大阪・関西万博「船で行ける万博」構想の現実
2025年10月、大阪府が推進した「船で行ける万博」構想が、187億円にものぼる税金の投入にも関わらず、期待された成果を得ることなく幕を閉じ、今、世間の大きな関心と議論を呼んでいます。「船着場」というインフラ投資の意味、行政の責任、そして今後のまちづくり戦略について、わかりやすく解説します。
「夢洲」万博会場と水上アクセスの夢
大阪・関西万博は、海に囲まれた「夢洲(ゆめしま)」で開催され、市内や南部の堺市など、さまざまなエリアと船で結ぶアクセス強化を大きな目玉として掲げていました。
このプロジェクトにより、「船で行ける万博」「水都大阪のシンボル」として、観光と実用の両面から話題を集めました。
- 堺・天保山・中之島・十三など複数の船着場が整備され、新規航路も設定
- 「ミャクミャク号」「まほろば」など環境対応型の新造船も登場
- 利便性・観光・将来の大阪港発展への期待が高まっていた
187億円もの投資、その行方
具体的には、国・大阪府・大阪市が協力し合い、合計で187億円という莫大な公費を投入。不況や財政課題が叫ばれる中、市民にとって決して小さくない金額でした。
- 「十三船着場」などいくつもの新設・改修を実施
- 目標は年間30万人の利用とされていたが、後に目標表記自体がひっそり削除される
- 期間中、定期船の就航が叶わず、実際には満足できる運転実績が出なかった
- インフラのみが残り、「ムダな船着場」と揶揄されている
行政側の「沈黙」と市民からの批判
残念ながら、船着場と航路が想定に反し、実質的に活用されなかったことが明らかになると、次第に行政・自治体からの公式な説明や謝罪が聞かれなくなりました。
- 万博終了後、国・大阪府・大阪市いずれも責任ある説明はなく「沈黙」が続く
- 期待を持たせただけで終わり、再開発や交通戦略の見直し・費用対効果に疑問の声
- 「船で行ける万博」は理想で終わってしまったとする記事や市民の投稿が相次ぐ
メディアが伝える“万博の大誤算”
報道によると、堺行き「ミャクミャク号」や水素船「まほろば」は一時話題を集めたものの、航路の満席情報が錯綜するなど、乗客・運行ダイヤと現実とのギャップが徐々に顕在化しました。
結果的に「成功」の見せ方だけが先行し、大規模インフラの有効活用策は示されないままでした。
- 特設サイトやPRイベントなどにも相当な広告費が投じられている
- 運行が一部にとどまり、多くの船着場は空白のまま万博閉幕に至った
- 「結局187億円は何に使われたのか」との疑念が残った
市民生活・次世代への影響
今回のような公共インフラの投資は、「将来世代にどんな価値を残すのか?」という視点で語られます。
- 少子高齢化が進む中、無駄な公共投資は将来世代へのツケとなりうる
- 大阪府や市の財政状況をみれば、他の社会保障や教育分野へ使いたいという声も決して少なくない
- 今後は、こうした大型プロジェクトの進め方・成果検証がますます注目される
なぜ「船で行ける万博」はうまくいかなかったのか?
関係者や有識者は、いくつかの課題を指摘しています。
- 夢洲を囲む海の潮流・波の影響、気象リスクによる運行通行の難しさ
- 平時からの需要・生活路線としての定着が見通せなかった
- 陸上アクセス(鉄道・道路)が予想以上に整備されたため、わざわざ船を使う必要性が薄れた
- 万博運営側の計画や需要予測に甘さや見通しの誤りがあった指摘
- 広報・利用誘導策も十分機能しなかった
現場の今、残されたもの
取材に基づき、現地「十三よどガヤテラス」「中之島GATEサウスピア」などの船着場は、静かなまま。まさに「ムダ」の象徴と揶揄されかねない状況が続いています。
- 毎日の利用者はほとんどいない、維持費だけが今後もかかっていく
- 初期の式典では知事や市長らがテープカット、地元の期待もあったが、今は人影まばら
- 「活かす方法を市民も一緒に考えるべき」という声も出始めている
市民・利用者の声
SNSや各種アンケートでは、下記のような声が集まっています。
- 「船で大阪の景色が楽しめるのは魅力だったが、お金がかかりすぎでは」
- 「普段使いできない場所に作っても意味が薄い」
- 「子供や家族連れが利用しやすい価格や本数、運行体制だったのか再検証が必要」
- 「行政は失敗を認めて、次に活かしてほしい」
今後の課題と展望
失敗とされる公共事業も、無駄にし続けてはなりません。大阪湾沿岸地域の再興や観光・物流など、船着場を利活用する道を官民で模索する姿勢が求められています。
- 観光船やイベント利用、アウトドア拠点など民間活用策への転換を検討
- 市民やNPOの提案・協力による新しい使い方の実験
- 課題・教訓を他都市や今後の万博にしっかり伝える努力
まとめ:「船着場」の教訓を大阪の未来へ
187億円の「船着場問題」は、多くの市民にとって「行政の説明責任」「大型公共事業の適正な進め方」への関心を高める契機となりました。
万博の成功・失敗に関心が集まるほど、こうした足元の課題と丁寧に向き合い、未来への教訓とする姿勢が問われています。
今後、大阪府・大阪市・日本社会全体が、税金の使い道に納得できるプロセスと成果を、より一層求められることでしょう。