HYBE傘下ADORとNewJeansを巡る専属契約訴訟、韓国地裁でADORの全面勝訴—K-POP業界に大きな衝撃

近年、世界的な注目を集めるK-POPですが、2025年10月30日、韓国最大手エンターテインメント企業の一つHYBE傘下のレーベル「ADOR」と、人気ガールズグループ「NewJeans」の法廷闘争に一つの大きな区切りが打たれました。
ソウル中央地裁は、NewJeansが主張した専属契約解除を全面的に認めず、ADORとの契約は有効との判決を言い渡しました。この出来事は、単なる芸能界内のトラブルにとどまらず、K-POP産業全体に波紋を広げています。

背景:「信頼破綻」から始まった専属契約解除騒動

この係争の発端は、2024年11月に遡ります。NewJeans側は、「ADORとの信頼関係の破綻」を理由に専属契約の解除を通知し、独自活動へと舵を切る声明を発表しました。同時に、グループ名も「NJZ」へ変更して活動を続けようとしました。

  • 2024年11月:NewJeansがADORとの信頼関係破綻を表明し、解約通知を送付
  • 2024年12月:ADORがNewJeansメンバー5人を相手に「専属契約有効確認訴訟」を提起
  • 2025年2月:NewJeansがグループ名をNJZに変更
  • 2025年3月:ソウル地裁がNJZとしての活動を禁止する判断

争点:プロデューサー交代と信頼関係の破綻

訴訟の大きな争点は、元ADOR代表ミン・ヒジン氏の解任が契約解除理由となり得るかでした。NewJeans側はミン氏の解任が「芸能活動の根幹を揺るがす事件」であり、これによってマネジメントに重大な空白が生じたと主張しました。

しかし、裁判所は「ミン・ヒジン氏が代表を解任されただけで管理・プロデュース体制に致命的な支障が生じたとは言えない」と判断。また、契約書にも『ミン・ヒジンがプロデュースを担当しなければならない』との記載はなかったことを重視しました。

  • 裁判部はミン氏の解任理由を「契約解除理由として認められない」と断言
  • ミン氏に対するHYBE側の監査・解任も「正当」と判断
  • 裁判では、ミン氏が水面下でNewJeansを独立させる意思があった証拠(カカオトーク内容など)が採用された

地裁判決:ADOR側の「完全勝利」

2025年10月30日、ソウル中央地裁民事合議41部は「ADORとNewJeansの間で2022年に締結された専属契約は有効」と認定。訴訟費用はNewJeans側が負担するよう命じられ、ADOR側の主張がすべて認められる全面勝訴となりました。

  • NewJeansの主張は一つも認められず、ADORが完全勝利
  • 判決当日、NewJeans側メンバーは欠席
  • 判決直後、NewJeans側は「現状でADORに復帰し正常な活動は不可能」と即時控訴の意思を表明

NewJeans側の反応と控訴の理由

NewJeans側の弁護士は「裁判所の判断を尊重するが、ADORとメンバー間の信頼は完全に破綻している」と声明を出し、即日控訴の方針を発表しました。NewJeansメンバーにとっては、裁判所での敗訴にもかかわらず、納得できない思いが強く、今後も法廷闘争が継続します。

控訴の理由は主に次の3点と考えられます。

  • 判決においてミン・ヒジン氏の役割の重要性が軽視されたと捉えている
  • 裁判所が導き出した「信頼関係破綻」判断に納得していない
  • 現状ではADORとの協働が事実上困難であり、芸能活動の自由確保を目指す

HYBEとADOR、K-POP産業へのインパクト

この判決の影響は法廷の外にも大きく広がっています。判決確定により、HYBEの時価総額は6億4400万ドル(約970億円)増加し、投資家や市場関係者から好感を持って受け止められました。

  • 企業価値上昇によりHYBEは韓国エンタメ業界最大手としてのポジションをより確固たるものに
  • 一方で、アイドル・アーティストと芸能事務所のパワーバランスや契約自由の問題が改めて浮き彫りに

ADORも公式声明を発表し、「本裁判がNewJeansメンバーにとっても自身の歩みを振り返るきっかけになることを願う」とコメントを寄せています。

NewJeansのこれから—活動再開と新グループ名「NJZ」問題

訴訟のさなか、NewJeansは一時活動を休止し、新グループ名「NJZ」での独自活動を試みましたが、地裁はこれも禁止する決定を出しています。今後、判決が最終確定するまでは、NewJeansの音楽活動やグローバル展開が大きく制限される可能性が高い状況です。

一方で、元プロデューサーのミン・ヒジン氏は、2025年10月、新たな芸能事務所「ooak」を設立したことが明らかとなり、今後の展開やNewJeansの所属先移籍の可能性、日本を含む世界市場におけるK-POPビジネスモデルへの波及効果にも注目が集まっています。

まとめ:K-POP契約を巡る新たな課題

今回の判決は、K-POP業界を支える大型事務所とアーティストのパワーバランス、契約自由や独立の権利など、根本的なテーマを浮き彫りにしました。
今後、NewJeansとADOR、そしてHYBEの関係がどのように変化し、韓国音楽シーンや世界のファンへどのような影響をもたらすのか。韓国エンターテインメント業界では、同様の契約問題やタレントマネジメントの在り方が再び議論されることは間違いありません。
更なる続報にも大きな関心が寄せられています。

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