イーライリリー株価が最高値を更新―肥満治療薬とAI創薬が牽引
2025年11月10日、米医薬品大手イーライリリー(Eli Lilly and Company)の株価が史上最高値を更新し、投資家や市場関係者の熱い視線が集まっています。近年同社の成長を牽引している肥満治療薬分野への期待、そしてAIを活用した新たな創薬戦略が、その背景にあります。
肥満治療薬に対する期待―「複数の波」到来
イーライリリーの株価高騰の一因と考えられるのが肥満治療薬の急速な市場拡大です。米大手調査会社Leerinkは、今後2027年1月までにメディケアなど米政府関連医療制度で肥満薬の適用拡大が複数回に渡って行われると予想しています。これによって社会的にも治療薬の普及が進み、単なる価格競争を超えた“値引き要因”は十分に相殺される見通しとなっています。
また、昨今では肥満治療薬の価格を引き下げる動きも報じられ、一部では株価に一時的な反落材料となる懸念がありました。しかし同時に「今が買い時」とする専門家も複数おり、短期的な調整を経て中長期的な成長期待が強まっていることも注目されます。
AI創薬への積極投資―中国企業との提携も
イーライリリーは創薬分野で中国のインスリコ・メディスンと提携し、同社のAI創薬プラットフォーム「Pharma.AI」を導入する計画です。インスリコはこの契約により最大1億ドル超の報酬が得られる可能性があるとされています。AI導入によるスピードと効率の向上が今後の新薬開発競争力を大きく高めると市場から期待されています。
決算好調―強力な業績が株価押し上げ
イーライリリーは2025年7~9月期決算で売上高176億ドル(前年同期比54%増)、1株当たり利益7.02ドル(市場予想は5.71ドル)といずれも市場予想を大幅に上回る数字を発表しました。主要医薬品の売上増加が大きな要因で、肥満薬「マンジャロ」「ゼプバウンド」や糖尿病薬「ジャディアンス」「トルリシティ」などが好調です。
この業績好調を受けて、市場では「今後の株価は950ドルを目指す展開」という強気見通しが広がり、実際に投資家の「買いたい」意欲を裏付ける動きとなりました。
株価推移と市場の声
- 2025年11月10日時点で968.36ドル(前日比+43.99ドル、+4.76%)と急伸し、過去最高値を記録。
- アナリストによる投資判断は「買い」に格上げ、目標株価は886ドルから1104ドルへと大幅引き上げ。
- 一時的な調整で3.5%安となった場面もあったが、全体では上昇基調が続く。
株価が乱高下する局面も報道されています。例えば肥満薬価格値下げ合意には「一時反落」との指摘もありましたが、過去7日間の調整を経て再度上昇。“今が買い時”と分析する意見も目立ちます。
主要医薬品が業界をリード
イーライリリーは幅広い疾患分野で多くの画期的医薬品を持っています。
- がん治療薬:ベージニオ
- 糖尿病治療薬:マンジャロ、ゼプバウンド、ジャディアンス、トルリシティ、ヒューマログ、ヒューマリン
- 免疫疾患治療薬:トルツ、オルミエント
これらの医薬品の力強い売上増加が同社の市場支配力・成長ドライバーとして機能し、投資家心理を後押ししています。
投資家の評価と今後の見通し
イーライリリー株価に関する掲示板等の感情分析では「強く買いたい」が40%、「様子見」が40%、「強く売りたい」が20%と、買い意欲・成長期待が優勢となっています。
市場関係者やアナリストは、「今後の新薬発売が同社の市場支配力をさらに高め、力強い成長ドライバーとなる」と評価。特に米政府との契約やAI活用による創薬力強化が目先の株価上昇だけでなく、中長期の成長シナリオに大きな影響を与えるとみられています。
まとめ
今回のイーライリリー株価最高値更新は、肥満治療薬という最先端の医療分野に対する社会的ニーズの高まりと、AIを活用した創薬力強化という技術革新、そして堅調な決算発表が見事に重なり、市場に強いインパクトを与えました。価格の一時調整はあれど、長期的にはさらなる株価上昇の可能性を秘めていると言えるでしょう。今後の新薬上市や医療制度適用拡大といった動向が注目されます。医薬品業界全体の成長の牽引役として、同社の動向は今後も多くの投資家と医療関係者に注目され続けることでしょう。



