早稲田大学「早稲田祭2025」と“偽物の弱者ごっこ”炎上騒動――学園祭の本来の意義と課題
はじめに
早稲田大学の学園祭「早稲田祭2025」が、2025年11月1日・2日に早稲田キャンパスおよび戸山キャンパスを中心に盛大に開催されました。
例年約20万人が来場し、日本最大級の規模を誇る本イベントは、学生による多彩なステージや企画、飲食店とのコラボなどで、学生・卒業生・地域住民が垣根なく交流する貴重な場となっています。
しかしその華やかな祭りの一方で、今年はあるイベントが大きな波紋を呼びました。それがSNSをはじめネット上で「偽物の弱者ごっこ」と揶揄され、炎上騒動にまで発展したのです。
この記事では、ニュースで注目された炎上騒動の経緯と背景、そして早稲田祭本来の意義や学生たちの思い、今後の課題について詳しく解説します。
「早稲田祭2025」概要と多様な企画
- 開催日:2025年11月1日(土)と2日(日)
- 会場:早稲田キャンパス・戸山キャンパス・周辺地域
- 主催:「早稲田祭2025運営スタッフ」
- 来場者:例年20万人規模
- 今年のスローガン:「人生に、つながろう」
2025年の早稲田祭は、「人生に、つながろう」をテーマに掲げ、「つながり」が生まれる場所として、幅広い世代と立場の人々が交流することを目的としています。
約450にもおよぶ企画が用意され、伝統のステージ企画(演奏・パフォーマンス・ダンス)、学生サークルによる体験企画、ゼミや研究団体による展示・発表、そして近隣飲食店とのコラボブースなど、充実したラインナップです。
屋外ステージやカフェテリアでは、プロのアーティストのライブや書道パフォーマンス、ダンスイベントなども多数催されました。
問題となったイベント―「偽物の弱者ごっこ」と炎上
今回話題となったのは、学生有志グループによる「弱者体験パフォーマンス」と称されたイベントでした。
内容は、数名の学生たちが「ブリーフ姿」など扮装をしてステージや会場内でパフォーマンスを行い、様々な“弱者”役になりきるというものでした。
しかしこの企画が「不適切ではないか」「他者を揶揄・蔑視している」とSNS上で拡散され、
「偽物の弱者ごっこ」「人を見下す内容」「学術祭の本分から逸脱している」
などと批判を集める事態となりました。
当初はユーモアや風刺の要素を含む企画とされていましたが、参加した学生の服装や演出が過激だったこと、また“弱者”という言葉の使い方や趣旨そのものが不適切だという意見が相次ぎました。
特に「下着姿で過ごすことで困難な立場を疑似体験した気になるのは浅薄で、不謹慎」といった批判が目立ちました。
現場とネットの反応
実際、パフォーマンス中には会場からも一部ブーイングやどよめきが起こりました。
SNSや掲示板では「差別的」「配慮に欠ける」「大学祭の企画として不適切」という声だけでなく、
「表現の自由はあるが、その使い方を誤っている」「社会的テーマの浅薄な模倣は危険」
「楽しければいいというだけでは済まされない」など批判の意見が特に多く、短時間で拡散―大炎上に発展しました。
一部には「真意を伝えきれなかった」「炎上覚悟の表現だったかもしれないが不快だった」など、主催側の意図を理解しようとするコメントや
「現場にいれば分かったこともあったかもしれない」と擁護する意見もありましたが、多くは否定的でした。
主催側と大学の対応
炎上を受けて、早稲田祭運営スタッフは即日ホームページと会場で謝罪文を掲出し、「問題となったパフォーマンスの中止」を発表しました。
主催学生グループも「思慮足らずだった」と謝罪し、今後同様の問題が再発しないよう企画選定の過程や内容チェックの強化を約束しました。
大学側も「大学の方針と照らして不適切な表現があった」とし、表現の自由と公の場での適切な配慮について再徹底する旨を発表しました。
今回の対応については「早期に中止・謝罪できたのは評価する」「企画内容の審査体制に課題がある」とする指摘がみられます。
祭りの本旨と「つながり」の重要性
早稲田祭は毎年、「多様なつながり」「人生に影響を与える出会い」を大きなテーマとし、学生主体で新しい表現や交流の機会を模索してきました。
代表の吉田詩さんも
「参加者や地域との良いつながりをたくさんつくってほしい」と語っています。
そのため、今回の騒動は「本来あるべき祭りの理念」(共生・尊重・創造)から大きく逸脱したと受け取られ、外部からも厳しい目が向けられたのです。
多様性と自由な表現のはざまで――企画審査体制の課題
早稲田祭のような巨大な大学イベントでは自由な表現活動と多様性・包摂性への配慮のバランスが常に問われます。
自主的に企画を立案・実行する文化が評価される一方で、出展内容が大学や社会の多様な価値観を損ねることは避けなければなりません。
今年は特に「主催団体のチェック体制」「事前の説明・対話の有無」「社会的弱者や差別への感度の欠如」といった問題が噴出し、審査フローの厳格化、自主企画への教育的指導や多面的な助言の重要性が浮き彫りになりました。
早稲田祭2025のその他の注目ポイント
炎上騒動の一方で、
2025年の早稲田祭は依然として活発なイベントが目白押しでした。
- 歴史ある芸術・舞踏・音楽団体が大隈記念講堂や特設ステージでパフォーマンスを披露
- アニメ・漫画・スポーツ・工学・社会学など分野横断型の企画ブース
- 著名アーティスト(yama、ハンブレッダーズ、Tele、ハルカミライ)によるライブ
- 飲食店ワセメシとのコラボメニューや、アレルギー表示拡大・地域連携強化
また、早大応援部主催の「稲穂祭」(早慶戦前夜祭)や吹奏楽、オムニバス演奏など、伝統を感じさせる催しも盛り上がりを見せました。
学園祭と社会課題──今後に向けて
今回の炎上騒動は、「表現の自由」と「社会的配慮」の境界や、大学文化祭という公共空間でのあり方を問い直す契機となりました。
今後は、
- 主催側のチェック体制の見直しと透明化
- 社会的多様性や包摂性への理解を深める事前学習やワークショップ
- 問題が起きた場合の迅速な情報公開と対応
- 学生・地域・大学間の連携強化
が一層重要になっていくでしょう。
早稲田大学の学園祭は、互いを理解し合い、尊重しながら創造的な交流を育む場として、今後も発展が期待されます。
おわりに
「人生に、つながろう」をテーマに掲げた早稲田祭2025は、多様性と自由な交流の素晴らしさと、公共の場における社会的責任の重さ、両方を私たちに強く問いかけました。
それは単なる炎上事件にとどまらず、若い世代と社会全体が今改めて見直すべき“つながり”の在り方そのものなのです。
今後の祭りや大学イベントが、より一層包摂的で創造的なものとなることを願い、早稲田の熱気あふれる文化祭はその歩みを続けていくでしょう。



