JERA、米国初のシェールガス田権益を15億ドル(約2300億円)で取得
株式会社JERAは、2025年10月23日、子会社であるJERA Americas Inc.を通じて、米国ルイジアナ州ヘインズビル地区におけるシェールガス開発・生産事業の権益を取得することを発表しました。本件取得額は約15億米ドル(日本円で約2300億円)に上ります。
取得の背景と目的
JERAは日本最大の発電事業者であり、近年は世界的なエネルギー転換や脱炭素社会への移行が加速する中、自社の資産ポートフォリオ強化とリスク分散を図っています。今回の権益取得は、主力事業であるLNG(液化天然ガス)バリューチェーンの強化策であり、安価かつ安定的なエネルギー供給を通じて脱炭素化と持続可能な成長を実現する方針です。
参画の詳細と事業内容
-
取得の対象:
米国GEP Haynesville Ⅱ, LLC(GEPII社)とSouth Mansfield E&P, LLC(SMEP社)がヘインズビル地区で保有するシェールガス開発・生産権益(権益100%) -
契約の概要:
GEPII社との間で資産権益売買契約を締結。加えて、SMEP社の株式100%をWilliams Upstream Holdings, LLCより取得する株式売買契約も実施。これによりヘインズビル地区の事業資産を100%取得 -
取得額:
約15億米ドル(2300億円相当) -
対象エリア:
米国ルイジアナ州西部ヘインズビル地区(鉱区面積:約210km²) -
開発対象:
ヘインズビル層、ミッドボシア層 -
生産能力:
約5億立方フィート/日(今後順次約10億立方フィート/日まで拡大見込み)
ヘインズビル地区の特徴と優位性
ヘインズビル地区は米国南部屈指のシェールガス産地であり、LNG液化基地やデータセンターが集積する湾岸地域にも近接しています。既存のガスパイプライン等インフラが整備されており、今後の事業展開において競争力の高い立地です。
JERAのグローバル戦略における意義
-
エネルギー供給の安定化:
世界的なエネルギー価格の変動や供給不安に備え、直接権益を持つことで長期的な安定供給体制を強化 -
LNGバリューチェーンの強化:
原料調達から発電まで一体で進めることで、トランジション燃料であるLNGによる脱炭素社会への移行を下支え -
アメリカ現地パートナーとの協業深化:
今回の権益取得は、米国事業におけるパートナーシップ強化にもつながる
今後の展望と課題
-
生産拡大:
生産井の増設により、日量10億立方フィート規模への増強を計画 -
脱炭素社会へ向けた貢献:
シェールガスは従来の石炭・石油よりCO2排出量が少なく、JERAはLNG供給能力の拡大により脱炭素化と安価なエネルギー供給の「両立」を目指す -
事業リスクと対応:
米国エネルギー市場は競争が激化。新規井戸の開発・運営に加え環境・規制面のリスク管理が今後も重要
各契約の概要
-
権益売買契約
- 売主:GEP Haynesville Ⅱ, LLC
- 買主:JERA Upstream America, LLC
- 対象資産:ヘインズビル層、ミッドボシア層のシェールガス権益
-
株式売買契約
- 売主:Williams Upstream Holdings, LLC
- 買主:JERA Upstream America, LLC
- 対象資産:South Mansfield E&P, LLCの株式100%
LNGバリューチェーン強化によるJERAの価値創造
JERAは、LNG調達・発電事業に加え、シェールガス上流権益取得により原料確保から販売までの全体最適を追求しています。これにより、自社での価格リスク分散や供給安定化が可能となり、「安価」と「脱炭素」を両立し、多様なエネルギーソリューションを顧客や社会に提供できる体制構築に繋がります。
アメリカのエネルギー事情とJERAの進出
アメリカでは近年、シェールガスの技術革新・生産拡大により、世界有数の天然ガス供給国となりました。JERAのシェールガス権益取得は、日本企業として初めての大型直接投資案件であり、国際的なプレゼンスの向上にも大きな意味を持ちます。既存の安価なガスやインフラと組み合わせることで、アメリカ市場でのさらなる展開や現地との調達連携強化が図れます。
まとめ
- JERAは米国ルイジアナ州ヘインズビル地区のシェールガス田権益を約2300億円で取得し、資産ポートフォリオ多様化とLNGバリューチェーン強化を実現
- 広大な鉱区(約210km²)・200本以上の生産井・競争力のある立地を活かし、持続可能な液化天然ガスの安定供給を目指す
- 今後もJERAは、自社の事業基盤を固め、日本および世界の脱炭素社会形成への貢献とともに、エネルギー安定供給のリーダーとして歩み続けます
補足:ヘインズビル地区の位置図とインフラ状況
ヘインズビル地区はルイジアナ州北西部に位置し、周辺には主要なLNGターミナルやパイプライン網が充実。湾岸地域にも近く、今後の事業拡大において非常に利便性の高い地域です。
JERAの今後に期待すること
JERAはこれまで国内外の発電・LNG事業で培ってきたノウハウを活かし、今回の米国シェールガス権益取得によるグローバル事業の更なる発展が期待されます。先端技術や現地パートナーとの連携を強化しつつ、安定・安価で脱炭素につながるエネルギー供給を進める姿勢に今後も目が離せません。




