日立建機、運転質量558tの超大型油圧ショベル「EX5600-7P」を発表 生産量12%向上と高耐久化の秘密
日立建機株式会社は、2025年10月20日、グローバル市場に向けて運転質量558トンを誇る超大型油圧ショベル新モデル「EX5600-7P」のバックホウ仕様機を発表しました。同社が築いてきた鉱山機械分野での信頼性と技術力の集大成となるこのモデルは、特に資源大国オーストラリア市場における競争優位性の強化を目指しております。今回の新型投入の特徴は、現行モデルから生産量を12%向上させただけでなく、耐久性やメンテナンス性の格段の進歩です。
新モデル「EX5600-7P」誕生の背景
日立建機は、1979年に超大型油圧ショベル「UH50」(運転質量159t)を市場へ初投入してから、世界各地の鉱山現場で多くの機体が稼働しています。その実績は、同社製品の高い作業能力、信頼性、そして耐久性によるもので、特にオーストラリアでの納入実績が突出しています。世界的に資源採掘需要が拡大する中、鉱山現場での効率化とコスト削減が喫緊の課題となっています。
このような背景から、より生産性と耐久性に優れた製品の開発が求められてきました。新型EX5600-7Pは、現行モデル「EX5600-7」と比べて様々な領域で性能を向上させて登場した、まさに次世代の超大型油圧ショベルです。
EX5600-7Pの進化した主な特徴
- バケット容量の大幅アップ:従来の34m³から37.5m³へと拡大し、一回あたりの掘削量を向上。
- パワフルなエンジン:カミンズ製QSKTA50-CEエンジン(定格出力1,193kW/1,800min-1)を搭載し、油圧ポンプも高出力化。車体動作速度が向上しました。
- 生産量12%増:エンジンや油圧ポンプ、バケットの改良によって、生産量が現行モデル比で12%向上しています。
- 耐久性強化:ブームやアーム、上部フレームに対して、鋳鋼品の適用範囲拡大や溶接方法の見直しなどで大幅な耐久性強化。壊れにくく、長寿命になりました。
- メンテナンス性の向上:ブーム内部の点検を容易にする「開閉式アクセスホール」(特許出願中)を採用。作業効率と安全性も向上しています。
主な仕様一覧
| 項目 | EX5600-7P |
|---|---|
| エンジン | カミンズ QSKTA50-CE |
| 定格出力 | 1,193 kW/1,800 min-1 |
| 運転質量 | 558,000 kg |
| バケット容量(新JIS) | 37.5 m³ |
| 最大掘削力(バケット) | 1,480 kN |
| 最大掘削力(アーム) | 1,300 kN |
今回発表されたEX5600-7Pは、そのサイズやパワーだけでなく、施工現場のさまざまな課題解決につながるイノベーションも盛り込まれています。
生産性向上の仕組み
EX5600-7Pが実現した生産量12%の向上は、単なる出力増強ではなく、多方向からのアプローチです。
- バケット容量拡大による一度の作業あたりの処理量増加
- エンジン・油圧系の高出力化による動作スピード向上
- 耐久性の強化による故障リスクの低減やダウンタイム短縮
これらが重なり合い、鉱山現場などの大規模なニーズに応える安定生産を支えます。
耐久性改善と整備コスト削減への配慮
鉱山機械の稼働現場では、「壊れにくさ」と「整備のしやすさ」が生産性・コスト管理に直結します。EX5600-7Pでは
- ブームの強度向上:鋳鋼品の適用範囲を従来以上に拡大
- アーム・車体上部フレームの構造および溶接技術の改良
- オーバーホール頻度低減=長期間止まらずに稼働できる
- ブーム内アクセスホール新設による点検・整備の簡便化
作業現場でダウンタイムを最小化し、安心して長く利用できる設計となっています。
環境への配慮とデジタルイノベーション
日立建機は近年、ハードウェアとデジタルソリューションの融合による「環境負荷低減」や「ライフサイクルコスト低減」にも積極的に取り組んでいます。EX5600-7Pでも最新の制御技術や効率化技術を採用し、
- 必要なパワーを効率よく伝える新油圧システム
- オーバーホール期間延長による部材廃棄量の削減
- IoT・遠隔監視技術の融合(参考事例:リオ・ティント社との遠隔操作共同開発)
といった側面でも次世代ショベルにふさわしい取り組みが進められています。
グローバル展開と日立建機のビジョン
日立建機は、現在世界約26,000名の従業員を擁し、油圧ショベル・ホイールローダ・道路機械・鉱山機械などの大規模機械の開発・製造・販売をグローバルに展開しています。
また、ノウハウを基盤にした中古再生やレンタル・部品事業など、製品のバリューチェーンを拡大。高信頼性のハードウェアを基盤としつつ、革新的なソリューションの提案を続けています。
- 2024年度(2025年3月期)連結売上収益は1兆3,713億円
- 海外売上収益比率は84%
新モデルEX5600-7Pの投入は、グローバルな鉱山機械市場でのリーダーシップ強化という日立建機の戦略の一環です。今後も「安全性・生産性向上」「環境負荷低減」「コスト低減」に向けて、製品開発とサービスを進化させていく方針です。
未来を見据えるお客様のパートナーに
新型EX5600-7Pを通じて日立建機が目指すのは、「より安全で効率的な現場」と「お客様の満足度の最大化」です。搬送車両の待機時間短縮や据付現場の生産性向上、整備のしやすさ、そして環境への配慮に至るまで、一台一台に想いと技術が詰まっています。鉱山やインフラ構築の最前線で、ますます人と社会を支え続ける――それが日立建機と新型EX5600-7Pの約束です。



