尾野真千子出演――河瀬直美監督6年ぶりの劇映画『たしかにあった幻』の真実に迫る
はじめに
2026年2月、河瀬直美監督が6年ぶりに手がける劇映画『たしかにあった幻』が、全国公開されることとなりました。本作は“日本の失踪者”と“心臓移植”という二つの重いテーマを同時に扱い、尾野真千子をはじめとする実力派キャストが集結しています。国際的にも高い評価を受け続ける河瀬監督が描く、「命」「喪失」「希望」、そして「愛」の物語に、多くの注目が集まっています。
作品概要―『たしかにあった幻』とは
『たしかにあった幻』は、小児臓器移植実施施設を主な舞台とし、医療の最前線で繰り広げられる人間模様を描いたヒューマンドラマです。監督・脚本を河瀬直美が務め、製作はフランス・ベルギー・ルクセンブルク・日本という国際共同制作となりました。オリジナル脚本映画としては8年ぶりとなり、河瀬監督らしい“他者との関係性”と“命の意味”への問いかけが特徴です。
主なストーリーの流れ
物語の主人公は、フランスからやってきたレシピエント移植コーディネーターのコリー。コリーは、臓器提供を待ち望む小児患者とその家族、脳死ドナーの家族たちとかかわっていきます。同時に、自身の恋人が突然失踪してしまうという出来事に直面し、その行方を追い求める――この二つの軸が交差しながら、命の尊厳と、喪失の痛み、そして再生可能な希望を見つめていきます。
テーマ:日本の失踪者と臓器移植医療
本作が大きな特徴となるのは、日本の失踪者問題と、心臓移植を中心とする臓器移植医療という二つの社会的課題を絡めて描いている点です。河瀬監督は、過去にも社会の周縁で生きる人々を描いてきましたが、本作では、家族が突然姿を消してしまう失踪という喪失感と、ドナーを待つ子どもたちやその家族の焦燥や葛藤が交錯します。この“死”の先に繋がる“命”の意味や、残された人々の心の再生が、真摯かつ静謐に映し出されます。
キャスト――心震わす実力派俳優たち
- コリー:ヴィッキー・クリープス(『ファントム・スレッド』で知られる国際派女優が参加)
- 迅(コリーの恋人):寛一郎
- 尾野真千子:河瀬作品の常連として出演
- 北村一輝、永瀬正敏、小島聖、岡本玲、松尾翠、早織、平原テツ、利重剛、中嶋朋子
特に尾野真千子は、河瀬監督作品を支え続け、これまでの『あん』『朝が来る』等でも圧倒的な存在感を見せてきました。今回も彼女ならではの深みある演技が期待されています。また、国際的キャストや若手俳優も参加し、多様な価値観と感情が共鳴し合います。
制作背景と国際評価
『たしかにあった幻』は、2025年夏にスイスで開催された第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナルコンペティション部門にクロージング作品として正式招待されました。この映画祭は長きにわたり河瀬監督と縁が深く、今回もワールドプレミアという形で上映されました。映画祭アーティスティックディレクターであるGiona A.Nazzaro氏は、本作について「水のように音を立てずに深く掘り下げ、沈黙を恐れず、耳を傾ける映画」と評しています。
また、河瀬監督のこれまでのキャリアにおいても、社会的課題への鋭いまなざしと、静謐な映像美は高く評価されてきました。『あん』ではハンセン病を抱える女性、『光』では視力を失うカメラマン、『朝が来る』では特別養子縁組を題材とするなど、一貫して「他者とのつながり」と「愛のかたち」を追求しています。
リアルな医療描写とドキュメント映像
本作の特色として、実際の医療従事者によるディスカッションや心臓移植手術など、ドキュメンタリー的要素を生かした迫真の場面が盛り込まれています。リアルな医療現場の描写と、患者や家族の心情の機微が、観る人の胸を強く打ちます。特に、失踪者の行方を追うドラマパートと、医療の現場で繰り広げられる「命の橋渡し」のリアルな描写が交差し、観る者に“生きるとは何か”という普遍的な問いを投げかけます。
尾野真千子が描く「生」と「喪失」
尾野真千子は河瀬作品の象徴的存在であり、今回も物語の“愛と再生”の象徴を担います。彼女はこれまで、“哀しみ”や“葛藤”、そして“希望”の芽生えを繊細に演じてきました。観客は、尾野が体現するキャラクターの想いを通し、亡くなった人が遺した「愛」と、新たな「生」への願いに心を重ねることでしょう。
社会的反響と公開への期待
『たしかにあった幻』が扱う失踪者と臓器移植というテーマは、社会的に大きなインパクトを持っています。人が突然姿を消すという喪失も、命のリレーとしての移植医療も、身近ながら普段は向き合いづらい現実です。こうした現代社会の“痛み”や“再生への希望”を、河瀬直美と尾野真千子は優れた映像表現と丁寧な演技で映し出し、多くの人々に深い感動と考えるきっかけを与えます。
まとめ
『たしかにあった幻』は、河瀬直美監督が6年ぶりに手がける劇映画であり、その中核を成すのが尾野真千子をはじめとした実力派俳優陣です。小児臓器移植現場を舞台に、失踪者問題という社会的課題とともに「愛・喪失・希望」へ真っ直ぐに問いかけ、観客に命の尊さや生きる意味を問いかける“感動作”として注目されています。国際的な映画祭でも評価を受け、日本国内外で大きな波紋と共感を呼ぶことでしょう。2026年2月の公開を、ぜひ多くの方に見届けていただきたい作品です。
主要キャスト・スタッフ一覧
- 監督・脚本:河瀬直美
- 出演:尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏、ヴィッキー・クリープス、寛一郎、小島聖、岡本玲、松尾翠、早織、平原テツ、利重剛、中嶋朋子
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
- 公開日:2026年2月
- 製作国:フランス、ベルギー、ルクセンブルク、日本
関連ビジュアルと今後の展開
2種類のメインビジュアルがすでに発表されており、登場人物それぞれの心情を象徴する印象的なビジュアルが公開されています。今後も公開に向けて、新たな映像や舞台挨拶、インタビューなど、さまざまなプロモーション展開が予定されています。映画という枠を超えて、社会との対話の場を広げていくことでしょう。




