連合と高市政権の距離感、そして夫婦別姓議論の急展開 ~今、選択的夫婦別姓はどこへ向かうのか

はじめに

2025年10月、日本の政界では「連合」と「高市政権」という二つの大きな動きが注目されています。とくに、選択的夫婦別姓をめぐる議論や、事実婚当事者の声が連立政権の枠組みの中で大きく揺れ動いていることが、今、多くの市民の関心を集めています。本記事では、最新のニュースに沿って、現在の政治状況と夫婦別姓をめぐる各立場、その影響についてわかりやすく解説します。

連合会長の発言:高市氏との「距離感」

2025年10月25日、労働組合の全国組織である「連合」の会長が、高市氏(高市早苗氏)との政策的な「距離感」を改めて強調しました。これは高市氏が新たな政権を率いることとなった直後のことで、連合としては労働者の権利や家族に関する制度に関し、高市政権の志向性に懸念を抱いていることが関係者の間で広まっています。とくに、過去に高市氏が保守的な家族観を強調してきたことから、労働環境のみならず、性や家族制度についての改革にも慎重な姿勢が見受けられます。

夫婦別姓議論に急展開、自維連立の成立が波紋

そして今、夫婦別姓をめぐる議論は大きな転換点を迎えています。これまで推進派として力を持っていた公明党が政権の連立枠組みから離脱したことによって、選択的夫婦別姓の法制化は大きく遠のく可能性が指摘されています。一方で、自民党・維新の会による連立(自維連立)が成立し、「通称使用法制化」という方針に注目が集まっています。

  • 公明党離脱の影響: 公明党は従来から選択的夫婦別姓の推進に積極的で、少子化対策や多様性を尊重する社会づくりに貢献してきました。しかし、今回の新政権の組成において公明党が連立から外れることとなり、別姓の法制化は政権内で優先度が下がったとされています。
  • 自維連立の方向性: 高市政権下の自民党と日本維新の会が連立協議を進め、夫婦別姓については「通称の法制化」という形に議論が収束しつつあります。本名と通称の併用や事実上の柔軟性を認める案が検討されていますが、選択的夫婦別姓そのものの法制化には慎重な姿勢が強まっています。

事実婚当事者の「絶望」

夫婦別姓に関する議論が後退する中、実際に事実婚を選択している市民や当事者からは「絶望」という強い声が上がっています。事実婚や夫婦別姓を求める人々は、その理由として個人のアイデンティティ・キャリアへの配慮や、子どもへの影響の軽減、ジェンダー平等の実現を挙げています。彼らは次のような問題に直面しています:

  • 行政手続きの煩雑さ: 現在、多くの公的手続きや教育・医療現場では姓が一致しないことによる不便が残っています。
  • 法的保障の不足: 事実婚のカップルの場合、相続や子どもの保護について十分な権利保障がなされないなどの不利益が生じています。
  • 社会的理解の遅れ: 多様な家族のあり方が広がっているものの、保守的な価値観が根強いため、事実婚や夫婦別姓を選択する人に対する配慮が十分とはいえません。

事実婚を選んでいる当事者のインタビューによれば、「今の自維連立政権では、夫婦別姓の実現はますます難しくなった。公明党が離脱したことで、声を上げても届かないのではという絶望的な感覚が強い」との声が寄せられています。また、「通称の法制化」についても、現場レベルで使い勝手が悪く根本的解決にはならないとの厳しい意見が相次いでいます。

選択的夫婦別姓問題の本質と現状の課題

選択的夫婦別姓は、夫婦がそれぞれ自分の姓を名乗ることを選べる制度です。この問題は、単なる呼称の違いだけでなく、根本的には「個人の尊厳と家族のかたち」を問い直す内容となっています。

  • 現行制度の課題: 日本では民法の規定に基づき、婚姻時にいずれかの姓を選ぶことが義務づけられています。多くの場合、女性が姓を変えるケースが多く、社会的・職業的なアイデンティティ喪失やキャリアへの影響が指摘されています。
  • 政治的論点: 保守派は「家族の一体感」や「伝統の継承」を重視する一方、リベラル派は「個人の選択権」や「ジェンダー平等」の側面から夫婦別姓の必要性を訴えています。
  • 国際比較: 世界の多くの国では夫婦別姓や事実婚が法的に認められているケースも多く、日本の制度の独自性が批判されています。

高市政権誕生による「自維連立」の枠組みでは、選択的夫婦別姓の議論が「通称の法制化」へとシフトする兆しが見えています。しかし、この通称案はあくまでも一時的な解決策に過ぎず、本格的な法改正や実質的な権利保障とは距離があるとの指摘も少なくありません。

専門家の見解と今後の展望

家族社会学や法学の専門家の間でも、今回の政治的転換は厳しく受け止められています。とくに、現政権が家族政策に慎重な姿勢を強めている点に関して、いくつかのコメントが寄せられています。

  • 法学者: 「通称使用の法制化は、一歩前進ではあるが根本的な解決とはいえません。戸籍や法的権利の面で本名と通称の不一致が問題を生みます。」
  • 社会学者: 「多様な生き方を認める社会へ向けて、制度面の整備は不可欠です。議論が進まないことで現実に苦しむ人が増えることが懸念されます。」

今後の展望としては、自維連立政権下では夫婦別姓の法律化が厳しい状況ですが、市民やNPOの活動による働きかけや、法的改善を求める訴訟などが続いていくことが考えられます。新たな政権のもとで社会の多様性がどのように守られるか、今後も注視が必要です。

まとめ

2025年10月の政界の動きは、連合と高市政権との政策的距離の広がり、選択的夫婦別姓の議論の急変、そして事実婚当事者の声を通して、家族制度の未来が大きく揺れ動く様子を浮き彫りにしました。「自維連立」による通称の法制化が現実的な妥協案として浮上するなか、多様な家族形態や個人の権利を守る本格的な制度改革が強く求められています。社会的な議論がさらに深まることで、すべての人が安心して自分らしく生きられる社会の実現へと歩みを進められるよう、引き続き注目していかなければなりません。

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