“頂いた命を余さずに”——岐阜・高山のジビエ店が犬用おやつ販売開始

岐阜県高山市にあるジビエ加工会社「飛騨高山舞地美恵」は、2025年11月、多くの注目を集める取り組みとして、精肉過程でどうしても廃棄せざるを得ない部分を活用し、犬用おやつの製造・販売を開始しました。
この新商品は「頂いた命を余さずに」をコンセプトに掲げており、狩猟によって得られたシカやイノシシの肉を最大限有効活用しようとするものです。

命の循環を支えるジビエ文化とペットフード

従来、ジビエ(野生鳥獣の肉)の精肉工程では、どうしても規格外となってしまう部位が発生していました。これらは食用肉として販売できないため、これまで多くが廃棄されていました。
しかし「飛騨高山舞地美恵」では、こうした部分を乾燥・加工し、栄養価も高く安全性にも配慮した犬用おやつとして新たな命を吹き込む工夫が施されています。この取り組みは、ジビエ文化のさらなる発展と、食材の無駄削減という両面で意義深いと言えるでしょう。

  • 規格外部位の活用:
    シカやイノシシの肉は、鮮度も品質も高く、十分にペットフードとしての条件を満たします。
  • 食肉ロス削減:
    これまで廃棄されていた部位を有効活用することで、命の価値を最大限に尊重します。
  • 安全・安心な製造:
    独自の衛生基準を設け、ペットにも安心して与えられる製品づくりにこだわっています。

地域資源を活かす柑橘ジビエ——上島・ゆめしま地域の挑戦

一方、愛媛県・上島町(ゆめしま)でも目を引くプロジェクトが進められています。町民が自ら捕獲・加工することで、獣害対策としてイノシシの肉を地域資源へと昇華。新たに発案された「柑橘ジビエ」は、島で生産される柑橘類とのコラボレーションを実現し、肉質の高さが評価されています。
この取り組みは、町民参加型の地域活性化策として位置づけられ、2026年春にはBBQガーデンの開設も予定されています。

  • イノシシ肉の地域資源化:
    獣害対策として捕獲されたイノシシを、加工を工夫することで地域の特産品に転換。
  • 柑橘とのコラボ:
    上島特産の柑橘類との組み合わせが新たなジビエ料理を生み出し、肉質や味の面でも高評価を獲得。
  • BBQガーデンの開設:
    住民が主体となったBBQガーデンを2026年春オープン予定。観光と地域活性化の両面で注目されています。

ジビエの社会的価値——資源循環と地域の未来

これらの取り組みが示す通り、ジビエは「食材」としてだけでなく、地域の課題解決や命の循環にも大きな役割を担い始めています。
特に「飛騨高山舞地美恵」の犬用おやつ商品は、動物たちの命を丁寧に扱い、限りある資源を余さず活用する日本ならではの美意識と倫理観を体現しています。また、上島・ゆめしまの柑橘ジビエも、島の課題である獣害と農産物を積極的に結びつけることで、地域の持続可能な発展モデルとして全国で高い評価を受けています。

ジビエに対する消費者の意識の変化

近年、消費者の間では「フードロス削減」や「持続可能な食のあり方」への関心が高まっています。ジビエ産業は、こうした価値観に呼応し、単なる「珍味」から命と資源を大切にする社会的ムーブメントに発展しつつあります。
ペットフード市場でも、品質・安全志向が急速に進展しており、天然素材・無添加・地域生産に根ざした商品は高い満足度と支持を集めています。

地域創生とジビエ——社会の未来へ

今回の岐阜・高山、上島・ゆめしまにおける両プロジェクトは、ジビエという身近な食材が、「命を無駄にせず」社会の持続可能性に直接貢献できることを教えてくれます。
食肉の命を余さず活用する工夫や、獣害問題をただの被害で終わらせず、地域を豊かにする資源へと転換する知恵。これらは、日本の自然と人の暮らしが共存していく上で、重要なヒントとなるはずです。

ジビエ店と地域の未来

  • 循環型社会の実現:
    地域で獲れたジビエを最大限活用し、廃棄ゼロに近づける努力。
  • 住民参加型のまちづくり:
    町民自らが捕獲・加工・販売まで担うことで、地域経済に新たな価値を生み出しています。
  • 観光資源としての活用:
    上島・ゆめしまのBBQガーデン開設は、地域に人の流れを生み出すきっかけとなり得ます。

まとめ:命を頂く——「余さず活かす」未来への一歩

「飛騨高山舞地美恵」が始めた犬用ジビエおやつ、上島・ゆめしま発の柑橘ジビエと地元住民手作りのBBQガーデン、これらはすべて食材だけでなく、地域資源と人々のつながりを活かした“命の循環”の取り組みです。
今後も日本各地で広がるであろうこの流れは、食文化と倫理観、そして持続可能な社会の実現に大きな一歩を刻むことでしょう。

参考元