田端信太郎氏も注目「メルカリ ハロ」撤退の真相――1200万人登録でも終わったスキマバイト事業

はじめに

2024年春、フリマアプリで有名なメルカリは、「誰でも、すぐに、簡単に」短時間のバイトを探せるスキマバイトサービス『メルカリ ハロ』を鳴り物入りで開始しました。しかし2025年12月18日をもって、サービスは終了する運びとなりました。登録者は1200万人を超え、一時は業界トップの『タイミー』を上回るとも言われましたが、なぜメルカリはわずか1年半で撤退という選択を迫られたのでしょうか。本記事では、背景や課題、市場の動向、そして今回の撤退がもたらす意義を、田端信太郎氏など識者の視点も交えながら、やさしく紐解いていきます。

「メルカリ ハロ」サービス概要と急成長の背景

  • サービス開始: 2024年3月に正式リリース。メルカリのCtoCで築いた「信頼性・即時性」を、労働のマッチングに活かす狙いで誕生しました。

  • コンセプト: 「1時間から働ける」「アプリでカンタン応募」「すぐ働いてすぐにお金がもらえる」を売りに、フリマ利用者へのクロスセルも展開。

  • 登録者数: 2025年6月には1200万人に到達し、同期の『タイミー』(1190万人、2025年7月末)をしのぐ勢いでした。

事業撤退――公式発表とその背景

  • 公式発表: 2025年10月14日、メルカリは「市場環境の変化やサービスの利用状況などから総合的に判断し、事業継続は困難と判断した」と説明しています。詳細な説明は避け、経営上の総合判断であることのみが強調されました。

  • 利用実態: 1200万人の登録を謳った一方で、実際の「アクティブユーザー」は想定の数分の一、仕事を提供する企業パートナーの数も伸び悩みました。

  • サービス終了日: 2025年12月18日。利用者や事業者へのサポートにも配慮した形となっています。

競合「タイミー」との大きすぎる壁

スキマバイト市場は、2018年に登場した「タイミー」がすでに圧倒的なシェアとブランド力、業界ネットワークを築いていました。タイミーの累計ユーザー数800万人、導入企業6万社という実績は業界インフラと化していたのです。

  • ネットワーク効果:労働者・店舗双方が集まっており新規参入者には高いハードル

  • 差別化の難しさ:ユーザー集客では健闘したものの、リアルな仕事を依頼する企業側では『タイミー』の信頼とネットワークに大きく後れをとりました

  • 手数料:2社とも利用料30%と条件は同等でしたが、タイミーはすでに市場インフラとして根付いていたため、企業も労働者も移行しづらかった

利用料有料化と失速の転機

「メルカリ ハロ」は立ち上げ当初、事業者向けに無料でサービス提供していましたが、2025年4月よりサービス利用料有料化(給与+交通費の30%徴収)へ転換。このタイミングで求人数が頭打ちとなり、求人側の出稿が大幅に減少したとみられています。集客が生かされず、取引が伸び悩む構造的な問題が露呈しました。

メルカリの課題:ブランドの親和性・既存インフラの壁

  • ブランド親和性の課題:フリマ利用者の属性と、日雇いバイト労働をするワーカー層・依頼主企業の相性にズレがありました。

  • 法制度の難しさ:日雇いマッチングは雇用法制が複雑で、運営側のコスト・負担も大きかったとされます。

  • リアルネットワーク構築の不十分さ:フリマCtoCの成功体験が、BtoBtoC型のバイトマッチングに必ずしも応用できなかった点も指摘されています。

識者の分析では、既存ユーザー基盤を活かした新分野参入は一筋縄では行かず、「勝てる市場」を見極める審美眼と、撤退の決断力が現代経営に不可欠だとしています。

「即断の英断」か「撤退の必然」か――識者の視点

ネットでも有名な田端信太郎氏は、「メルカリのような巨大企業にとって、ビジネスは絶えず“選択と集中”が求められる」とし、「マーケットの現実を認め、損失最小化に動く姿勢は健全な経営判断だ」と述べています。一方で、「参入障壁が高い領域での新サービスは一層慎重な事業探索が必要では」とも指摘します。

他のビジネス専門家からも、「撤退判断の早さはメルカリの柔軟で合理的な企業文化を象徴している」と評価する声がある一方、「市場分析の詰めが甘かった」「ブランド力が万能ではない証左」という厳しい声も上がっています。

類似事例・関連ニュース

  • スキマバイト市場全体:2023〜25年は大手企業の新規参入が加速。イオンなど小売業界も自社でバイトマッチングサービスを提供し、競争はさらに激化しています。

  • メルカリの事業探索:従来から大胆な挑戦を続ける企業ですが、今後もコア事業への集中や新規領域開拓の試行錯誤が続く見通しです。

今後の展望と残された問い

「メルカリ ハロ」撤退は、“事業探索の難しさ”と“即断撤退の重要性”を現代のIT企業にもたらす象徴的な出来事となりました。アプリローンチから約1年半、マーケットの現実に立ち戻って下した判断は、今後のデジタル事業開発において大きな示唆を与えています。

副業・スキマバイト市場は巨大なポテンシャルを持つ一方、参入障壁も高く、リアルとネットの両輪で戦略を練る重要性が浮き彫りとなりました。メルカリの今後の新規事業や、王者タイミーの一人勝ちがどこまで続くのかにも注目が集まります。

まとめ

田端信太郎氏も注目した「メルカリ ハロ」の撤退劇は、数字のインパクト(登録者1200万人)とは裏腹に、実需と競合優位性、戦略転換の必要性――すべての現代的ビジネスに立ちはだかる課題の縮図と言えるでしょう。
多様な働き方への新たな挑戦はこれからも続きますが、「どこで、だれと、どう勝負するか」がますます問われています。利用者、事業者、そして新たなプレイヤーがどのような選択をするのか、一層目が離せません。

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