第一三共の最新決算発表と株価動向
製薬大手の第一三共は2025年10月31日に2026年3月期第2四半期決算(国際会計基準=IFRS)を発表しました。今回の決算は、業績の一部見直しが行われたことで市場でも大きな注目を集めています。
本記事では、減益修正の背景や、株価への影響、そして今後の企業動向について、分かりやすく解説します。
今期最終利益、3%減益に下方修正
今回発表された内容によると、2026年3月期第2四半期(4~9月)の連結最終利益は前年同期比10.8%減の1,308億円となりました。これは市場予想を下回る結果です。さらに、通期の最終利益予想も従来の3,000億円から2,880億円へと4.0%下方修正され、一転して前期比2.6%の減益予想となりました。
- 従来予想:3,000億円
- 最新修正:2,880億円(前期は2,957億円)
- 減益率:前期比2.6%減
- 第2四半期累計利益:1,308億円(前年同期比10.8%減)
この減益修正の背景には、一過性費用を計上したことが大きいとされています。事業再編や特別損失などが影響し、最終利益が想定よりも減少しました。
業績の推移と各指標
第一三共の業績推移を見ると、新薬等の市場拡大を背景に売上高は順調に増加しています。一方で、利益については費用計上の影響で増益から減益へ転じた形です。最新の実績情報を整理すると以下の通りです。
- 売上高:2025年3月期は1兆8,862億円(前年同期比増加)
- 営業利益:3,319億円(前年同期比増加)
- 純利益:2,957億円(前年同期比増加)
- 自己資本比率:47%(前年同様、高水準を維持)
- 株価:決算発表直後は反応が見られ、やや調整局面へ
四半期ごとの推移を見ると、2026年3月期第1四半期の最終利益は前年同期比0.1%増の855億円。進捗率は28.5%で、5年平均の33.8%を下回っていました。また、売上高は8.8%増の4,746億円となり、新薬の好調など明るい材料も見られました。
直近3か月の業績詳細
最新の7~9月期(第2四半期)の連結最終利益は、前年同期比26.1%減の453億円と大きく落ち込みました。
売上営業利益率も前年同期21.0%から、今期は9.5%へ急低下し、利益率面でも厳しい状況となっています。
- 第2四半期(7~9月期)の最終利益:453億円(前年同期比26.1%減)
- 売上営業利益率:9.5%(前年同期比11.5ポイント低下)
下期(10月~3月)の見通し
会社側が発表した上期実績と通期計画から試算すると、下期(10月~3月)の連結最終利益は5.4%増の1,571億円に伸びる計算となります。一過性費用の計上が上期に集中したため、下期は反動で回復する可能性も指摘されています。
決算における一過性費用の内容
第一三共が計上した「一過性費用」とは、例えば事業再編に関わるコストや、特定資産の売却損・特別損失などが該当します。2025年度第1四半期では札幌・東海支店の売却や子会社株式譲渡益など、収益・費用が混在しつつ決算に反映されています。
- 事業再編に伴う費用
- 支店売却、子会社株式譲渡に関連する収益・費用
アナリスト予想と市場反応
今回の決算では、税引前利益などの主要項目がアナリスト予想を若干上回った部分もありましたが、一過性費用による最終利益の減益が重しとなりました。株価は決算発表を受けて一時下落したものの、底堅さも見せています。
- アナリスト予想より上振れ:税引前利益1632億円(市場予想より良好)
- 株価反応:減益が嫌気されて株価調整。その後は安定推移
今後の課題と展望
第一三共は、主力新薬エンハーツやダトロウェイなどの成長が売上高の増加に寄与しており、基礎的な収益力は高い水準で維持されています。今後は、一過性の費用が解消されれば、利益面でも安定性が戻る可能性があります。研究開発やグローバル展開においても積極的な投資を継続していることから、中期的な成長には期待が持てます。
- 新薬の海外展開拡大
- 研究開発費の増加による新たな成長分野創出
- 財務健全性の維持と株主還元施策への注目
まとめ:株主・投資家へのメッセージ
今回の決算で第一三共は、一時的な減益修正により市場にインパクトを与えましたが、売上高や主力新薬の好調、下期での回復見込みなど、全体として企業の競争力は引き続き高いといえるでしょう。不安材料の一過性費用がクリアされれば、株価の再上昇、そして安定した業績成長に向けた布石となるのではないでしょうか。
今後も決算動向や新薬開発、株価の推移について注目が必要です。株主や投資家の皆さまには、長期的な視点での企業価値向上をじっくり見守ることをおすすめします。
関連キーワード・用語解説
- 国際会計基準(IFRS):世界共通の会計基準。企業業績をよりグローバルに比較できる基準。
- 一過性費用:事業再編や資産売却など一時的に発生する特別なコスト。
- 売上営業利益率:売上高に対する営業利益の割合。企業の収益力を示す重要指標。
- 純利益:すべての費用や税金などを差し引いた最終的な利益。
- 自己資本比率:企業の安定性を示す指標。高いほど財務的に健全。

 
            


 
            