KDDI、2026年度第1四半期決算と上期最終増益―通信×グロース領域の進展と課題
KDDIの最新決算発表―2026年3月期第1四半期の業績概要
KDDI株式会社は2026年3月期第1四半期(2025年4~6月)の連結決算を発表しました。連結売上高は前年同期比3.4%増の1兆4,363億円となり、通信事業を基盤に金融・エネルギー事業やIoT関連グロース領域の成長が業績を牽引しました。一方、営業利益は前年同期比1.6%減の2,725億円、当期利益は3.3%減の1,711億円となっています。過年度の販促費による影響や楽天ローミングの減収など、一過性費用が利益減少に影響しましたが、主要事業については順調な進捗が見られます。
売上増・利益減の背景―成長分野の拡大と一過性費用の影響
KDDIの連結売上高は堅調な伸びを示しており、その主要因は次の通りです。
- 通信事業(モバイル収入)の底堅い成長
- 金融事業収入・エネルギー事業収入・IoT関連サービスなどグロース領域の拡大
また、個人向けサービス(パーソナルセグメント)では通信や金融、エネルギー、ライフデザイン領域のサービス提供が拡大。法人向け事業(ビジネスセグメント)でも5G関連サービスやソリューション、データセンター等が引き続き成長基調となっています。ただし、営業利益と最終利益の減少は、過年度販促費(-214億円)、ステークホルダー還元や楽天ローミング減収(-29億円)など一過性費用が影響しており、これらについてKDDIは想定内と説明しています。
第1四半期の業績詳細
| 指標 | 2025年同期 | 2026年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,891億円 | 1兆4,363億円 | +3.4% |
| 営業利益 | 2,770億円 | 2,725億円 | -1.6% |
| 最終利益 | 1,769億円 | 1,711億円 | -3.3% |
| EBITDA | 4,506億円 | 4,458億円 | -1.1% |
| 営業利益率 | 19.9% | 19.0% | -0.9pt |
第1四半期の通期計画に対する進捗率は売上高でおよそ22.7%、最終利益で22.9%と、例年並みのペースとなっています。
セグメント別の特徴―パーソナルとビジネスの成長
KDDIは「パーソナル」「ビジネス」の2つのセグメントを柱としています。
- パーソナルセグメント:個人向け通信、金融、エネルギー、決済、スマートホーム、IoTなど。モバイル事業は前年同期比で+19億円増加し、引き続き安定した成長。
- ビジネスセグメント:法人向けソリューション、ネットワークサービス、データセンターなど。5G商用サービスや企業向けDX支援が好調。
これらの領域では、従来の通信事業から周辺領域へと範囲が拡大していることが業績を下支えしています。特に金融事業やエネルギー事業で新たな収益機会が生まれ、通信市場の成熟化による成長率低下のリスクを補完する役割を果たしています。
5G拡大と将来戦略
KDDIは5Gインフラの拡大を積極的に進めています。5G端末の普及、エリア拡充に加え、超高速通信・低遅延通信を活用した新サービス展開も同時に行っており、法人向けには工場・物流・医療領域でのIoT・DXサービス拡充が進んでいます。
- 5G基地局数増加
- 企業向けIoT・DXサービスの新規導入
- エンターテインメント・教育向けコンテンツの拡充
グループ横断で人材・資本活用を加速し、次世代通信サービスの競争力強化と収益分散を目指しています。
上期最終の増益に着地―全体業績と見通し
2025年度上期(2025年4~9月)を通じて、KDDIは最終利益8%増益で着地したと見られ、期初計画に対し順調な進捗を維持しています。これは、販促費など一過性コスト影響を乗り越え、主要事業での順調な進展やグロース領域拡大を実現したためです。また、通期見通しでは売上増益を維持しています。
今後の見通しとしては、通信基盤の競争力維持に加え、グループ横断型事業・5Gサービスのより一層の拡大を推進しつつ、金融・エネルギー・IoTサービスによるリカーリング収益基盤の強化が求められます。一方で、激化する業界内競争や規制強化、販促費用のコントロールは常に課題となっており、持続可能な成長のためのバランスが重要です。
企業側コメント―事業環境への認識と対応
代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は「主要事業の進捗は想定通りであり、期初予想に対して着実に進捗できている。販促費やローミング減収といった一過性要因は十分織り込み済み。グループ全体で通信・金融・エネルギー・コンテンツなど多角化事業を推進し、収益基盤の確立と長期安定成長を目指していく」と述べています。
財務の安定性と今後の注目ポイント
資産合計は前年度比4.3%増の17兆5,943億円。金融事業の貸出金や使用権資産の増加が主因となっています。負債合計は6.4%増の11兆9,408億円、親会社所有者帰属持分比率は1.1pt減の29.3%と、資金調達と事業拡大が進行中です。今後も通信領域以外への積極投資と資本効率のさらなる確保が注目されます。
まとめ―KDDIの現状と展望
- 通信・金融・エネルギー等グロース領域への投資で売上増加を達成
- 営業利益・最終利益は一過性コスト影響で減少するも、多角化が業績を下支え
- 5Gを軸にした新サービス展開、法人向けDX拡大が今後の成長ポイント
- 財務基盤は安定的に推移、投資戦略と規模拡大を継続中
KDDIは事業多角化・成長投資の戦略が着実に奏功中です。通信基盤に加え、金融・エネルギー・IoT・DXといった新規領域への拡大で持続成長力の強化を続ける一方、競争環境や費用対策にも目を配り、着実な事業進捗と財務安定を維持しています。今後はさらなる新サービス・新分野への挑戦と、各領域でのシナジーを活かした利益成長が注目されるでしょう。




