九州電力、川内原子力発電所に使用済み核燃料乾式貯蔵施設新設へ
川内原発の新たな保管施設計画、国へ申請へ
九州電力は、鹿児島県薩摩川内市にある川内原子力発電所の敷地内において、使用済み核燃料を一時的に保管する乾式貯蔵施設を新たに設置する方針を2025年10月22日に決定しました。関係者によれば、この施設の設置に必要な原子炉設置変更許可を2025年10月24日にも国の原子力規制委員会へ申請し、同時に鹿児島県と薩摩川内市に対し安全協定に基づく事前協議書も提出される見通しです。
乾式貯蔵施設とは――その仕組みと必要性
乾式貯蔵施設は、一定期間プールで冷却した後の使用済み核燃料を、キャスクと呼ばれる金属製の専用容器に収め、空気の自然対流によって冷却するタイプの保管施設です。水や電気を使わず冷却できることから、維持管理が比較的容易で、緊急時にも安全性が高い点が特徴です。
川内原発内で現在使用されている燃料プールは、1号機が7割、2号機が8割の貯蔵率に達しており、2025年9月末の時点で2031年にはプールが満杯となる見通しです。このため、使用済み燃料を一時的にでも安全に保管できる新たな施設の設置が急務となっています。
背景――再処理工場の稼働延期と日本の現状
- 日本では使用済み核燃料の最終的な処分や再処理が課題となっています。川内原発で発生した使用済み燃料は、主に青森県六ヶ所村の再処理工場に送られる計画ですが、施設の完成が何度も延期されているため、原発構内での長期一時保管が全国的な課題となっています。
- 九州電力では、佐賀県玄海原子力発電所でも同様の乾式貯蔵施設の設置計画が進んでおり、2025年5月着工、2027年度運用開始予定です。また、全国では東海第2原発(茨城県)、伊方原発(愛媛県)などでも既に導入済みです。
新たな計画――規模とスケジュール
今回九州電力が川内原子力発電所に設置を目指している乾式貯蔵施設は、使用済み燃料約560体(キャスク20基分)を収納できる規模とされています。現時点での運用開始の目標は2029年度。施設設置の手続きには原子力規制委員会の許可が必要であり、鹿児島県および薩摩川内市と結んでいる安全協定に基づき、地元自治体の了承も大きなポイントです。
これまでの経緯と地域社会の関わり
この乾式貯蔵施設計画は、2014年に原子力規制委員会から「安全確保や危機管理の観点から、対策を進めるべき」との助言があったことがきっかけです。その後、2022年9月には技術的検討が開始され、2025年7月には九州電力の西山社長が鹿児島県と薩摩川内市を訪問し、技術検討が最終段階であることを説明していました。
また、地域住民や自治体の理解と合意が不可欠であり、安全対策や情報公開、説明会の開催など、今後の地域とのコミュニケーションが注目されています。
乾式貯蔵方式の安全性と意義
- キャスクによる遮蔽:放射線は金属製キャスクで強固に遮断され、容器単体でも高い安全性を維持できます。
- 自然対流冷却:空気の流れのみで冷却が完了し、外部電源や水が不要なため、災害時や停電時のリスクが低減されます。
- メンテナンスの容易さ:構造がシンプルなため、維持管理の手間やコストも比較的抑えやすいとされています。
この方式は、米国や欧州の多くの原子力発電所でも導入されており、日本国内でも稼働実績が増えています。全国的な使用済み燃料の保管課題に対する現実的な解決策と位置付けられています。
今後の流れと社会的な注目点
- 国の審査・許可:原子力規制委員会による厳正な審査が行われる予定です。
- 自治体の判断:鹿児島県および薩摩川内市が協定に基づき了承するかどうか、地域合意の動向も大きな焦点です。
- 運用開始予定は2029年度:順調に審査と同意が進めば、2029年度中の本格運用を目指します。
- 地域安全と信頼の構築:使用済み燃料の安全な管理と併せ、地域住民の安心感や信頼の醸成も重要なテーマになるでしょう。
まとめ:本件の意義と九州電力の今後
今回の川内原子力発電所における乾式貯蔵施設新設の計画は、使用済み核燃料プールの逼迫と、再処理工場の遅延という日本社会全体のエネルギーと原子力政策における大きな課題に向き合うものであり、原子力発電の続行と安全管理の両立へ向けた現場の「いま」を象徴するニュースです。
今後、厳格な審査と各自治体の納得、そして住民との信頼関係の構築を経て、より安全で持続可能なエネルギー利用への一歩となることが期待されています。九州電力のみならず、全国の原発施設の今後を占う上でも重要な動向として、今後も注視が必要です。



