鈴木憲和農林水産大臣による“おこめ券”政策とコメ生産転換、そして水産業の最新動向

2025年11月、農林水産行政に大きな動きがありました。
新たに就任した鈴木憲和農林水産大臣が、コメ政策の根本的な転換と“おこめ券”の活用を提唱し、その是非が全国で議論されています。一方、水産庁はスルメイカ漁獲枠の拡大方針を発表し、漁業現場にも波紋を広げています。本記事では、そのポイントを分かりやすくやさしく解説します。

コメ政策の大転換と“おこめ券”の登場

  • コメ増産から需要に応じた生産へ
    鈴木憲和農林水産大臣は、「コメが不足している状況ではない」と語り、これまで続いてきた増産を抑制し、今後は生産量の目安を約748万トンから711万トン程度(2026年産)へと引き下げる方針を打ち出しました。
  • “おこめ券”政策の狙い
    新たな経済対策として登場した「全国共通おこめ券」は、自治体が配布し家計の物価高騰対策を狙ったものです。たとえば尼崎市台東区では、住民に440円券を複数枚(最大8800円分)配布しています。券は米穀店、スーパー、ドラッグストアなどで使用できます。

この「おこめ券」政策は次の2つの目的があります。

  • 家計の負担軽減:米価高騰による生活の圧迫から多くの世帯を守る。
  • 農家の経営安定:「再生産可能な価格」=農家がコストを賄える価格帯を守りつつ、直接的な市場介入は行わず、消費者を支援するバランス政策。

国が直接配布するのではなく、自治体が独自に配布し、その費用は国の交付金でサポートする仕組みになっています。このため、自治体ごとに対象や額面、タイミングも異なります。

朝令暮改?高市政権下の農政政策の是非

従来の「増産」一辺倒から一転し、「需要に応じた生産」重視へ舵を切った理由について、大臣自身は「現場主義」を座右の銘に掲げ、山形の自らの田んぼで収穫されたコメ「はえぬき」を紹介するほど、産地や現実の声に耳を傾ける姿勢を強調しています。

しかし、この短期間での政策変更による混乱や、“付け焼刃”との批判も根強くあります。特に「おこめ券」による支援は、値段の高止まりを助長し米価が下がらず、一時的な家計支援しかもたらさないとの懸念も指摘されています。事務費・郵送費がかさむ問題も実際に浮上しています。

「財政の壁」と長期的な農業政策への課題

“おこめ券”政策は、物価高への現場対応を目的としていますが、根本的には日本農業の持続可能性や食料自給力向上、水田利用の見直しなど、より本質的な課題に直面しています。緊急対策として一時的な家計支援の効果はあるものの、長期的な安定的コメ供給、農家の所得安定につなげる制度設計が今後の課題です。

一方で経済評論家・専門家の中からは、「減反で米価を維持し、さらにおこめ券で実質的な負担増」とする否定的な見解も出ています。補助金や高い小売価格の二重負担が国民にのしかかるのでは、との懸念も無視できません。

水産庁──スルメイカ漁獲枠拡大の動き

  • 漁獲枠拡大の方針
    農林水産大臣と水産庁は、国内で人気のスルメイカの年間漁獲枠の拡大を表明しました。資源管理と漁業者の所得向上の両立を目指す動きです。
  • 小型漁船の操業停止は継続
    漁獲枠そのものは拡大しますが、資源保護の観点から「小型漁船の操業停止措置」は当面続ける方針が取られています。

この漁獲枠拡大は、一時的な漁業者支援策としてだけでなく、日本の食料自給や水産資源の持続可能な利用を見据えた調整です。その背景には、資源の増減や価格変動への柔軟な対応、地域漁業の生活支援というテーマが絡んでいます。

今後の展望と私たちにできること

・“おこめ券”配布や漁獲枠拡大の政策は、緊急の家計支援や現場の声に耳を傾けた「現実主義」で効果を発揮しつつあります。
・ただし、長期的な視点で食料自給力向上や農家・漁業者支援の本質的改革が求められています。
・消費者としては、配布された券の有効活用や食材選びの工夫、食品ロスや旬食材の利用などの日々の活動が、家計防衛だけでなく、持続可能な農業・漁業を支える一歩となります。

  • 物価高騰や資源減少という難しい時代だからこそ、現場の声・自治体のアイディア・政府の支援を賢く活用することが、全体の安定と明るい未来につながるでしょう。

まとめ──農林水産行政の変化をどう受け止めるか

2025年の政策転換は、生活者・生産者・行政が一体となって直面する「食の安定」「現場支援」「持続可能性」という課題への挑戦です。高市政権下での朝令暮改的な対応や財政的制約もあり、議論は今なお続いています。政策の本質・今後の展開を注意深く見守る必要があります。

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