ASMLホールディング最新決算、株価動向と成長見通し――最先端半導体技術を巡る今後
世界の半導体製造装置市場で圧倒的な存在感を示すASMLホールディング。2025年に入り、同社の業績発表や株価の動きが金融市場、半導体業界のみならず、世界中の投資家やハイテク関連企業の大きな注目を集めています。本記事では、2025年10月時点の最新ニュースをもとに、ASMLの最近の決算内容や株価動向、市場全体の期待、不安材料、そして今後の成長に向けたシナリオまで、わかりやすく詳しく解説します。
ASMLとは?業界で果たす役割
ASMLホールディングはオランダに本社を構える、半導体製造装置の世界的リーダーです。とりわけ最先端のEUV(極端紫外線)露光装置は、TSMC、インテル、サムスンといったグローバルな半導体メーカー各社によって採用されており、微細化や高集積化、高性能化が進む現代チップの製造に不可欠な技術を提供しています。ASMLはEUV露光装置の分野で唯一無二の存在であり、その技術的優位性はサプライチェーンにおける中核的地位をもたらしています。
2025年10月時点の最新決算と市場の反応
- 2025年第3四半期の売上高は約77億1,000万ユーロ(前年比3%増)。ただし、これは事前予想の上限(79億ユーロ)をやや下回りました。
- ASMLが掲げていた2025年通期の売上高予想は325億ユーロ(前年比15%増)とされ、市況の需要の高まりにも関わらず控えめなガイダンスに市場は注目しています。
- 最新の決算発表後、株価は下落。「ASMLショック」とも呼ばれ、市場全体の警戒感が広がりました。しかし、その後は反発傾向も見られています。
- これらの動きを受けて、オプション市場では強い警戒感が現れており、投資家が下落リスクに備える動きも顕著になっています。
成長ドライバーと今後への期待
短期的には慎重なムードが漂うものの、ASMLの成長力や将来的なポテンシャルに対する投資家の期待は依然として高い状況です。主な要素をまとめます。
- 先端EUV露光装置の技術優位性: 世界で唯一ASMLが生産できる先端EUV露光装置に対する需要は、半導体の高性能化・省電力化の流れの中で今後ますます高まる見込みです。
- 生産能力の増強:ASMLは2025年以降、現行EUV露光装置の年間生産能力を約110台にまで引き上げる計画を進めています。これはこれまでの2倍以上。新しいHi-NA機種(ハイNA、開口数0.55など)の量産体制も構築中です。
- 受注回復・粗利益の維持:2025年上半期には新規受注額が55億ユーロと大幅に回復し、通期の売上高は前期比15%増、粗利益率52%を見込んでいます。
- 世界的な半導体需要の拡大:生成AI、IoT、自動運転、次世代通信など新しい成長領域が、微細化プロセス技術や高性能チップへのニーズをさらに後押ししています。
業績予測に影を落とすリスク要因
一方、ASMLに関しては不安材料も存在します。2024年〜2025年にかけて以下のようなリスクが話題となっています。
- インフレ圧力とコスト増:材料費や人件費の上昇による利益率の低下リスク。本年度も目立った人件費増が利益見通しの下方修正要因となりました。
- 中国・米国間の地政学的リスク:半導体規制強化や輸出管理の影響で、中国への先端装置納入制限が進み、今後の売上構成に不透明感が残ります。
- 需要変動や業界在庫調整:2024年に見られたような受注の急減、今後のサイクル性による業績のブレが懸念されています。
市場評価と株価予想――“1000ユーロ”のインパクト
近年、ASMLの株価が1000ユーロを超えるかどうかが大きな話題の一つとなっています。独立系分析機関のモデルによれば、今後2年半で株価が678ユーロ/株から1,061ユーロ/株まで上昇し、年率換算で約20%近いリターンが期待できるとする強気な見通しも示されています。これには以下の前提が伴っています。
- 今後数年間で年間売上成長率11.7%・営業利益率35.8%が維持できること。
- 先端EUV露光装置の受注・売上伸長が継続すること。
- 市場全体の半導体投資サイクルが大きな反転なく進むこと。
ただし、2024~2025年の業績ガイダンスはやや慎重です。米金利の先行きやマクロ経済、地政学リスク、さらに技術革新スピードへの対応が今後の“1000ユーロ超え”達成の鍵となります。
金融市場との関連と今後の注目点
また、最近の市場では米連邦準備制度(FRB)パウエル議長の金融政策発言が金価格高騰とともに株価変動にも影響を及ぼすとの声もあり、ASML株の動向もグローバルなマクロ経済シナリオと密接にリンクするようになっています。
一方、技術的進展や設備投資に積極的な姿勢、取引先のグローバル多極分散、技術・生産の柔軟性強化など、さまざまな成長策で地合いの悪化にも耐性を見せており、中長期の投資候補として引き続き注目の的です。
投資家・業界関係者・一般読者へのアドバイス
ASMLホールディングは今や半導体産業の成長そのものと直結する企業であり、最新の情報収集や市場動向の把握はますます不可欠です。決算発表を歩調に、短期の株価変動以上に、長期的な技術革新サイクルと生産体制、グローバルトレンドの変化に注目し続けることが重要でしょう。
今後も世界のテクノロジーと経済の発展を支える“影の主役”として、ASMLの歩みには注目が集まり続けるはずです。