タカラトミー、9月中間決算で営業利益5.1%減 戦略投資と米関税の影響で利益圧迫

玩具大手のタカラトミーが11月11日に発表した2026年3月期第2四半期(4月~9月)の連結決算では、売上高が前年同期比5.9%増の1278億8400万円となったものの、営業利益は5.1%減の117億3000万円に落ち込みました。増収減益となった決算内容は、市場で売り気配となり、株価は下押し圧力を受けています。

業績の詳細と利益減少の要因

今期の決算では、売上高の増加が見られたにもかかわらず、利益面で厳しい結果となっています。経常利益は前年同期比0.6%減の118億2600万円、最終利益は3.9%減の81億2500万円にとどまりました。

利益が圧迫された主な要因としては、以下の点が挙げられます。第一に、戦略的な映像コンテンツ制作と人材への投資を積極的に進めたことが、営業費用の増加につながっています。タカラトミーは長期的な成長を見据え、知的財産(IP)の価値向上と人的資本への投資を重視する経営方針を取っています。

第二に、米国の関税政策の影響が売上に響いています。米国市場は玩具メーカーにとって重要な販売拠点であり、高い関税による輸入コストの増加は、利益率の低下を招いています。特に第2四半期(7月~9月)の直近3ヵ月では、米国での売上減少が顕著に表れており、7~9月期の連結経常利益は前年同期比16.6%減の68億6000万円まで落ち込んでいます。

市場環境と営業利益率の悪化

決算発表後の株価は売り気配となるなど、市場参加者の慎重姿勢が強まっています。営業利益率は前年同期の12.2%から10.4%に低下するなど、収益性の悪化が鮮明です。

関税問題に加えて、玩具市場全体にも弱さが見られます。ベビー用品などの販売減少も影響しており、消費環境の不透明性がタカラトミーの業績圧迫要因となっています。

通期見通しと今後の課題

タカラトミーは2026年3月期の通期業績予想を据え置いています。売上高は前期比3.9%増の2600億円、営業利益は11.5%減の220億円、経常利益は9.3%減の218億円、最終利益は14.4%減の140億円を見込んでいます。

中間期(4月~9月)の進捗率を見ると、売上高が通期計画の49.2%、営業利益が53.3%、経常利益が54.2%、最終利益が58.0%に達しており、各項目で5年平均を上回る進捗状況を示しています。

ただし、下期(10月~3月)の連結経常利益は前年同期比17.8%減の約99億7000万円に減る計算になるとアナリストから試算されており、下半期も厳しい環境が続くことが予想されています。

人材投資と映像化戦略の位置づけ

タカラトミーが進めている戦略的な人材投資と映像コンテンツ制作への資金投下は、短期的には利益を圧迫する要因となっています。しかし同社の経営陣は、これらの投資を中長期的な競争力強化と成長の礎と位置づけており、ブランド力向上と新規事業の創出を目指しています。

具体的には、アニメやゲーム、実写映画などの映像化により、タカラトミーの玩具ブランドの認知拡大と販売促進につなげる狙いがあります。人材投資も、クリエイティブな企画立案や新しいビジネスモデルの構築に必要な経営資源と考えられています。

投資家の反応と株価展開

決算発表直後の市場では、売上増加よりも利益減少に注目が集まり、売り気配が優勢となりました。特に営業利益率の低下と下期の利益減少予想が、投資家心理の悪化をもたらしています。

ただし、アナリスト側の評価は必ずしも悲観的ではありません。中間経常利益が市場予想とほぼ同水準にとどまったことや、通期計画の進捗が順調であることなど、ポジティブな側面も指摘されています。

今後の展望

タカラトミーにとって、米国の関税政策の動向が重要な経営判断要素となります。また、人材投資と映像化戦略がどの程度の売上増加をもたらすのか、実際の成果が問われる時期に入っています。

下半期においては、クリスマスシーズンなどの繁忙期を控えており、玩具業界全体の需要喚起がカギとなるでしょう。同社の戦略的投資がどれだけ売上拡大に貢献するのか、市場からの評価がこれからの株価展開を左右することになります。

投資家にとっては、今後の四半期決算で利益率の改善傾向が見られるかどうかが、判断材料となる点に注目が集まっています。

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