2025年南城市議会議員選挙――古謝市長の去就・市政の行方をかけた一大決戦
市長と市議会、そして市民が問う「南城市のこれから」
2025年11月9日、沖縄県南城市で南城市議会議員選挙が実施されました。本選挙は、現職の古謝景春(こじゃ・かげはる)市長が職員へのセクハラ問題により市議会から不信任決議を受け、議会を解散したことに端を発しています。これにより、本来ならば定例的に行われる議会選挙ではなく、市政の信任・不信任を問う形で、異例の選舉戦となりました。
今回の選挙は、単に市議会の顔ぶれを決めるもの以上に、古謝市政の継続か刷新か、その方向性を市民一人ひとりが決断する極めて重要な機会となっています。
投票の概要と南城市の現状
- 告示日:2025年11月2日(日)
- 投票日:2025年11月9日(日)
- 投票時間:午前7時〜午後8時(一部会場は午後4時まで)
- 議員定数:20人
- 立候補者数:25人
- 有権者数:36,623人(男性18,264人/女性18,359人)
- 南城市の人口:47,208人
- 世帯数:20,568世帯
- 財政規模:一般会計予算271億3,259万円
南城市は近年、人口減少・高齢化、農業の担い手不足、観光と農業の連携強化など多くの課題を抱えつつ、豊かな自然や歴史文化を活かした地域振興を模索しています。市議会選挙は、こうした地域課題と向き合うリーダーを選ぶ場であると同時に、不信任決議を経て市政の在り方を問う“市運命の選挙”となりました。
特に、農業分野においては高齢化や後継者不足、台風など自然災害の影響とその対策が急務となっており、議員選びが南城市の未来を左右することは間違いありません。
投票率の推移と市民の意識
投票率は選挙戦への関心や市民の危機感を示す大事な指標です。開票当日午前7時から投票が始まり、午後6時時点で投票率は25.40%と発表されました。これは前回同時刻比で0.98ポイント上回っており、多くの市民が特別な思いを持って一票を投じたことが伺えます。
また、期日前投票には事前に約28%、10,310人が訪れており、期日前と当日午後6時までの合計で投票率は実に53.55%に達しました。最終的にはさらなる上昇が見込まれ、選挙戦への関心の高さが強調されています。
今回選挙の最大の焦点――「古謝市政」の去就
議会解散のきっかけとなったのは、古謝市長による職員へのセクハラ問題です。市議会はこの問題を重く受け止め、不信任決議案を可決し議会は解散へ。本来ならば解散して再選挙を行い、新たな議会で信を問うのが筋ですが、今回の選挙では「古謝市政の継続か刷新か」が最大の争点となっています。
仮に新たな市議会で再び不信任決議案が可決されれば、古謝市長は失職という大きな節目を迎えることとなります。このため、改選後の議会構成だけでなく、議員それぞれの市長支持・不支持のスタンスが大きな関心を集めています。
得票数・開票速報のリアルタイム公開
今回の選挙では、午後9時から各候補者の得票数がグラフでリアルタイム更新されています。当選確実な候補者には「花マーク」が付き、市民にわかりやすく速報を伝える工夫も施されています。
各主要メディアや市公式ページでは、開票所の様子をライブ配信するなど、市民の関心と緊張感の高さがうかがえました。
市民にとっての「一票」の重み
今回の市議選を巡り、市民の中には「政治不信」の声も根強く存在する一方で、「今こそ一票でまちを変えたい」との切実な思いも多く聞かれました。
候補者は現職と新人の混在で、農業政策、福祉充実、教育・子育て支援、観光政策、防災強化、財政健全化など幅広い政策を掲げています。中でも議員報酬のあり方や議会改革など、“市議会のあり方そのもの”も争点となっています。
選挙を通じて変わるもの・変わらないもの
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市政運営の方向性
選挙結果次第で、古謝市長の続投・失職という大きな岐路を迎えます。首長と議会の信頼関係が揺らぐ中、市民がどのような未来を選ぶのか注目されます。 -
議員の構成
定数20に25人が立候補した激戦。新旧交代、新人の割合、政治信念の多様性など、新たなバランスが生まれるかもしれません。 -
地域課題との向き合い方
農業の持続や災害対策、子育てや福祉政策といった現場の声をどれだけ汲み取り、施策へ反映させられるか。議会の機能強化も問われています。 -
有権者の意識
「自分の一票で現実は変わるのか」という問いに、今回の高い投票率が一つの答えともなっています。「政治は遠い存在ではない」――そんな認識の芽生えも感じられました。
投票・開票方法や会場案内
投票所は市内5か所に設けられ、投票所ごとに混雑予測も公表されました。なお、投票入場券(ハガキ)を紛失した場合も、本人確認書類を持参すれば投票が可能です。
期日前投票は11月3日から8日まで連日実施され、仕事や家事で当日投票が難しい有権者にとって利用しやすい体制が築かれました。また、高齢者や障害者のために代理投票制度も整備され、地域包摂の姿勢が示されています。
今後の展望と市民への呼びかけ
本稿執筆時点では、得票数の速報が順次更新されており、大勢が固まりつつあります。
いずれにせよ、議会と市長、議員それぞれが「市民のためのまちづくり」を忘れず、開かれた対話や説明責任を果たすことが求められます。市民の声がまちの未来にダイレクトに反映されるような「透明性ある政治」の実現こそが、今後の南城市にとって何より大切です。
おわりに――「わたしたち」の南城市の明日へ
市政不信、議会混乱、課題山積——その一方で、南城市には市民の力強さと希望も息づいています。市議会議員選挙を通し、市民一人一人が「自分ごと」として政治に向き合った体験は、きっと今後のまちづくりにとって大きな財産になるはずです。どんな結果になったとしても、この一票の重みを忘れず、次なるチャレンジを全員で紡いでいく——そんな南城市のこれからに期待します。



