中国共産党「4中全会」開幕――第15次5カ年計画の議論と今後の中国経済・社会の焦点

はじめに――中国共産党と「4中全会」の役割

中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)が、2025年10月20日から23日の4日間にわたり北京で開催されています。
この会議では、国家運営に関わる重要な政策が議論され、特に2026年から始まる「第15次5カ年計画」の方針が最大の焦点として挙げられています。
「中全会」とは、全国代表大会で選出された中央委員会が年に1回は必ず開催する重要な全体会議であり、今回の「4中全会」は現中央委員会で4回目にあたります。

4中全会で議論された主なテーマ

  • 第15次5カ年計画(2026年~2030年)の策定
  • 急速な社会構造の変化への対応――人口減少・少子高齢化・住宅需要減退など
  • 経済成長率目標の見直しと構造的課題への処方箋
  • 重要軍人事――人民解放軍幹部の大規模な粛清等の動向
  • 経済社会の中長期発展戦略と「質の高い発展」推進
  • 「安全保障」の確立と国内外のリスク対応

第15次5カ年計画の意義と背景

五カ年計画は中国共産党による国政運営の要で、1953年に導入されて以来、社会主義的計画経済の骨格を形作ってきました。
今回策定が進められている第15次5カ年計画は、2035年に掲げる「社会主義現代化の基本的実現」へ残り10年という極めて重要な時期を対象としています。

策定には複数年に渡る調査や専門家評価、意見収集などの段階を経ており、国内産業の現代化・新興産業の育成・未来産業への投資などが重点分野となります。
また、国内外の情勢を反映した「安全保障」確保も強調され、経済だけでなく社会全体の安定も極めて重視されています。

成長率目標設定の困難性――「高成長」から「質の高い成長」へ

近年の中国経済はコロナ禍からの回復過程や国際社会との摩擦、人口動態の急激な変化など数々の逆風にさらされています。
第14次5カ年計画(2021~2025年)期間に続き、第15次で成長率目標(GDP成長率)の数値設定が見送られる可能性が高まっており、実質的には「設定できない」状況といえます。
中国経済は従来型の高速成長モデルが限界に達し、今後はイノベーション主導型で「質の高い発展」を追求する方向にシフトしています。

中国経済の「内巻」現象――その現実と課題

「内巻(ネイジュアン)」とは、経済や社会がさらに複雑化・過熱するにも関わらず、実質的な生産性向上につながらない現象を指します。
人口減少・少子高齢化が消費や住宅需要の減少をもたらし、過剰投資や低効率がしばしば問題視されています。
また、「国進民退」(国有企業の優遇政策による民営企業への負担増大)や過剰債務問題も成長を阻害しており、今後の計画には構造問題解決柔軟な政策修正が不可欠です。

注目される軍人事――人民解放軍幹部の大規模粛清

今回の4中全会の開催直前には、人民解放軍幹部9人の粛清が発表され、国内外で大きな注目を集めました。
軍の人事も会議の議題に含まれ、「政治の安定・軍の統制強化」が本会議のもう一つの重要なテーマとなっています。
権力構造の再構築や腐敗対策が進められる中、中国共産党指導部が「党建設」と「国家安全」をどのように連携させるかが今後の鍵となります。

第14次5カ年計画で直面した試練と国際社会の注目

前回の第14次計画期間(2021~2025年)は、コロナ禍・国際的対立・外需不振・地政学リスクなど、数多くの困難な課題への対応が求められました。この間に中国がどのようにして経済成長を継続し、外部圧力にどう向き合ったかは、世界中の政策担当者にとっても大きな関心事であり続けています。

中国の五カ年計画は世界経済にも大きな影響力を持つと言われています。過去の計画のたびに、サプライチェーンや資源需要、国際金融市場などへ直接的・間接的なインパクトが及んできました。
今回の第15次計画も、内包する課題の深刻さや表明された改革の方向性などから、各国メディアや国際社会が高い注目を寄せています。

地域社会への影響と国際的視点

  • 地方政府の財政健全化や新たな雇用創出が主要なテーマに
  • 産業の高度化(AI・次世代IT・グリーン経済など)を通じた現代化への戦略的投資
  • 「共同富裕(格差縮小)」へのアプローチや、地方経済の底上げも課題
  • 一帯一路政策をはじめとする外交政策との連動も想定

今後の展望――中国が目指す「質の高い発展」と世界経済への波及

第15次5カ年計画の具体的な内容はまだ草案段階ですが、科学技術イノベーションの主導・産業の現代化・安全保障の強化などが確実に盛り込まれる見通しです。
今後中国がどのような道筋で内外の多様な課題に応え、社会主義現代化をどこまで進められるのか、その影響は中国国内にとどまらず世界経済や地政学にも波及することが予想されます。

まとめ――4中全会が映し出す中国社会の転換期

中国共産党4中全会は、第15次5カ年計画を通じて中国が目指すべき社会像と具体的な改革の方向性を打ち出そうとしています。
大量の構造的課題を抱えつつも、科学技術や産業高度化を柱とした質の高い発展へ転換する過程は、政策だけでなく社会全体のあり方にも深い影響を及ぼします。
今まさに中国は一大転換期にあり、その未来を描く「青写真」がどのようにまとまり、どのように国民生活やアジア・世界へ波及するか、多くの人々が注視しています。

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