ヤマハ発動機、2025年1~9月期は純利益7割減 水上バイク販売の低迷で苦戦
ヤマハ発動機株式会社が2025年11月5日に発表した、2025年12月期第3四半期(1~9月累計)の連結業績は、市場の注目を集めています。今回の決算では、純利益が前年同期比で68.1%減の434億円まで大きく落ち込み、なかでも水上バイク(ウォータービークル)などマリン事業の低迷が顕著となっています。営業利益も同44.1%減の1,124億円となり、この分野で世界的なブランド力を持つ同社にとって、厳しい結果となりました。
2025年12月期第3四半期の連結業績の概要
- 売上収益:1兆9,103億円(前年同期比3.4%減少)
- 営業利益:1,124億円(前年同期比44.1%減少)
- 親会社の所有者に帰属する四半期利益:434億円(前年同期比68.1%減少)
- 税引前利益:1,132億円
これらの数字から、2025年1~9月期のヤマハ発動機の業績が前年よりもかなり厳しいものとなっていることが分かります。特に、最終利益は7割減となり、7-9月期(第3四半期単体)においては赤字に転落しています(同期間の赤字額は97.2億円)。
事業別の動向と主な背景
ヤマハ発動機の主力事業であるマリン事業、特にウォータービークル(水上バイク)やアウトドアランドビークル(OLV)について、今年は販売台数の大幅な減少が業績悪化の直接的な原因となりました。
- ウォータービークル:米国を中心に市場全体の需要が減少し、同社の販売台数も前年を下回りました。
- アウトドアランドビークル:低調な需要で固定資産の減損損失が発生しました。
- 船外機:欧米市場では堅調な販売が続いているものの、アジア市場での販売減少が全体に響きました。
また、営業利益の減少については、研究開発費や人件費などの販管費増加、OLV事業の有形固定資産減損、さらに米国の関税影響が徐々に現実化したことも要因となっています。
為替環境と外部要因
当期の為替換算レートは、米ドルで148円(前年同期比3円の円高)、ユーロで166円(同1円の円安)となりました。為替の動きも業績に一定の影響を与えています。また、世界的な経済状況の不透明感や米国の追加関税など、外的要因が収益を圧迫しています。
経営陣のコメントと今後の見通し
代表取締役社長の設楽元文氏は、「上期からのトレンドを維持しつつ、売上収益は前年並みだが、利益面では厳しい結果となった」「マリン事業やウォータービークルなどの販売減少、OLV事業の固定資産減損、米国関税などのリスクが影響した」と総括しています。
- MC(モーターサイクル)事業:第3四半期単独では増収増益を維持し、一定の明るさを見せています。
- 通期見通し:通期予想(純利益450億円)は据え置き。今後も厳しい環境が続くと見られるなか、コスト管理の徹底と中長期成長に向けた選択的な取り組みを強化する方針です。
株式・財務状況と株主還元
- 2025年11月4日時点の時価総額:1兆1,321億円
- 発行済株式数:10億1,812万5,101株
- 年間配当金(会社予想):1株あたり50円(昨年と同額を維持予定)
- 配当利回り(会社予想):4.50%
- 自己資本比率:41.7%
株価も業績悪化を受けて反応しており、年初来高値は1,384円(2025年1月6日)、年初来安値は963円(2025年4月7日)となりました。
各事業の業績詳細
-
マリン事業:
- 売上収益:3,993億円(前年同期比3.9%減少)
- 営業利益:492億円(同37.9%減少)
船外機は欧米での販売は堅調ながらアジアでの減少が全体に影響。ウォータービークルの米国市場の冷え込みが打撃となりました。
-
MC事業:
モーターサイクルを中心に第3四半期単独では増収増益を維持。主要なコア事業として今後への期待も高まっています。 -
アウトドアランドビークル(OLV)事業:
売上は減少、固定資産減損により利益面も低下。市場の縮小や在庫調整の影響も大きい1年となりました。
今後の課題と対応方針
- 需要の低迷が続くウォータービークルなどの「マリン事業」の立て直しが喫緊の課題です。
- 研究開発費・人件費の適正化、徹底したコスト管理と選択と集中による事業効率の最大化が求められています。
- 為替変動への耐性やグローバルリスク対応力強化も不可欠です。
今後、ヤマハ発動機は収益力の回復を図りつつ、中長期的な成長戦略の見直しに取り組むことが重視されます。特に、主力のマリン分野、水上バイク、OLV事業の不振からいち早く脱却できるかが、今後の成長のカギとなるでしょう。
おわりに
2025年第3四半期はヤマハ発動機にとって試練の時期となりましたが、基幹事業であるMC事業の安定、コスト構造の見直し、グローバルな市場変化対応など、企業体質を強化する動きも着実に進められています。依然として厳しい環境が続く中、ヤマハ発動機の次なる一手に市場の注目が集まります。



