循環経済の推進など)を継ぎ、発信しています。和菓子づくりだけでなく、農業や環境管理、イベント開催など多角的に地域社会とのかかわりを深めている点にも注目です

自然共生サイトの今後の展望

  • 観光と自然・文化・地域経済の共存を実例として国内外に発信
  • 多様な環境教育・体験活動のさらなる拡充
  • 県内外の保全活動団体や企業との連携によるネットワーク形成
  • 持続可能な里山づくりモデル拠点としての進化

「ラ コリーナ近江八幡」が自然共生サイトに認定されたことで、今後ますます持続可能な自然の保全活動や伝統文化・産業のバトンリレーが期待されます。たねやグループの歩みは、地域社会や日本文化を次世代につなぐ灯台となることでしょう。

他にも自然共生サイトに認定された「天理古墳シャープの森」

今回同時に、奈良県天理市の「天理古墳シャープの森」も自然共生サイトに認定されました。地域性や取り組みに違いはありますが、古墳や歴史遺産と融合した森の保全、企業・地域住民参加型の管理など、多様なモデルが全国で誕生してきています。

最後に

たねや「ラ コリーナ近江八幡」の今回の認定は、単なる観光施設を超えた日本の里山と伝統文化の未来像の一つとして、大きな意味を持っています。私たち一人ひとりも、こうした取り組みに触れ、暮らしや消費のあり方を見つめ直すきっかけとなることが期待されます。今後も「自然共生サイト」や地域社会の動向から目が離せません。

参考元