東京国際映画祭で注目集まるアニメ映画『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』――日中4監督の合作が描く“希望と記憶”の物語

はじめに

2025年10月27日から開催された第38回東京国際映画祭にて、日中4人の監督が手掛けた壮大なアニメ映画、『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』が上映され、大きな話題となっています。本作は渡辺信一郎監督、森田修平監督(以上日本)、李煒(リー・ウェイ)監督、翁銘(ウォン・ミン)監督(以上中国)という、国境を越えた才能たちによる長編アニメーション作品です。

この記事では、『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』の作品概要、スタッフやキャスト、東京国際映画祭での上映イベント、舞台裏のエピソード、そして本作が提示する新たな国際共同制作の可能性について、わかりやすく丁寧にご紹介します。

作品概要 〜時を超える旅人の物語〜

『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』は、「記憶」「生命」「希望」というテーマを軸に、国も文化も異なる4人の監督が、それぞれ異なる表現で描いた壮大なオムニバス形式のアニメーションです。物語をつなぐのは“太素(たいそ)”という、時空や宇宙を超えて旅をする架空のエネルギー体。太素は時代ごと、場所ごとに異なる人々の物語に寄り添い、戦争、愛、死、生といった普遍的なテーマに向き合いながら、私たちひとりひとりの存在の意味を問いかけます。

  • 監督・演出陣: 渡辺信一郎・森田修平(日本)、李煒・翁銘(中国)
  • エグゼクティブプロデューサー: 孫冰冰(スン・ビンビン)、王亦杰(ワン・イージエ)ほか
  • 主なキャスト: 久野美咲、早見あかり、内田雄馬、瀧本美織、フー・ゴーほか

これまでの国際共同制作アニメでは、スタイルや制作管理に大きな違いがあるため一体感のある作品づくりが難しいとされてきましたが、本作では各監督が“太素”を共通のモチーフとすることで、異なるエピソードと世界観をまとめ上げることに成功。まさに「時をつなぎ、人をつなぐ」新しい国際アニメーションの形となっています。

上映日程・トークショー・イベントの詳細

東京国際映画祭では、以下の日程で本作の上映が行われました。

  • 10月28日(火):初回上映
  • 10月31日(金):スペシャル上映&監督トークショー(渡辺信一郎監督、森田修平監督が登壇/TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2)
    開始:14:50〜
  • 11月3日(月・祝):追加上映

特に10月31日の回では、渡辺監督と森田監督が舞台に登壇し、作品制作の舞台裏や日中共同制作の苦労、未来のアニメーションづくりに向けた熱い思いを語りました。トークショーやQ&Aは、来場者と直接交流する貴重な機会となり、和やかな雰囲気の中にも、国境や世代を超えて伝えたいメッセージを感じさせる充実した内容となりました。

スタッフ・キャスト紹介

監督

  • 渡辺信一郎:代表作に『COWBOY BEBOP』『SAMURAI CHAMPLOO』など。日本を代表するアニメーション監督の一人。
  • 森田修平:監督作に『COCOLORS』『東京喰種』など、独特の映像表現で注目を集める気鋭。
  • 李煒(リー・ウェイ)翁銘(ウォン・ミン):中国の新進気鋭監督。中国の伝統と現代感覚を融合させた作風が持ち味。

プロデューサー陣

  • 孫冰冰(スン・ビンビン)
  • 王亦杰(ワン・イージエ)
  • ほか多数

声優・キャスト

  • 久野美咲
  • 早見あかり
  • 内田雄馬
  • 瀧本美織
  • フー・ゴー(中国の人気俳優)

国際共同制作誕生の背景と完成までの道のり

本作の企画は2017年にスタートしました。しかし、資金面の課題や、制作体制の違い、そしてパンデミックによる影響など、数々の困難が待ち受けていました。それでも「深みがあり温度感のある作品を作りたい」というプロデューサー陣の強い思いと、日中両国の業界関係者の協力、そして4人の監督の妥協なき挑戦が、8年という歳月の末にようやく結実しました。

作品制作の現場では、日本と中国、それぞれの制作文化や方法論の違いに戸惑いながらも、話し合い、互いをリスペクトし合い、創作に取り組む様子が伝えられています。国境や言語、価値観の違いを超えて一つのアニメ作品を生み出すこと自体が、まさに「時をつなぐ旅」の象徴となっています。

“太素”が結ぶ4つの時空――各監督のエピソードと映画の見どころ

『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』では、“太素”がつなぐ時空の物語が4つのオムニバスエピソードとして展開されます。それぞれの監督が、異なる時代や社会背景、文化的モチーフをもとに「記憶」や「希望」「生と死」を描き出します。

  • 渡辺信一郎監督のエピソードは、壮大な戦いの果てを描きながら、過去と未来の狭間で生きる人々の思いに迫ります。
  • 森田修平監督のパートでは、幻想と現実が交錯する中で、人間の弱さと強さ、そして命を繋ぐ選択の物語が紡がれます。
  • 李煒、翁銘両監督の章では、中国の歴史や伝承を現代的視点と融合させることで、時空の超越と希望の連鎖というテーマに新しい解釈を与えています。

4章は“太素”という一貫したテーマでゆるやかに結ばれており、それぞれのエピソードが独立しつつも、全体を通して共通のメッセージが強く響きます。それは「今を生きる私たちが、過去や未来、異なる他者との繋がりのなかで、希望を見出し続けることの大切さ」です。

国際映画祭での反響と、今後の期待

本作は2025年6月、上海国際映画祭では長編アニメーション部門の公式コンペティション作品に選出され、4人の監督が揃って登壇するワールドプレミアを開催。現地メディアや中国中央テレビ(CCTV)でも、日中合作による新たな国際アニメ作りへの期待として大きく報じられました。

東京国際映画祭での上映も大盛況。観客からは「時空を越えて人間の心や希望がつながる壮大なテーマに胸を打たれた」「日中の才能がぶつかり合うことで、これまで見たことがない映像世界が広がった」など、絶賛と驚きの声があがっています。今後は国内外での劇場公開や配信も予定されており、国際共同制作アニメの新たな時代を切り拓くきっかけとなりそうです。

スタッフ・キャスト詳細

  • 監督:渡辺信一郎、森田修平、李煒(リー・ウェイ)、翁銘(ウォン・ミン)
  • 製作総指揮:ワン・ジュン、ワン・イージエ、スン・ジョンホァイ
  • チーフ・プロデューサー:シュー・チュンピン、スン・ビンビン、マー・イェンクン
  • キャスト:久野美咲、早見あかり、フー・ゴー、内田雄馬、瀧本美織

(各章の担当や詳細は、公式サイトやパンフレットをご確認ください。)

上映劇場・チケット情報

  • 上映劇場:TOHOシネマズ シャンテ、丸の内ピカデリー2、シネスイッチ銀座 ほか
  • チケット:一般 1800円/学生 1400円/学生当日割引 700円(10月31日回・TOHOシネマズ シャンテの場合)
  • チケット発売日:2025年10月18日より一般販売開始

車椅子スペースやバリアフリー対応も強化されており、多様な鑑賞者が安心して参加できる配慮がなされています。

『Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』が問いかけるもの

本作は、困難な時代や未来の不確かさの中でも「時はつながっている」「希望は必ず受け継がれていく」というポジティブなメッセージを強く打ち出しています。アニメファンはもちろん、国際的な共同制作による新しい物語の可能性に関心がある方や、文化や国籍を超えて人が心を通わせる意義に興味を持つ全ての人にとって、本作は必見の内容となっています。

最後に

Edge of Time 〜時をつなぐ旅人たち』は、8年という長い歳月をかけ、日中4人の監督を中心に完成させた奇跡のような映画です。アニメーションが持つ無限の表現力、人と人が繋がることの素晴らしさ、そして未来への希望を、観る者すべてに届けてくれることでしょう。東京国際映画祭を機に、今後ますます多くの人々の心に、その感動が広がることが期待されます。

参考元