メルカリ、「メルカリ ハロ」事業撤退へ――急拡大したスキマバイト市場に生じた分岐点

はじめに:社会を支えたスキマバイト「メルカリ ハロ」の終了

2025年10月、株式会社メルカリは、スキマバイトサービス「メルカリ ハロ」事業からの撤退を発表しました。本記事では、メルカリ ハロが提供してきた役割やサービスの歩み、市場全体の動向、そして今回の撤退に至った背景を、公式発表や関連ニュース、業界データをもとにやさしく解説します。

メルカリ ハロとは:”だれでも、すぐに、かんたんに”働ける新サービスの登場

メルカリ ハロは2024年3月6日にサービス提供を開始した、短時間・単発で働くことができる、いわゆる「スキマバイト」向けの求人プラットフォームです。「スキマ時間」に気軽に働ける仕組みを提供し、フリマアプリ「メルカリ」やキャッシュレス決済「メルペイ」との連携で、報酬もシームレスに即時受け取れる利便性を打ち出しました。
ちょっと空いた時間にお仕事がしたい方、また人手不足に悩む企業や店舗の双方にとって、新しい働き方の橋渡しを目指したサービスでした。

  • メルカリアプリ上でバイト検索・応募が可能
  • 報酬は「メルペイ」で即時受け取り
  • 時間・スキルを活かす新しい働き方の提案
  • 利用者増に伴い、中小事業者への求人開放や審査体制の強化

日本のスキマバイト市場の急成長とメルカリ ハロの存在感

スキマバイト市場は新型コロナウイルス禍以降、柔軟な働き方の需要や人手不足を背景に拡大し、2025年2月時点で登録会員数は約3,200万人に達しました。
「メルカリ ハロ」はサービスの新規登録者数で業界トップを記録。2025年6月時点では登録者数1,200万人を突破し、約1年3カ月間でのスキマバイト新規会員の約6割がメルカリ ハロ経由とされています。

  • 2024年3月サービス開始
  • 2025年6月:1,200万人登録、業界No.1
  • “スキマバイト”市場全体の成長のけん引役

サービスと社会的ニーズの広がり

「スキマバイト」は一般的に、パートやアルバイト従事者が本業や生活の合間など、空いている時間を活かして働く形態を指します。メルカリ ハロは、フリマアプリの膨大なユーザーベースを活用し、多くの人が「試しにやってみようかな」と感じられる敷居の低いプラットフォームとなりました。
一方で、法令違反や「闇バイト」対策等、社会的課題にも真摯に向き合い、求人審査や利用者管理を強化。その過程で、中小企業や個人事業主にも求人の間口を広げる施策を次々に導入していきました。

利用者の声と運営の工夫

利用体験アンケートでは「満足」と答えたユーザーが7割を超え、利用者の多くが「報酬の即時受け取り」「シンプルな応募手順」「気軽に試せる働き方」といった点を高く評価していました。企業側も、人手不足解消、急なシフト対応、即戦力獲得などの観点から導入事例が増加しました。
サービス運営側は、こうした社会的役割拡大を受け、「働く(=時間・スキル)の循環」を加えた新たな経済エコシステム作りも意識していました。

なぜ短期間で急成長し、そして撤退に至ったのか?

このように非連続の成長をみせたメルカリ ハロが、開始から1年半あまりで事業撤退を決断したのはなぜでしょうか。
公式発表・ニュース報道によれば、その背景には市場環境の変化サービス利用状況の推移などの複合的かつ総合的な判断があったとされています。

  • スキマバイト市場の急速な拡大に伴う競争激化(専門業者や大手求人サービスの参入)
  • 利用者の定着・稼働率やマッチング効率の壁
  • 求人の質や量、運営負担の増加
  • 法令順守や安全対策にかかるコスト・体制への負担
  • 本業であるフリマ事業や金融サービスとの経営資源配分見直し

これらを踏まえ、「メルカリ ハロ」が社会にもたらした意義は大きい一方、継続的かつ安定的なサービス運営体制を維持する上では難しさがあったことがうかがえます。

市場・社会に残したインパクト

「メルカリ ハロ」は短期間で数多くの利用者と求人を生み出し、スキマバイトという新しい働き方の浸透に寄与しました。また、他社業界参入や様々なバイトアプリの進化、多様な雇用形態の確立を加速させた存在でもありました。
サービス終了は惜しまれるものの、その経験は日本の「スポットワーク」「ギグワーク」業界全体にとってもかけがえのないものとして残ります。

終わりに:働き方の多様化は続く

メルカリ ハロが掲げてきた「だれでも、すぐに、かんたんに」の理念や、登録者・求人企業側のポジティブな体験・ノウハウは今後も形を変えて業界のどこかで活きることでしょう。スキマバイト市場は今後も進化を続け、「自由で柔軟な新しい仕事の形」は社会の一部として根付きつつあります。
今後もさまざまな企業やサービスが誕生し、より安全に・便利に“スキマ時間”の活用が進んでいくことが期待されます。

参考情報

  • メルカリによる公式発表・サービス実績データ
  • 各種報道:オリコンニュース 他
  • スポットワーク協会による市場推計、業界動向

参考元