楽天グループ、円建て永久劣後債を発行-海外勢も3割を占める大型調達
楽天グループが異例の大型「永久劣後債」発行に踏み切る
2025年10月17日、楽天グループ株式会社(代表取締役会長兼社長:三木谷浩史)は、円建てで初となる「利払繰延条項・任意償還条項付無担保永久社債(清算型倒産手続時劣後特約付)」を、広く国内外の投資家向けに発行することを発表しました。この社債は永久劣後債という形式をとり、償還期限を設けないことが最大の特徴です。加えて、資本性認定(50%)を受けており、企業の自己資本比率にプラスの影響を与える設計となっています。
発行の背景と目的
本永久劣後債は、2021年発行の米ドル建てノンコール5年永久劣後社債(初回コール日2026年4月22日、発行金額750百万ドル)のリプレイスメント資金として充当される予定です。楽天グループは過去数年、携帯通信事業への大型投資と債務負担増加への対応が課題となっており、今回の資金調達を通じて責任ある財務運営と安定的な資本確保を進めます。
社債の主な発行条件と特徴
- 発行額:820億円(国内社債市場では近年最大級)
- 利率:2030年10月23日まで年4.691%。その後は1年国債金利+3.750%(2045年10月23日までは)、さらにS&Pの格付け条件に応じて1年国債金利+4.500%。
- 払込期日:2025年10月23日
- 償還期限:なし(永久債)、ただし2030年10月23日以降は任意償還が可能
- 利払日:毎年4月23日および10月23日
- 利払繰延:楽天の裁量で利払いを繰り延べる権利を有する
- 劣後特約:倒産時は他の債務よりも弁済順位が低い
本社債の最大の特徴は、通常の債券とは異なり、楽天グループの判断で利払いを一時的に控えることができること、さらに償還期限を特定せず、経営判断で一定期間後に全額償還することも可能となっていることです。こうした特徴により、同債券は「ハイブリッド債」や「資本性調達」とも呼ばれることがあります。
海外投資家の強い存在感—総需要の約3割
今回の発行では海外投資家の応募割合が総需要の約3割を占め、これまで国内投資家中心だった円建て社債市場において、楽天グループの国際的な知名度と信用力が証明されました。世界的な低金利環境の中、相対的に高利回りが期待できる日本円建ての永久劣後債へ関心が集まった結果です。
国内社債の中で2025年最高の高利率
発行された永久劣後債の利率(4.691%)は2025年に発行された国内社債として最高水準。多くの投資家はリスクがやや高い点(弁済順位が低い・利払いが繰延可能であること)を考慮しつつも、資本性を重視し長期運用が可能な年金・保険など機関投資家を中心に高い需要を集めました。
利率の詳細:初めの5年間は確定利率ですが、以降は短期国債金利に上乗せされる「変動金利」へ移行。格付け状況によって上乗せ率がさらに変動する変則的な設計となっています。
格付と投資の判断材料
- 格付投資情報センター(R&I):長期「BBB+」
- 日本格付研究所(JCR):長期「A-」
- S&Pグローバル・レーティング: 長期「BB」
社債の格付は複数の機関から評価されており、楽天グループの信用力が示されています。特に、今回の永久劣後債は「資本性」が高いと判断されるため、債券投資家のみならず株主や取引先、金融機関にとっても注目の対象です。
市場や投資家からの反応と今後の展望
今回の発行規模や高い利率、海外投資家の積極参入を受け、金融市場では「海外資金の呼び込みに成功した大型案件」と好意的に受け止められています。今後、楽天グループの財務基盤の安定にどう寄与するか注目されます。また、類似の資本性社債を発行する日本企業が増加する可能性も指摘され、市場全体への波及効果も期待されています。
楽天グループの利益とリスク
- 資本性認定を活かし、自己資本比率の向上や格付維持に寄与
- 繰延利払い・償還期限非設定により財務負担の柔軟性向上
- 一方、投資家にとっては通常の社債よりリスクが高く、倒産時には弁済順位が下がる点に注意
楽天の今後の経営状況や市場環境次第で、永久劣後債の評価も変化する可能性があり、投資家としては企業の財務状況や格付情報を継続的に注視する姿勢が求められます。
今後の動向と日本企業への影響
今回の楽天の先進的な資本調達手法は、日本の資本市場に新しい刺激を与え、他の大手企業でも同様のハイブリッド債や永久債発行の動きが加速する可能性があります。経営環境・金融政策の変化をふまえた柔軟な財務戦略の重要性が、これまで以上に増しています。
まとめ
楽天グループの820億円規模の円建て永久劣後債は、国内外の投資家需要の高まりと、企業の財務戦略の進化を象徴する画期的な案件になりました。今後も本件をはじめとする資本性金融商品の動向は、多くの関心を集め続けることでしょう。