2025年、ラブブ現象の光と影――人気絶頂からブーム失速へ。その魅力と日本社会に及ぼしたインパクト
ラブブの誕生と“かわいさ”の変革
ラブブ(LABUBU)は、中国の玩具メーカーPOP MARTが手がける人気キャラクターです。2019年、中国のアーティストであるカシン・ルン氏が、森に住む妖精「THE MONSTERS(ザ・モンスターズ)」の一員として誕生させました。長い耳、ギザギザした歯、独特の“ブサかわいい”表情が大きな特徴で、「ただ可愛いだけではない」毒気を含んだ愛くるしさは、若者を中心に熱狂的なファンを生み出してきました。また、ユニセックスなデザインや、どこか哀愁漂う目元が「自分と重ねやすい」と感じる人も多く、Z世代の感性と強く結びついた現象となったのです。
“開封ガチャ”文化とSNS映えの魔法
ラブブ人気を語るうえで外せないのが「ブラインドボックス」(開けるまで何が入っているかわからない“ガチャ”方式)の仕組みです。「今しか買えない」「どの色・シリーズがでるか分からない」――このランダムなワクワク感が、中毒性のある購買体験を生み出しました。また、手に入れたラブブを写真に撮ってSNSに投稿する“SNS映え”も人気爆発の大きな要因でした。特にZ世代を中心に、「それ、どこで手に入れたの?」「新作はもう売り切れ?」など、情報の即時性とレア感がコミュニケーションの中心となりました。
韓国・日本・中国――東アジアを席巻したラブブ熱
中国本土だけでなく、韓国・日本・台湾といった東アジアのトレンド敏感な若年層の間でも、ラブブは一躍社会現象となりました。特に日本では、2024年以降、ユニクロとのコラボや、韓国・明洞のPOP MART直営店などが話題となり、ファッションアイテムとしての側面も拡大。BLACKPINKのリサさんをはじめ、大物芸能人・インフルエンサーもプライベートで愛用する姿がSNSで拡散され、一気に幅広い層へと浸透しました。
推し活×コレクション――“ラブブ投資”の熱狂と怖さ
日本では、「推し活」の流れと結びつき、「推し色ラブブ」を持ち歩くことが日常となりました。たとえば「赤(Love)」「紫(Luck)」「水色(Hope)」など、それぞれ色やモデルにメッセージや意味をもたせ、自分の“推し”や気分を投影できることも人気の理由です。また、人気色や限定モデルはすぐに完売し、フリマアプリ・オークションでは定価の数倍~数十倍もの“プレミア価格”で取引されることが当たり前になりました。こうした熱狂を背景に、単なる玩具という域を超え、“コレクション” “投資対象”としての性格が強まったのです。
- 特に人気色「黒レインボー(シークレット)」は出現率1.3%と激レアで、数十万円規模で取引される例もあります。
- 「推し色」の「赤(Love)」は発売直後の即完売が常で、二次流通でも依然高値安定。
この現象は、日本における“推し活投資”にも通じます。しかし、高額転売や「ブームに乗り遅れた」という焦燥、金融的なリスクなど、コレクションが持つ“怖さ”も同時に指摘され始めました。
転換期を迎えたラブブ――なぜブームは失速したのか
2025年秋、ラブブブームは明らかに転換点に差しかかっています。最大の理由は「バブル化と価値の揺らぎ」です。次々と登場する新シリーズ・コラボにより希少性の低下が進行し、“レア”だったはずの商品でも一部では値崩れ現象がみられるようになりました。また、かつての「タピオカブーム」のように、「映える消費」自体が一過性の流行として消費され、POP MARTの株価暴落もニュースとなっています。
さらに、ラブブ自体の個性が“ブランド消費”の中で薄れ、「好きな人がやっているから」「とりあえずラブブ買っとく」という消費が主流になったことで、熱烈なコレクターや本来のキャラクター愛好層が離れるなど、“本当のファン”の脱落も見られます。
なぜ日本でここまで熱狂したのか?
なぜ日本でこれほどまで「ラブブ」に熱狂し、大ブームとなったのでしょうか。その背景には以下の要素が密接に絡み合っています。
- 中国発トレンドへの新鮮さと高揚感
- 推し活文化との親和性(色やキャラで“自分らしさ”を表現)
- “ガチャ文化”という日本人特有のワクワク心理
- 芸能人・インフルエンサーの波及力(SNS拡散力)
- 品薄・即完売による“持たざる不安”とコレクター欲
加えて、ラブブは「単なる可愛さ」よりも“クセになる毒っ気”“どこか無防備な愛らしさ”など、多様化した現代の価値観と共鳴したことで、旧来の“マスコット人気”とは異なる地平を切り開きました。
ラブブ現象が社会に残したもの
ブーム終焉が近づいているとはいえ、ラブブ現象は日本社会にいくつかの大きな変化をもたらしました。
- 「推し活」がキャラグッズ・ぬいぐるみ分野へ本格的に拡大し、色で“想い”を託す新文化が定着
- SNS映え・限定性優先の消費行動が広がる
- 転売や投機的コレクションによる新たな金銭的リスクが顕在化
- 「可愛さ」だけでなく“毒気・ひねり”のあるキャラクターや世界観に注目が集まったこと
特に「推し活×色選び」は、文房具・アパレル・雑貨といった他カテゴリへも影響し、カラーバリエーション重視の商品展開が加速しました。また、消費の即時性・体験重視のトレンドは、今後のキャラクタービジネスの大きなヒントとなったといえるでしょう。
これからのラブブはどうなる?
ラブブシリーズは毎年新しいテーマを投入し続ける予定です。「スイーツ系」「季節限定カラー」など、デザイン性や話題性を兼ね備えた新作がSNSを中心に拡散されることで、一定のコレクター需要やファンは今後も存在し続けるとみられています。しかし、一方で「流行」のピークはすでに過ぎ、「本当の価値」や「ラブブらしさ」を再評価する動きも見えてきています。
韓国・明洞での動向――現地最新トレンドレポート
2025年現在、韓国・明洞でもラブブ人気は健在。しかし、最新シリーズに絞った“今だけ”の購買スタイルや、即売終了時のイベント待ちなど、熱狂的現象はやや落ち着きをみせています。日本と同様、ラブブはファッションへの応用(ペンダント、バッグチャームなど)や、DIYカスタマイズといった新しい楽しみ方へと広がりつつあります。
人気色ランキング&モデルまとめ
改めて、2025年における人気色ランキングをまとめておきます。
- 1位:黒レインボー(シークレット)…出現率1.3%、最強レア。相場は数十万円。
- 2位:赤(Love)…推し活需要トップ。
- 3位:紫(Luck)…神秘と幸運の象徴。動画映えも。
- 4位:水色(Hope)…爽やかな希望カラー。
- 5位:黒(Black)…男性ファンから特に支持。
そのほか「Big into Energy」「Exciting Macaron」「Have a Seat」などの各シリーズも注目度が高く、ラブブコレクターの間で定番モデルとされています。
まとめにかえて――ラブブが問いかけた「新しい可愛さ」と消費のかたち
2025年、ラブブブームの一時代が幕を閉じつつあります。単なる流行で終わるのか、それとも新しい“推し活消費”や“自己表現”の象徴として生き続けるのか。ラブブは今、“価値のジレンマ”とともにその未来を見つめています。変化し続けるトレンドの渦中で、私たちが手にしたひとつのラブブが、小さな“好き”や“願い”を託した証であることは、決して色褪せることがありません。




