5年ぶりの奇跡の復活を果たした「バカリズムのワンカット紀行」

2025年10月13日、テレビ東京の深夜枠に待望の番組が帰ってきました。2020年まで3年半にわたりBSテレ東で放送され、多くの視聴者から愛された「バカリズムの30分ワンカット紀行」が、「バカリズムのワンカット紀行2」として地上波で復活を遂げたのです。5年という歳月を経て、番組は新たな挑戦とともに視聴者の前に姿を現しました。

番組はMCにバカリズム、アシスタントに齋藤飛鳥を迎え、10月13日と14日の2夜連続で放送されました。第1夜は「復活!ずーっと繋がっている紀行番組」、第2夜は「齋藤飛鳥とディープな西荻窪の夜」というテーマで、それぞれ深夜0時30分から25時まで放送されました。

「編集の放棄」から「撮影の放棄」へ

この番組の最大の特徴は、そのユニークな制作手法にあります。もともと「バカリズムの30分ワンカット紀行」は、編集を一切せずにワンカット撮影で街の魅力を伝えるという斬新なコンセプトで話題を集めました。緻密に計算された台本を元に、街の人たちが出演者となり、カット割りなしの長尺撮影で番組を構成する手法は「遂にテレ東は編集をも放棄した」と大きな反響を呼びました。

そして今回の復活にあたり、番組はさらなる革新に踏み出しました。それが「撮影の放棄」です。5年前の放送終了時点から現在まで、撮影技術は飛躍的な進化を遂げました。特にスマートフォンのカメラ性能は格段に向上し、当時プロ用の機材でしか撮影できなかった映像が、今では手軽にスマホで撮影できる時代になったのです。

番組プロデューサーである株木亘氏(テレビ東京制作局)は、この進化に着目しました。「5年前よりVTRの内容が格段にパワーアップしています」と語る株木氏は、街の人たちがスマホをリレー形式で受け渡しながら撮影するという、まったく新しい手法を導入したのです。

スマホならではの機動力を活かした撮影

スマートフォンの最大の利点は、その軽量さと機動力の高さです。従来のプロ用カメラでは不可能だった撮影アングルや、狭い路地での撮影も、スマホなら容易に実現できます。街の人たちが次々とスマホを受け渡しながら撮影を続けることで、5年前では決して実現できなかった斬新な映像が次々と生まれていきました。

株木プロデューサーは「スタッフ一丸になって知恵を絞って考えた新しい撮影手法が満載です」と自信を見せており、「どうやって撮影しているんだろう?」と謎解き感覚で2度3度と見ていただくのも楽しいと思います、と視聴者に複数回の視聴を推奨しています。

バカリズムの熱い想いと齋藤飛鳥の起用

番組の復活について、MCを務めるバカリズムは非常に喜んだといいます。株木プロデューサーは「企画が通ってバカリズムさんに『地上波で復活します!』と伝えたらめちゃくちゃ喜んでもらえたのがすごく印象的でした」と当時を振り返っています。バカリズム自身も「このフォーマットは完全なるテレビの発明」と番組の独創性を高く評価しており、復活への強い思い入れが感じられます。

今回の復活版では、アシスタントとして齋藤飛鳥が起用されました。第2夜では「齋藤飛鳥とディープな西荻窪の夜」というタイトルで、齋藤が番組の中心的な役割を担いました。西荻窪という東京でも独特の文化を持つ街を、齋藤飛鳥とともに巡る内容は、視聴者に新鮮な驚きを提供したことでしょう。

街の人々が主役の番組作り

「バカリズムのワンカット紀行2」のもう一つの大きな特徴は、街の人々が単なる脇役ではなく、番組の主要な構成要素となっている点です。出演者として「街のみなさん」がクレジットされ、撮影も「街の皆さん」が担当します。

これは単なる演出ではありません。街の人たちが自らスマホを手に取り、自分たちの街の魅力を伝えるために撮影に参加する。この参加型の番組作りこそが、「ワンカット紀行」シリーズの真骨頂なのです。緻密に計算された台本に沿いながらも、街の人々の自然な表情や反応が番組に温かみを与え、他の旅番組では決して味わえない独特の雰囲気を生み出しています。

「ずーっと繋がっている」不思議な紀行番組

番組のキャッチフレーズは「ずーっと繋がっている不思議な紀行番組」です。これはワンカット撮影の特性を端的に表現した言葉で、番組全体が一つの流れで繋がっているという、他の旅番組にはない独特の視聴体験を約束しています。

通常の番組では、編集によって時間や空間が自由に操作されますが、ワンカット撮影ではそれができません。撮影開始から終了まで、時間は確実に流れ続け、空間も連続しています。この制約こそが、視聴者に「本当にその場所を歩いている」かのような臨場感を与えるのです。

地上波での放送が持つ意味

前シリーズがBSテレ東での放送だったのに対し、今回は地上波のテレビ東京での放送となりました。これは番組にとって大きな前進です。より多くの視聴者に番組を届けられるだけでなく、地上波という制約の中で、どこまで実験的な試みができるかという新たなチャレンジでもあります。

深夜0時30分からという放送時間は、テレビ東京が実験的な番組を放送する枠として知られています。この時間帯だからこそ、「撮影も放棄」という大胆な試みが可能になったとも言えるでしょう。

SNSでの反響と番組の今後

番組は公式X(旧Twitter)アカウント「@onecut_journey2」を開設し、視聴者との交流を図っています。放送前から話題となっていた番組復活のニュースは、SNS上でも大きな反響を呼びました。

「バカリズムさんの新しい企画、絶対面白そうですね」といったコメントが寄せられるなど、5年ぶりの復活を待ち望んでいたファンの期待の高さが伺えます。また、「どうやって撮影しているんだろう?」という謎解き的な楽しみ方を提案する番組側の戦略も、SNS時代の番組作りとして非常に効果的です。

テレビ番組の新たな可能性を示す試み

「バカリズムのワンカット紀行2」は、単なる旅番組の復活以上の意味を持っています。それは、テレビ番組制作の常識を覆し、新たな可能性を示す実験的な試みなのです。

「編集を放棄」し、さらに「撮影も放棄」する。一見すると番組制作の根幹を否定しているかのようなこの手法は、実は制作者と視聴者、そして街の人々との新しい関係性を構築しようとする挑戦です。プロの手を離れ、一般の人々が番組制作に参加することで、より身近で親しみやすい、そして予測不可能な面白さが生まれるのです。

スマートフォン技術の進化がこの番組を可能にしたように、技術の発展は常に新しい表現の可能性を生み出します。「バカリズムのワンカット紀行2」は、そうした技術と創意工夫が融合した、まさに2025年らしい番組と言えるでしょう。バカリズムが「完全なるテレビの発明」と評するのも、決して大げさではないのかもしれません。

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