ダイバーシティ推進の新たな動き:全国で広がる取り組みと2025年の注目イベント
2025年10月21日、日本の教育機関や企業において、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進に向けた様々な取り組みが活発化しています。特に注目を集めているのが、東京学芸大学による手話講習会の開催と、全国各地で予定されているダイバーシティカンファレンスです。これらの活動は、多様性を尊重し、誰もが活躍できる社会の実現を目指す日本の姿勢を示すものとなっています。
東京学芸大学が手話講習会を開催
東京学芸大学のダイバーシティ・インクルージョン推進本部は、秋学期に手話講習会を実施しており、第1回目が10月15日に開催されました。この講習会には教職員約60名が参加し、聴覚障がいのある方々とのコミュニケーションを円滑にするための基礎を学びました。
手話講習会の開催は、単なる言語習得の場にとどまらず、障がいの有無に関わらず、すべての人が共に学び、働ける環境づくりを目指す取り組みの一環です。参加者からは「実際に手話を学ぶことで、コミュニケーションの多様性について深く考える機会になった」という声が寄せられています。
全国の大学が推進するD&I活動
東京学芸大学以外にも、全国の教育機関でダイバーシティ推進の動きが活発化しています。同大学では2025年2月に第1回D&Iフォーラム「インクルーシブ教育は何をもたらすのか~横浜国立大学D&I教育研究実践センターの教育実践を通して考える~」を開催しました。また、3月にはダイバーシティ・インクルージョン推進本部のロゴが決定し、組織としての体制強化が図られています。
岡山大学では、11月の1か月間を「ダイバーシティ&インクルージョンデイズ」として設定し、D&Iに関する取り組みや情報を広く紹介しています。2024年には「合理的配慮を考えよう!」というテーマでMoodle研修を実施し、障がいのある人もない人も共に生きるために必要な配慮について、全教職員・学生を対象に学びの機会を提供しました。
研究活動とライフイベントの両立支援
北海道大学のダイバーシティ・インクルージョン推進本部では、研究者のワークライフバランスを支援する制度を展開しています。2025年度には「研究活動とライフイベント両立のための補助人材支援」や「研究活動と女性リーダー活躍の両立のための補助人材支援」の募集が行われており、育児や介護などのライフイベントを抱える研究者が研究活動を継続できる環境整備に力を入れています。
東京学芸大学でも同様に、2025年度育児・介護・看護等支援補助員制度の募集を開始したほか、大学教員の子の出張帯同費用の支給に関する取扱いを制定するなど、研究者が家庭と仕事を両立しやすい制度設計を進めています。
2025年注目のダイバーシティイベント
2025年は全国各地で多様なダイバーシティ関連イベントが予定されており、多くの参加者を集めることが期待されています。
日本大学ダイバーシティシンポジウムは、9月7日に「あらゆる”個”が輝く未来へ~ダイバーシティスポーツ~」をテーマに開催されました。日本大学会館とオンラインのハイブリッド形式で実施され、全国ダイバーシティネットワークと一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会の後援を受けて、スポーツを通じた多様性の尊重について議論が交わされました。
東京大学多様性包摂共創センターは、9月22日にキックオフシンポジウム「共に創るDEI」を安田講堂で開催しました。このシンポジウムでは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)の3つの観点から、大学におけるD&I推進の在り方について討論が行われました。
日本学術会議主催の公開シンポジウム「科学におけるダイバーシティを考える~自分らしい進路・キャリアパス選択のために~」は10月4日にオンラインで開催され、定員500名で実施されました。生命科学、理工学など様々な分野におけるジェンダー・ダイバーシティについて、若手研究者のキャリア形成の視点から議論が深められました。
企業における取り組み
教育機関だけでなく、企業においてもダイバーシティ推進の動きが加速しています。京セラは「京都レインボープライド2025」に参加し、DEI推進課を中心に、外国籍社員やグループ企業の社員など多様なバックグラウンドを持つメンバーがレインボーパレードに参加しました。性的マイノリティへの理解促進と、インクルーシブな職場環境の構築に向けた姿勢を示しています。
また、日本最大規模のダイバーシティ認定制度であるD&I AWARD 2025も開催されており、日本で活動する企業のD&I取り組みを独自の指標で評価し、優れた取り組みを行う企業を認定しています。この制度は、企業のD&I推進を可視化し、社会全体での多様性尊重の機運を高める役割を果たしています。
女性活躍推進のための取り組み
理工学系分野における女性の活躍を支援する動きも活発化しています。東京科学大学では10月25日に「女性活躍応援フォーラム2025-理工学系の世界って?その先にある未来へ-」を開催する予定で、中学生・高校生・高専生とその家族、教員を対象に、理工学系分野でのキャリアについて考える機会を提供します。会場先着250名、オンライン1,000名という大規模なイベントとなっています。
大阪府とOSAKA女性活躍推進会議が主催する「OSAKA女性活躍推進ドーン de キラリ フェスティバル 2025」は9月5日から6日にかけて開催され、女性の社会参画やキャリア形成について様々な角度から議論が行われました。
性の多様性への理解促進
性的マイノリティへの理解と支援も重要なテーマとなっています。東京学芸大学では2025年1月に性の多様性に関するガイドラインを改正し、より包括的な支援体制を整備しました。和歌山大学のダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン推進本部でも、7月にD&I研修を開催するなど、継続的な啓発活動が展開されています。
教職員の働き方改革
ダイバーシティ推進には、働く環境の整備も欠かせません。東京学芸大学では2024年12月に第1回教職員交流会「男性の育休取得促進に向けて-附属学校編-」を開催し、男性の育児参加を促進する取り組みについて議論しました。また、2025年1月には第2回教職員交流会「他人事ではない更年期障害」を実施し、働き続けるための健康管理について情報共有が行われました。
これらの取り組みは、ニュースレター「D&I通信vol.1」として発行され、学内外に広く情報発信されています。バリアフリーマップの案内や両立支援制度の整備など、具体的な施策も充実してきています。
今後の展望
東京農工大学では10月3日に「自己理解につながる『異文化理解』」をテーマにダイバシティセミナーを開催する予定で、グローバル化が進む中での多様性理解の重要性について議論が深められます。また、群馬大学ダイバーシティ推進センターは12月22日にトークセッション2025をオンラインで開催する予定となっています。
全国ダイバーシティネットワークを中心に、教育機関や企業が連携してD&I推進に取り組む動きは、今後さらに加速していくことが予想されます。手話講習会のような具体的なスキル習得の機会から、大規模なシンポジウムまで、多様な形でダイバーシティへの理解を深める場が提供されており、日本社会全体での意識変革が進んでいくことが期待されています。