鈴木憲和農水大臣、「コメ増産」政策からの転換を表明
2025年10月23日、鈴木憲和農林水産大臣が、コメ政策に関して政府方針の大きな転換を示唆しました。従来はコメ増産が重視されてきましたが、新たな方針では「国内需要に応じた生産」を基本とし、生産の過剰や価格暴落を防ぐ考えです。これは、一部の農家がコメ価格の急落を強く懸念していた現状にも配慮した動きです。
背景:令和のコメ騒動と価格高騰
過去数年、農林水産省がコメの需要を見誤った結果、コメが不足し価格が歴史的な高騰を見せました。具体的には、2024年のコメ生産量は679万トンから2025年には748万トンにまで増加。一方で、2026年の国内の需要見込みは最大711万トンとされており、今後はこれに合わせて生産量も約5%減らす方針への調整が進んでいます。
増産続きによる課題と方針転換の意味
- 限定的な国内需要に対して過剰な増産が続くと、余剰米が発生し価格が暴落する傾向がありました。
- 価格暴落は農家の赤字を招き、2023年時点では約95%のコメ農家が赤字に陥る深刻な状況となっていました。
- 前政権の石破首相らは「増産→余剰米は輸出」という方針でしたが、鈴木大臣は「輸出拡大は現実的にすぐできることではない」とし、国内需要に基づく調整を重視しています。
「価格は市場で決まるべき」――鈴木農水大臣の姿勢
鈴木憲和大臣は「市場で価格が決まるべき」と繰り返し強調しました。備蓄米の放出や価格介入を行ってきた過去の政府対応に対し、「農家が頑張ればきちんと稼げる仕組み」にシフトしつつあると語りました。農家目線では、収入が安定し未来の投資ができるほどの価格水準でなければ持続可能な農業にはなりません。特に、農業機械や設備投資には数年単位での資金計画が必要となるため、「最低限翌年も再生産できる価格水準」を強く重視するよう呼びかけています。
農家・産地の声 ― 変化の現場で感じる課題と期待
千葉県のコメ農家や流通関係者にも、大臣方針の転換は大きなインパクトを与えています。増産推進から路線変更への戸惑いはあるものの、「市場で稼げるなら前向き」という評価も聞かれます。消費者側の値上げ懸念に配慮しつつも、農家側への経済的持続性を重視する方針へ軸足が戻りつつある形です。
- コメ価格は現在も5キロあたり約4142円と高止まり状態。
- 生産調整によって極端な暴落・高騰の両方を防ぐ狙いがあります。
- 方針変更に対し農家からは「頑張ればしっかり稼げる」と一定の支持が寄せられています。
“コメ増産見直し”で流通業にも大きな変化
鈴木大臣の方針転換はコメ流通企業にも影響しました。大手米卸の木徳神糧は「増産政策からの転換」を意識した投資家の買いで、株価が一時13%高騰しました。市場では、今後コメの需給が引き締まることで価格安定・高値が期待されるとの見方が出ています。
新政権下の農政の方向性 ― コメ政策の持続可能性と新たな課題
鈴木憲和農水大臣の持論:「需要に応じた生産」と多様化への対応
鈴木大臣は農林水産省の元職員であり、生産現場や流通対策に精通。就任会見では「消費者ニーズに応じ、多様な価格帯のコメを届ける政策へ転換する」とも語りました。単に米価を下げて消費促進を図る旧来型政策から、生産者視点に立った安定生産・需給バランス重視の戦略へ。「コメの生産現場で課題を解決していく」という大臣の姿勢が顕著に表れています。
- 流通経済研究所の研究員も「鈴木大臣は前任と比べ生産者重視」と分析しています。
- 需給バランス、価格の安定、消費者の多様なニーズへの対応など、総合的な視点で政策が進んでいます。
コメ輸出の現実、地域計画の未来
「余剰米を輸出すればよい」との単純な構図には否定的な立場。海外輸出量の大幅拡大には時間とコストがかかるため、まずは国内需給に着実に対応する方向です。同時に、「地域計画」や輸出拡大に取り組む姿勢も継続中。地域の実情に応じた生産調整や付加価値米の生産、多様な販路開拓など、地方創生を見据えた総合政策にも言及しています。
消費者と社会へのメッセージ ― 安定供給と理解の要請
鈴木農水大臣は記者会見で「極端な安売りを追求してコスト割れでの生産を強いられる状況は持続できない」と強調。その上で、消費者に対し「再生産が可能な価格で米を買ってほしい」と理解を求めています。現状、日本の農業経営は後継者問題、高齢化、設備更新など多くの課題を抱えており、安定した収入がなければ次世代への継承も困難です。
- 「備蓄米の放出」や「お米券の配布」など、一時的な物価対策も検討中。
- 中長期的には、消費者の理解と協力を得て、安定した価格形成を目指します。
今後の注目点 ― 生産・価格・消費・地域の連携
- 2026年以降のコメ生産量の変化が農家経営と価格にどう影響するか。
- 流通や消費者が新方針にどう対応し受け止めるか。
- 輸出や地域活性化策、品質向上政策がどのように展開していくか。
まとめ:政策転換と日本農業の次の章へ
鈴木憲和農水大臣のコメ増産から「需要に応じた生産」への転換は、単なる経済政策の修正にとどまりません。日本の農業の持続性や地域社会の未来、食料安全保障へも直結する極めて重要な一歩です。
農家・流通・消費者がともに幸せになるため、そして未来の日本に美味しいお米と豊かな農業を残すため――新しい時代の米政策に、これからも大きな注目が集まります。


