絶滅危惧種マナヅルの保全を目指す寄付キャンペーンが始動
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、絶滅危惧種であるマナヅルとその繁殖地であるモンゴルの湿地保全のための寄付キャンペーン「草原の国、ツルのふるさと~命が集う水辺を守る~」を2025年3月3日より開始した。このキャンペーンは、WWFジャパンの公式ウェブサイトで実施されており、マナヅルの危機的状況への理解を深め、保全活動への支援を呼びかけることを目的としている。
マナヅルの生態と絶滅危惧の現状
マナヅルは春から夏にかけてモンゴルを含むアジア北東部で繁殖し、日本の九州や中国の揚子江中流域で越冬する渡り鳥である。生息地は比較的浅い湿地やその周辺の草地、農地であり、推定個体数は6,700~7,700羽とされている。国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト」では「VU(危急種)」と位置付けられ、日本の環境省のレッドリストでも「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に選定されている。
特に、モンゴルで繁殖する西部個体群の生息数が顕著に減少しており、降水量の少ないモンゴルでは気候変動による湿地の消滅が進行中である。このため、マナヅルにとっての営巣環境が脅かされている。
湿地保全の重要性と現地の課題
マナヅルは、浅い水の中に草を積み上げて巣を作るため、湿地環境が不可欠である。しかし、近年の家畜の過放牧や水質汚染がマナヅルの生息地に深刻な影響を及ぼしている。WWFジャパンは、マナヅルを守るためには繁殖地、越冬地、中継地の生息環境を適切に保つことが重要であると訴えている。
日本国内では、鳥インフルエンザの拡大を防ぐため、地域関係者や自然保護団体と連携して越冬地の分散を検討している。また、2024年4月からはWWFモンゴルが行う繁殖地での調査と保全活動への支援を開始する予定である。
寄付キャンペーンの内容と目的
本日開始された寄付キャンペーンは、マナヅルの絶滅危機に対する関心を高め、WWFの保全活動への支援を促すことを目的としている。寄付の一部は、マナヅルとその生息地の保全活動に充てられる予定である。WWFジャパンの専門オフィサー、淡水グループの羽尾芽生氏は、モンゴルの湿地環境がマナヅルや地元住民にとっていかに重要であるかを強調し、活動の拡大を願っていると述べている。
WWFジャパンの取り組みと関連情報
WWFジャパンは、モンゴルでの保全活動に関する情報をスタッフのブログでも紹介しており、湿地の再生がマナヅルに与える影響についての具体例が掲載されている。さらに、関連する動画や活動報告も公開されており、一般の人々に向けて情報発信を行っている。
モンゴルと日本をつなぐ渡り鳥 絶滅危機種マナヅルの保全プロジェクト
終わりに
マナヅルの保全活動は、単なる生物の保護にとどまらず、湿地環境の保全や地域住民との共生を目指す重要な取り組みである。WWFジャパンの寄付キャンペーンは、多くの人々にマナヅルの危機を知ってもらい、未来のために行動するきっかけとなることを期待している。これからも、自然と人間が共存できる持続可能な社会を築くための努力が続けられることを願う。