バローが見せる、堅実な成長の理由と“自前主義”戦略――売上高1兆円へ向けて加速するスーパー業界の雄
岐阜発・地方スーパーの星「バロー」とは
バローは岐阜県に本社を置き、中部・関西圏を中心にスーパー、ドラッグストア、ホームセンター、ペットショップなど多角的な事業を展開する流通グループです。グループの中核を成す「株式会社バロー」と持株会社の「バローホールディングス」により経営の効率化と地域密着型経営を強みとし、全国トップクラスの売上規模を持つ企業に成長しています。
現在、スーパーマーケット事業だけで328店舗(うちバローは247店舗)、全グループで1,474店に及ぶ店舗網を展開しています。
直近業績:9月既存店売上高4.2%増、好調維持
- バローの2025年9月度既存店売上高は前年同月比4.2%増
- 客数は0.5%増、客単価は3.7%増
- 全店売上高では9.1%増という目覚ましい成長を記録
これらの数字は、消費環境や競争が激化する中でも着実な店舗運営と商品戦略が奏功している証です。
躍進を支える“自前主義”の経営哲学
バローの最大の特長は「自前主義」。これは、生鮮食品の仕入れ、物流、バックヤード業務などを自社内で担い、外部委託を最小限に抑える独自のビジネスモデルです。この自前主義がなぜ成長を支える原動力になっているのでしょうか?
- コスト競争力:自社で仕入れ・物流を一貫して管理するため、中間マージンを削減。その分を価格に転嫁できます。
- 鮮度・品質管理:店舗に商品が届くまでのリードタイム短縮、品質コントロールが自社基準で徹底されます。
- 現場の声が反映される:売場や物流現場の意見を経営判断に直結させやすい組織体系なので、ニーズ変化への対応が早いのも特徴です。
例えば仕入れにおいては、専門バイヤーが産地と直接交渉し契約を結ぶことが通例です。物流でも自社の配送センターから各店舗へスムーズに商品供給を行うシステムを構築し、地域ごとの食品流通の最適化を実現しています。これらの取り組みにより値ごろ感と鮮度を武器に、顧客からの高い支持を得ています。
売上高1兆円が見える“成長エンジン”
2025年3月期のバローホールディングスの連結売上高は8,544億円。グループとして売上1兆円の大台に向け、順調に規模拡大を続けています。業界や消費マインドが大きく変動する中で、前年を大きく上回る成長が続いているのは、“足元の堅実な運営”と“M&Aを活用した戦略的拡大”の二軸がかみ合っているからです。
- 新規出店:2025年9月もスーパーマーケット2店、ドラッグストア4店、ペットショップ2店を新規開設。堅実に既存エリアと新規エリアを拡大しています。
- 既存店強化:地域ごとに独自の品揃え、価格訴求、店舗改装による顧客満足度の向上に取り組み、来店動機を維持・拡大させていることが業績アップの背景です。
- M&A(企業買収・事業譲受):近年は競合企業の店舗譲受や異業種からの事業取得なども積極的に実施。関西圏のトーホーストアから店舗を譲り受けることで、地盤強化とノウハウ獲得の両輪で成長加速を図っています。
関西進出への布石――500億円の達成、そして1,000億円を見据えて
バローHDは従来、2027年3月期に関西圏で売上高500億円を目指す目標を掲げていましたが、2026年3月期での前倒し達成が確実となりました。兵庫県内でトーホーストアの7店舗をドラッグストアへ転換させるなど、積極果敢な展開が功を奏しています。
この関西エリア強化は、バローグループにおける次なる飛躍の鍵と言えます。今後も事業譲受やM&A、業態転換などを通じて売上高1,000億円、ゆくゆくはグループ全体で1兆円への道を切り開こうとしています。
- スピード感とシナジー創出:既存の店舗インフラや物流・ITシステムを生かし、譲受店舗の立て直しを迅速に進めます。
- 地域特性への適応:中部・北陸で培ったフォーマットを関西にローカライズし、無理のない成長戦略を練っています。
競合他社との差別化――地域密着とコストパフォーマンス
競合する大手スーパーと比較して、バローは“地域特化型”の戦略で存在感を高めています。専任担当者による地域ごとのオリジナル商品開発や販促展開、そして価格政策による「コストパフォーマンスの高さ」が評価されています。
また、グループ内でドラッグストア・ホームセンター・ペット事業までカバーしているため、複数の生活ニーズにワンストップで応える柔軟性も大きな武器。高齢化や単身化が進む中で、地域に密着したサービスの強化が今後も重要となるでしょう。
4つの事業ドメイン――グループ力の強み
- スーパーマーケット事業:バローをはじめ、中部・関西エリアに食の基盤を構築
- ドラッグストア事業:中部薬品が中核。調剤薬局との複合化モデルも推進
- ホームセンター事業:ダイユーエイトやホームセンターバロー、タイムの3社計で全国ネットワークを形成
- ペットショップ・専門業種:ペット事業やスポーツクラブなど分野横断的にライフスタイルを提案
今後の課題と展望
バローの成長は順風満帆に見えますが、課題も存在します。たとえば競合スーパーとの価格競争、既存エリアでの需要飽和、新規業態やデジタルへの対応、サステナビリティ(持続可能な社会貢献)に関する取り組みです。
これまで通りの“自前主義”を基盤にしつつ、バローグループではDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やキャッシュレス決済、サステナブルな商品の取り扱い強化など新たな顧客体験の創造にも取り組んでいます。
バローがもたらす地域への恩恵――日々の暮らしを豊かに
安心・安全な商品をお手頃価格で提供し、地元生産者との連携やコミュニティイベント開催を通じて「街のインフラ」としての役割も果たしています。まさに“なくてはならないスーパー”というポジションを確立しているのです。
まとめ:バローの挑戦は続く
バローの躍進には、他社を真似しない「自前主義」と、地道で誠実な現場力が大きく寄与しています。これからも地域社会と共に成長し続けるバローに注目が集まります。