千代田区、空き室賃貸活用へ 価格高騰対策の本格調査と改修助成の最新動向
はじめに
東京都心の千代田区で、空き室の有効活用を目指した新たな取り組みが注目を集めています。マンション価格の高騰や空き家率の上昇という社会課題のなか、千代田区は区内全てのマンションやアパートの空き部屋を調査し、改修費の助成を実施する方針を具体的に打ち出しました。
この記事では、千代田区による空き室賃貸活用策の現状や背景、期待される効果、そして課題や住民へのメリットについて、最新ニュースをもとにわかりやすく説明します。
千代田区の空き室問題とは
千代田区は東京の中心部でオフィスビルや高級マンションが立ち並ぶ地域です。しかし、近年は人口減少や相続、転居などにより空き家・空き室の増加が社会問題となっています。令和6年度の千代田区の住宅白書によれば、区内の空き家数は4,470戸、空き家率は約10.7%と、23区平均と同水準です。多くが賃貸用住宅の空室ですが、特に築年数が古い木造住宅の老朽化と耐震性不足が目立ちます。
「7割が空き家」の高級マンションの存在も話題になっており、千代田区の一部高額マンションが中国人投資家の投資対象（いわゆる“ハッピーセット”）となる状況が報道されています。資産価値は高くても、実際には居住されず放置されるケースが増えています。
マンション空き室活用の本格調査とその狙い
2025年度、千代田区は区内のマンションやアパートに存在する全ての空き部屋（放置されている物件も含む）を対象に、初の全面調査を開始する方針を発表しました。
- 価格高騰への対策
千代田区では都心のマンション価格高騰が続き、一般市民の住宅取得がますます困難になっています。未活用の空き室を賃貸市場に供給し、比較的廉価な住居を増やすことで、区民の住環境改善と若年層・子育て世帯の流入促進を目指します。
- 改修費助成による物件活用
空き室の利活用を阻む最大の障壁は、老朽化による改修費用負担です。千代田区は所有者などの経済的負担を軽減するため、必要な改修費用の一部を区が助成する新制度を導入予定です。これにより、長期放置されていた物件の賃貸化を後押しします。
- 区の本格調査
一部物件の予備調査はすでに始まっており、全戸調査に向けて来年度一般会計予算案に関連経費の計上が位置づけられています。
区民への具体的なサポート内容
- 無料相談窓口の整備
千代田区役所の区民相談室では、弁護士・司法書士・宅地建物取引士など専門家による
無料相談が受けられます。相続、税務、売却、解体など各自の悩みに細かく対応してくれる体制です。賃貸管理や活用プランの相談も可能です。 - 助成対象と申請方法
空き家助成は、昭和56年以前に建てられた木造住宅が主な対象です。それ以外でも空室活用・管理の相談ができます。助成申請から決定までは概ね1～2ヶ月ほどですが、予算状況や書類準備によって変動します。他の公的融資制度などとの併用可否は個別相談で確認可能です。
- 全国対応のアドバイス
区の専門窓口以外にも、民間の無料相談サービス（アキカツカウンターなど）を利用することで、遠方物件や他区市町村の空き家対応もサポートされています。
背景にある市場動向とエリア特性
千代田区は都内でも特に地価・マンション価格が高いエリアですが、都営三田線沿線など近隣区や北部エリアと比べると賃料水準が突出しています。そのため、従来南部（千代田・中央・港区など）で発生していた住宅需要が、より割安な北部エリアへ流れ空室率低下が目立つ動きも見受けられます。
一方、千代田区内の優良民間賃貸住宅の登録件数も着実に増えており、都心ならではの資産価値と賃貸ニーズの転換が求められています。
高級マンション空室の現実と、国際的影響
「7割が空き家」の高級マンションという報道が象徴する通り、千代田区の“億ション”は一部海外投資家、特に中国人投資家による相続・資産ポートフォリオの一部として購入されることが増えています。その結果、実際に居住されず「ハッピーセット」と呼ばれる投資用マンションが空室のまま放置される現象を生んでいます。
空室でも物件価値が維持される投資環境が整っている一方で、実需（居住利用）への転換が進まなければ、地域の活気や安全面に課題を残すこととなります。
今後の見通しと期待される効果
- 住民の選択肢拡大
空き室賃貸化により、千代田区内での住居確保が容易になることで、若年層や子育て世帯、地域で働く人々が都心で暮らす道が広がります。
- 空き家の防災・防犯への寄与
老朽化・耐震性不足物件への助成により、安全な住まいの提供・災害リスク低減が期待されます。
- 不動産市場全体への波及効果
空き室活用の成功事例が生まれれば、他区への波及や賃貸市場の流動化促進が見込まれます。
課題と今後の対応策
空き室活用には、所有者の意欲・管理体制の強化、調査・改修・助成の予算確保、賃貸需要と供給のミスマッチ解消など、複雑な課題が残されています。千代田区は多様な専門家相談や助成制度、地域連携を軸に、安全安心なまちづくりの推進を続けていく見込みです。
まずは区役所の相談窓口や専門相談サービスを活用し、個人・事業者が一歩を踏み出すことが、広がる空き室問題の解決につながります。
終わりに
千代田区の空き室賃貸化と助成策は、都心の住宅問題や地価高騰への有効な一手となり得ます。住民一人ひとりが現状を把握し、専門家の力を借りて最適な利用方法を検討することが、より豊かな生活基盤を築く鍵となるでしょう。
今後のさらなる調査と制度拡充に期待しつつ、誰もが安心して暮らせる千代田区を目指した動きが加速しています。
