鹿島建設、8期ぶりの最高益を達成――2026年3月期は経常利益・純利益ともに大幅増、配当も増額へ
日本の建設大手・鹿島建設株式会社が、2026年3月期の決算で経常利益・純利益ともに過去最高を更新しました。これは8期ぶりとなる最高益であり、同社は通期経常利益を従来予想から20%上方修正。また、配当も従来予想から1株あたり20円増額すると発表しました。力強い業績回復と今後の成長への期待感が高まる内容となっています。
好調の要因――建設事業の堅調な推移と利益率の大幅改善
今回の好決算の中心にあるのは、やはり建設事業の堅調な業績です。同事業は国内外で多くの大型プロジェクトを受注し、さらに利益率も向上しました。2026年3月期上半期(中間期)時点の連結経常利益は1,053億7,700万円(約1,054億円)となり、アナリスト予想を大幅に上回っています。
- 売上高:2026年3月期の通期予想は3兆円と、前年同期比で顕著な増収
- 経常利益:2,000億円、前期1,606億円から大幅増加(約24.5%増)
- 純利益:1,550億円、前期1,258億円から約23%の増加と過去最高更新
- 1株当たり配当金:従来予想の130円から20円増配し、150円に
特に建設事業の好調さは、売上総利益率の改善に大きく寄与しました。2026年3月期の上半期の売上総利益率は13.6%(前年同期は9.6%)と、利益体質の強化が際立っています。
金融状況:自己資本比率も健全水準を維持
資産・財務面でも、鹿島建設は依然として極めて健全な経営基盤を保っています。最新の貸借対照表によれば、自己資本比率は前期比1.3ポイント上昇し37.7%。有利子負債残高は前期末より476億円減少して7,443億円でした。この改善は健全な財務管理の賜物といえるでしょう。
- 資産合計:約3兆2,700億円(前期末比5.3%減)
- 負債合計:約2兆178億円(前期末比7.3%減)
- 純資産合計:約1兆2,522億円(前期末比2.0%減)
営業活動によるキャッシュフローは、受取手形や完成工事未収金の減少によって改善しつつあり、今後の資金繰りにも余裕があると見られます。
今期の業績上方修正の詳細
- 連結経常利益の通期予想は2,000億円(当初は1,660億円)へと20%超の上方修正
- 通期純利益予想も1,550億円へ引き上げ、従来予想比23%増
- 中間配当も増額し、年間配当は従来予想を20円上回る150円へ
この8期ぶり最高益の更新は、鹿島建設がコロナ禍や市況変化に柔軟に対応し、持続的成長の道筋を着実に歩んできたことを証明しています。
市場の反応と今後の注目ポイント
好調な決算数字と上方修正を受け、株式市場では鹿島建設株の注目度がさらに高まっています。アナリストも増益基調がしばらく続くと見込んでおり、配当の増額も株主還元策として好感されています。
一方、建設事業受注高は直近でやや減少傾向にあるため、今後は市場動向や新規プロジェクトの受注状況にも注視が必要です。また、原材料価格や人件費の動向、国内外の大型案件の進捗が、今後の業績推移を左右するポイントとなります。
セグメント別の動きと事業の多角化
- 建設事業:国内外ともに好調で、売上・利益とも伸長
- 開発事業:やや減収となったものの、不動産開発や資機材販売も一定の貢献
- 海外事業:為替の影響や多様な地域プロジェクトで収益安定化に寄与
持続的な成長を実践するうえで、鹿島建設は従来からの土木・建築分野のみならず、再生可能エネルギーや都市開発など、成長性豊かな分野への取り組みも進めています。これらの新たな柱が今後どのように業績に反映されるかも、継続的な注目ポイントです。
株主還元の拡充――増配の背景と今後の配当方針
今回発表された増配(1株あたり20円の増額、計150円)は、これまでの業績拡大に加え、中長期的な企業価値向上方針の一環です。今後も安定的な収益基盤を活かした株主還元が期待できそうです。
- 2026年3月期の年間配当予定額は1株あたり150円(前期実績130円から20円増)
- 配当性向は利益成長に応じて柔軟に見直される方針
鹿島建設の今後の展望とリスクファクター
今期の最高益更新と中期的な配当増額は、鹿島建設が底堅い競争力を有し、経営の安定性を増していることの現れです。ただし、今後も
- 原材料や労務費の高騰
- 国内建設需要の先細り
- 海外市場の不透明要素
といったリスクは存在します。そのため、より一層の事業多角化、新分野の開拓、グローバル戦略の強化が今後の成長エンジンとなる見通しです。
まとめ――鹿島建設が示した堅調な成長力と株主重視経営
2026年3月期の決算で経常利益・純利益ともに大幅増、最高益と増配を8期ぶりに実現した鹿島建設は、建設業界のみならず日本経済の底力を示しました。今後も経営基盤の強化と株主重視経営の両立を目指し、持続的な企業価値向上とさらなる収益拡大を目指す方針です。そして、建設事業だけでなく多角的な分野での積極展開が、同社の将来成長を左右する重要なポイントとなっていくでしょう。


