NHK新サービス「NHK ONE」への移行と現状 〜現場の声と今後の課題〜
概要:NHK ONEとは何か
NHK ONEは、2025年10月1日より運用開始されたNHKの新たなインターネット統合サービスです。従来の「NHKプラス」や「ニュース・防災」など複数あったWEBサービスを一本化し、「地上波放送」と「ネット配信」「見逃し配信」などの機能を一体化したプラットフォームです。放送法の改正によって、NHKのネット配信が「必須業務」に位置付けられたことを受け、すべての視聴者がインターネットを通じてNHKの番組や情報にアクセスしやすくすることが狙いとなっています。
移行状況:想定より低い移行率
- 2025年9月末時点での旧「NHKプラス」登録ID数:約668万件
- 「NHK ONE」への移行件数(10/1〜10/13):約163万件
- 移行率:約24%(4分の1程度)
NHKによれば、移行開始から2週間で前サービス「NHKプラス」利用者の約4分の1に当たる163万件が移行を済ませています。しかし、残りの75%以上が未移行であり、特に高齢者やデジタル機器の操作に不慣れな方々にはかなりのハードルがあることがうかがえます。
円滑な移行へ向けたサポート
NHKは、スマートフォンやタブレットの操作に不安を持つユーザーに対応するため、全国で「NHK ONE 登録サポート」を展開しました。この支援イベントには2週間で約5万人が訪れ、会場スタッフが登録手続きなどを直接サポートしています。また、特設サイト「NHK ONEインフォメーション」でFAQや動画による操作説明、移行手続き手順なども公開しており、オンラインでの情報提供も強化しています。
新サービス開始時の不具合とNHK会長の謝罪
「NHK ONE」開始直後には、アカウント登録時の認証コードが届かないなど技術的な不具合が発生し、コールセンターへの問い合わせが殺到。電話が非常につながりにくい状況が続き、多くの利用者に不安や不便を与えました。この対応の遅れやシステムの不備について、NHK会長は公式に謝罪しています。NHKは、こうしたトラブルを踏まえ、今後は障害監視やサポート体制の拡充により、より円滑な運用を目指すと表明しています。
アカウントと受信契約の連携促進へ
- 11月中旬より、NHK ONEアカウントと受信契約情報の連携を強く促進
- 連携未完了ユーザーへ「閉じられない連携メッセージ」を画面表示
- メッセージは繰り返し表示し、登録の完了まで継続
制度変更に伴い、今後は「NHK ONE」アカウントと受信契約の情報連携が強く求められるようになりました。11月中旬以降、未連携のユーザーには「NHK ONEアカウント登録のお願い」メッセージが画面に閉じられない形で表示され続ける仕様へ移行予定です。今後サービスを円滑に利用し続けるためには、早めのアカウント登録と情報連携が不可欠になっています。
NHK ONEの新機能
アカウント登録によって、家庭ごとに最大5つのプロフィールが設定できるなど、「家族それぞれの履歴管理・おすすめ番組リストの自動生成」「キッズモード(年齢制限)」といった機能も利用可能となっています。デバイスや画面の拡張性・セキュリティ面も強化されています。
利用者の声・現場の反応
現時点での利用者からは、「手続きが分かりにくい」「認証やログインの仕組みが難しい」といった声が多く寄せられています。特に高齢者やIT機器が苦手な方から「慣れるまでは不安」「家族に手伝ってもらった」という控えめな評価や、「家族で個別にアカウント管理ができて便利」と肯定的な意見も出ています。
NHKのサポート体制にも一定の評価がありますが、「窓口が混み合い電話がつながらない」「サポートサイトの説明が専門的で難しい」といった指摘も見受けられ、今後の改善が期待されています。
今後の見通しと課題
- 未移行者のフォローとデジタルデバイド対策の強化
- サポート体制のさらなる充実化(特に高齢者・障害者対応)
- 受信契約連携の説明と同意取り付けの丁寧な進行
- 技術トラブルの再発防止とシステム安定化
- NHK ONEの多様な機能や利用メリットの周知活動
今後、NHKはネット時代の公共放送にふさわしいサービスの安定稼働と、全ての世帯が公平に情報にアクセスできる環境作りを目指すことが求められます。そのためには、操作や契約連携に関する丁寧な説明や相談窓口のさらなる拡充、利用しやすさを伝える広報活動がますます重要となるでしょう。
まとめ
2025年10月に開始されたNHK ONEは、まだ認知や移行の段階で課題を多く抱えていますが、対面サポートやオンライン支援を拡充しながら着実に利用者層の裾野を広げています。将来的には、どの世代・どの地域の方々も使いやすい公平な公共インフラとして、より成熟したサービス提供が期待されます。今後の運営体制やサポート強化にも引き続き注目が集まります。