藤井大丸本館、2026年5月で営業休止 2030年度中リニューアルオープンへ――京都の百貨店が歩む次の未来
老舗百貨店「藤井大丸」、全面建て替えにともない営業一時休止へ
京都・四条寺町角に建つ老舗百貨店「藤井大丸本館」が、2026年5月6日をもって一時休業することが発表されました。150年以上の歴史を持つ同店は、本館の建物および設備の老朽化への対応と、時代に即した新たな価値提供を目的に、大規模な建て替えに着手します。営業再開は2030年度中を予定しており、工事期間中は本館の営業を休止しますが、事業そのものは継続し、地域とともに進化する姿勢を打ち出しています。
全面建て替えの理由と今後の展望
- 建物・設備の老朽化:現在の本館は1969年までに増築を重ねており、地下2階・地上8階の大規模な施設。耐震性や省エネ性能など、現代の基準に合致させる必要性が高まっていました。
- 全面改装で新たなランドマークを目指す:2030年度中の再オープン時には、従来の百貨店の枠を超えた新たな複合商業施設として、地元はもちろん国内外の顧客にも新しい魅力を提案する計画です。
- 地域共生型の開発戦略:本館のみならず「周辺エリアを活用した街づくり」にも力を入れ、京都・四条界隈そのものの価値向上を掲げています。
百貨店業界の潮流と藤井大丸の位置
2010年代以降、日本全国の百貨店は施設の老朽化、消費者ニーズの変化、外資系大型店の進出などで再編・統廃合の波にさらされてきました。近年も都市圏を含めて建て替えや営業形態の見直しが相次いでおり、藤井大丸本館の決断もこうした時代背景の中に位置づけられます。
一方で、藤井大丸は「地域とともに進化する藤井大丸」をコンセプトに、単なる店舗改装にとどまらない“街づくり”の視点を明確に打ち出している点が特長です。単なる老朽化対策ではなく、京都の新たな暮らし・文化発信拠点としての再出発を目指しています。
藤井大丸の歴史 ――京都とともに歩む百五十年
藤井大丸は、1870年(明治3年)に創業。呉服の行商から始まり、1891年に京都・河原町へ初めての店舗「藤井大丸呉服店」を構えました。1912年には現在の四条寺町角に本店を移転し、3階建てレンガ造りの洋館を建設しました。昭和の火災による苦難も乗り越え、1969年まで増築を重ね、現在のビルに発展。その後も数々のリニューアルを経て、京都市民や観光客に愛される百貨店としての地位を築いてきました。
- 社名:株式会社 藤井大丸
- 所在地:京都市下京区寺町通四条下ル貞安前之町605番地
- 現状の営業最終日:2026年5月6日(水・振休)
- 通常営業時間:10:30AM~8:00PM
老舗ならではの伝統と革新性、そして地域とのつながりが、藤井大丸の歩みには一貫して流れています。今回の休業は、その長い歴史の中でも極めて大きな転機となりますが、「藤井大丸らしさ」を守りつつ、時代とともに進化する姿勢が注目されています。
建て替え期間中の動向と顧客対応
本館休業後の藤井大丸のサービス体制や顧客サポートなど、具体的な運営詳細は現時点で公表されていません。しかし、百貨店の全面改装は数年単位となるため、長年利用してきた顧客への丁寧な情報発信と、移転セールや限定イベントなど思い出づくりの企画が期待されています。
また、近隣エリアでのEC(電子商取引)展開や、ポップアップ型の店舗設置など、現代の消費スタイルに合わせた暫定的な営業形態も業界では見られます。藤井大丸も、培ってきた顧客ネットワークやブランド力を活かしつつ、新旧を融合したサービス展開を模索するものと見られています。
再オープンに込める期待 ― 藤井大丸が目指す未来像
2030年度中の再オープンが計画されている新生「藤井大丸」は、百貨店という業態そのものの再定義にも迫る新しい顔となることを目指しています。従来の大型商業施設としての役割に加え、地域住民や観光客、文化・ビジネス関係者がさまざまに集うオープンスペース、サステナビリティや次世代コミュニティへの貢献といった要素も重視される可能性があります。
近年、百貨店業界はEC市場の拡大、体験型消費へと価値観がシフトする中で、古き良き百貨店の伝統と先進的なサービスの融合が求められています。藤井大丸の全面建て替えは、日本の百貨店業界にとっても、大きなチャレンジであり、同時に希望の象徴です。
地域の経済・文化への影響
藤井大丸は、京都・四条のまちづくり、観光、地元暮らしに欠かせない存在です。一時的な休業による影響は大きいものの、再オープン時には新しい技術やサービス、文化発信の場として地域の新たな誇りとなるでしょう。
今後も藤井大丸の動向から目が離せません。
おわりに
150年以上にわたり京都の暮らしとともに歩み続けてきた藤井大丸。その伝統と革新を受け継ぎつつ進められる本館の建て替えとリニューアルは、京都の未来だけでなく、日本の百貨店が進むべき新たなモデルケースとなることが期待されています。
今は少しの別れとなりますが、また新たな藤井大丸に出会える日を京都のみならず日本全国の人々が楽しみに待っています。



