福井県立恐竜博物館で初公開!「アジアティラヌス」と白亜紀後期の謎に迫る-最新特別展レポート

話題の特別展「獣脚類2025」概要

福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)は、2025年に開館25周年を迎え、その記念特別展「獣脚類2025~『フクイ』から探る恐竜の進化~」を開催しています。本展は、獣脚類とよばれる肉食恐竜の進化や多様性をテーマに、国内外から注目を集めています。

特に2024年に新種新属として認定され、中国で発見されたティラノサウルス亜科「アジアティラヌス」の実物化石が、日本ではじめて公開されたことで大きな話題になっています。展示期間は2025年7月11日から11月3日までとされ、すでに入場者数が県立恐竜博物館史上最高を更新し、のべ33.4万人を突破しています。

  • 開催期間:2025年7月11日~11月3日
  • 会場:福井県勝山市 福井県立恐竜博物館
  • 入場料:一般1800円、高・大学生1600円、小・中学生・70歳以上1000円(事前購入制)
  • アクセス:JR福井駅~勝山駅から車約10分、コミュニティバス約15分

日本初公開「アジアティラヌス」とは

アジアティラヌスは、昨年中国で発見され新種・新属として報告されたティラノサウルス亜科の大型獣脚類です。その実物の頭骨や足骨の化石が今回、初めて中国以外の会場で公開されました。

この恐竜は白亜紀後期(約8千万年前)に生息していたと考えられ、従来のティラノサウルス科と比べて独自の進化の道筋を示しています。中国の研究者の解説によれば、アジアティラヌスの発見は、当時の生態系や獣脚類の多様性を理解する手がかりとなる重要な発見です。

  • 学名:アジアティラヌス・シュウイ
  • 発見地:中国(昨年新種新属認定)
  • 発見の意義:アジアにおける大型獣脚類の進化や分布、白亜紀後期の陸上生態系解明に寄与

特別展では、全身骨格を含む計27点の化石標本が公開されており、来館者はアジアティラヌスを中心とした肉食恐竜の進化史を間近に体感できます。

中国研究者が語る発見の価値と最新研究

2025年10月25日に開催された特別展講演会では、中国の発掘担当研究者による解説が行われました。

講演では、アジアティラヌス・シュウイがどのように発見されたのか、骨格の特徴、白亜紀後期の中国と日本(福井・長崎)の恐竜生態系との関係について語られました。アジアティラヌスの頭骨は大型で、足骨なども力強い構造を持ち、既存のティラノサウルス科の枠組みに新たな知見をもたらしています。

また、白亜紀後期のアジア大陸と日本列島ではさまざまな獣脚類が共存していたことがわかってきており、近年は日本でも長崎半島から異なる特徴を持つ鎧竜(草食恐竜)の歯化石が複数発掘されて生態系の多様化が明らかになっています。

白亜紀後期の生態系解明と特別展の最新展示

今回の特別展では、アジアティラヌスをはじめとする獣脚類の進化史に焦点を当て、中国―日本の恐竜王国「フクイ」の名を冠する3種類の獣脚類と、新たな発見が期待されるスピノサウルス科、計4系統にわたる展示・解説が行われています。

  • アジアティラヌスの実物化石展示(日本初公開)
  • スピノサウルス部分化石と全身復元骨格(最新研究に基づく復元)
  • 福井で発見された歯化石を含む「フクイ」の三大獣脚類
  • 化石調査、分析方法や研究の最前線を解説する展示

展示は文字やパネルだけでなく、骨格レプリカや映像、体験型のワークショップも実施されており、子どもから大人まで恐竜研究の奥深さを学べる工夫が凝らされています。

入館者数史上最多を更新!賑わう特別展

「獣脚類2025」は、夏休みを中心に盛況となり入場者数が33.4万人を超え、開館以来最多を記録しました。

その背景には、子ども向けの工作教室や自然教室、講演会、特別展ツアーなど多彩なイベントが連日開催されていることもあります。

  • 親子で恐竜模型をつくる工作教室
  • 肉食獣の歯や足跡を調べる自然教室
  • ツアーによる展示解説
  • 系統進化セミナーや国際シンポジウム関連講演会

これらのイベントは事前申込制または入場料で参加可能であり、研究者と参加者が直接交流できる場として、恐竜への知的好奇心を刺激し続けています。

地域連携と今後への期待

福井県立恐竜博物館は、県内外の大学・研究機関、自治体などと連携して恐竜の発掘・分類・研究を推進してきました。長崎市恐竜博物館と共同で行っている白亜紀後期の地層調査でも、鎧竜の歯化石など新発見が続々と報告されています。

今後も「フクイ」ブランドの獣脚類やスピノサウルス科など、新種の発見や系統進化の解明が期待されており、福井は日本における恐竜研究のフロントラインと言えるでしょう。

まとめ:アジアティラヌスがもたらす新たな恐竜像

アジアティラヌスの初公開は、福井だけでなく、日本の恐竜研究に大きなインパクトを与えています。

・特別展「獣脚類2025」は、獣脚類の進化や白亜紀後期の生態系を体感できる国内屈指の科学イベントになっています。

・豊富な体験型イベントや研究者による講演、親子向け教室を通じて、幅広い世代が最新の恐竜学にふれられます。

・今後も福井県立恐竜博物館は、国際的な発掘・研究拠点として発展し、日本の恐竜文化の基盤を築いていくでしょう。

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