NTT、堅調な決算発表と将来への一手「NTTモビリティ」設立――株価動向はどうなる?

2025年11月4日、日本を代表する通信大手・NTT(東証プライム:9432)が2025年度上期(4~9月期)の決算を発表しました。営業収益、営業利益、最終利益ともに前年実績を上回り、特に7~9月期(第2四半期)の最終利益は前年同期比19.7%増という好成績となっています。また、同日発表された自動運転分野の新会社設立も注目を集めており、今後の株価への影響にも市場の関心が集まっています。

NTTの上期決算、内容を詳しく見ると

2025年度上期(4~9月期)のNTTグループの連結最終利益は5956億円と、前年同期比7.4%増となりました。通期(2026年3月期)の連結最終利益計画は1兆400億円ですが、上期中間時点での進捗率は57.3%と、過去5年平均(56.3%)とほぼ同水準です。この進捗率は、会社が通期目標達成への道筋をしっかりと描けていることを示しています。

特に直近3カ月(7~9月期、第2四半期)は、最終利益が3359億円と前年同期比19.7%増加、売上営業利益率も前年の14.5%から15.4%へと上昇しています。これを受けて、市場では「NTTの業績回復の勢いが再び加速した」と受け止める向きが強まっています。

項目 2024年度上期 2025年度上期 増減率
営業収益 6590億円 6772億円 +2.8%
営業利益 920億円 945億円 +2.7%
当社帰属利益 5547億円 5956億円 +7.4%

個別の項目をみると、営業収益は6兆7,727億円(前年同期比2.8%増)、営業利益は9,450億円(同2.7%増)、NTT単体の最終利益は5,956億円(同7.4%増)と堅調な伸びです。1株あたり利益も6.60円から7.20円へ上昇し、株主への還元も引き続き行われています。

ただ、来期(2025年10月~2026年3月)の連結最終利益については、前年同期比0.2%減の4443億円とほぼ横ばいとの試算もあり、上期の好調さを維持できるかが今後の課題になりそうです。

ドコモの動向と「正念場」説

今回の決算発表では、携帯電話事業を担うNTTドコモについても「正念場」との指摘が目立ちました。収益の主力である携帯事業では、大手3社による価格競争が激化しており、NTTグループ全体としても安定した成長の維持が求められています。

これまでドコモは「スマホ」「テレビ」など既存サービスに強みを持っていましたが、今後はどのような新たなサービスで差別化を図るかが注目されています。その中で、今回の新会社設立は、グループ全体の成長戦略として注目されています。

NTTモビリティ設立――自動運転・MaaS攻勢へ

同日、NTTは自動運転分野で新会社「NTTモビリティ」を設立すると発表しました。新社は2027年度をめどに、遠隔監視や移動サービス(MaaS)事業を本格展開する予定です。今後、車載通信やクラウド連携、AI活用など、NTTグループが持つ通信・IT技術を活用し、自動運転社会の実現に本格参入します。

NTTモビリティの構想は、自動運転車両の運行管理やトラブル対応のための遠隔監視、さらにはスマートシティやロジスティクス分野との連携まで視野に入れたものです。これは、NTTグループが単なる通信事業者から「社会インフラの高度化」を担う企業へと進化しようとする姿勢の現れといえるでしょう。

自動運転分野では、ソフトバンクやKDDI、トヨタ自動車など国内外の大手がすでに攻勢を強めており、熾烈な競争が予想されます。しかし、「安全・安心」が求められる自動運転社会において、NTTが持つ通信インフラとセキュリティ技術は大きな強みです。新会社の具体的な事業内容や他社との連携が今後どう展開されるか、株価への影響も考え合わせて注目されています。

NTT株価の今後の見通し

今回の好決算と新会社設立のニュースを受け、NTT株価の短期的な上値は期待されます。実際に決算発表直後から、市場では「成長期待再燃」との声も聞かれます。

一方で、通期計画の進捗率は過去平均とほぼ同水準であり、下期(10~3月期)は横ばいとの試算もあり、今後の業績見通しは慎重に見極める必要があります。また、NTTドコモを巡る経営環境や、新規事業「NTTモビリティ」の今後の進展によっては、さらなる成長期待が醸成される可能性もあります。

さらに、自動運転分野への本格参入は、NTTグループの今後の収益構造や、成長エンジンとしてのポテンシャルを高める材料となり得るでしょう。事業多角化によるリスク分散や、新しい収益源の柱が生まれるかどうかが、株価の長期的なパフォーマンスを左右します。

投資家へのアドバイス

  • NTTグループは上期を好調に推移し、通期計画も順調なペースです。
  • 直近四半期は前年同期比20%近い増益と、積極的な企業努力が光ります。
  • ドコモの成長戦略や新会社「NTTモビリティ」への期待感も高まっています。
  • 一方で、今後の収益環境や新規事業の具体化には注意が必要です。
  • 株価は当面は好材料が続く見通しですが、先行き不透明感にも目配りを。

今回のNTTの決算発表と新会社設立は、同社が長年積み上げてきた通信インフラの強みを活かし、自動運転やMaaSなど次世代サービスへも本格参入する姿勢を鮮明にしたといえるでしょう。今後も成長企業としてのNTTの動向から目が離せません。

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