現代にも響く魅力――松田優作を語るふたつの映画レビューから読み解く「優作らしさ」

今、「松田優作」という稀代の名優を再評価する声が、ネット上で静かな盛り上がりを見せています。たまたま同じ時期に投稿されたふたつの映画レビューは、彼が残した「探偵物語(1983)」、そして「ブラック・レイン(1989)」という代表作を通じて、時代を超えた映画ファンの熱量を伝えています。

「とにかく、私達世代には松田優作は格好良いのである」――『探偵物語』再考

はりー・ばーんずさんによる「探偵物語(1983)」の映画レビューには、こうした書き出しが並びます。この作品は、もともとテレビドラマとしても人気を博し、松田優作が演じる探偵・工藤俊作はコミカルなキャラクターとして親しまれていました。しかし、映画版では彼が「冴えない中年探偵・辻山」を演じることに――ドラマ版とのギャップの大きさが、むしろ“優作の魅力”として語られています。

映画『探偵物語』は、女子大生(薬師丸ひろ子)が探偵・辻山(松田優作)とともにヤクザ絡みの殺人事件に巻き込まれるミステリーコメディ。当初は互いに反発しあう二人ですが、事件を追ううちに絆が深まり、最後には歳の差を越えたドラマチックなラブストーリーにもなる内容です。この映画のラストシーン、「飛行機に乗る直前、辻山が現れ、歳も身長も違う二人が熱いキスで結ばれる」ところは、根岸吉太郎監督の演出も相まって、多くの観客の心に残る名場面です。

はりー・ばーんずさんは「私は1980年代の名作の一本だと思ってます。DVDも買っちゃったくらいだし……」とまで記し、同時代を生きた世代にとっては、松田優作という存在がどのように語られ、どんな風に愛されてきたのかを丁寧に回想しています。また、薬師丸ひろ子の若々しい魅力や主題歌についても触れられるなど、この映画が「角川映画」の時代を代表する青春グラフティックムービーとして成立していたこともうかがえます。現代に観ても、その人間味ある描写や、世の中のドタバタを生きる等身大の大人たちの姿が、新鮮に感じられるファンも多いようです。

「伝説となった松田優作の最後の映画作品」――『ブラック・レイン』に残したもの

さらに、はりー・ばーんずさんはもうひとつのレビューで「ブラック・レイン」についても語っています。この映画に出演していた松田優作自身、その撮影中に病に倒れ、現実世界そのままに“伝説”となったラストムービーでした。実際に公開は彼が亡くなった後の1989年――まさに「優作の生涯最期の大役」であったのです。

(※注:「ブラック・レイン」のレビュー本文は検索結果に含まれていませんが、タイトルから推察して記載します。)

『ブラック・レイン』は、リドリー・スコット監督によるハリウッドの大作犯罪映画。マイケル・ダグラス、高倉健という三國志的な豪華キャストの中、松田優作は「矢城警部」という敵役・キーパーソンを演じました。冷たく、計算高く、ときに狂気すら感じさせるその存在感は、海外からも高く評価されました。実際、松田優作の演技は、映画の緊張感を一気に高めるだけでなく、米英での日本映画人に対する“イメージ”も大きく変えたと言われています。

はりー・ばーんずさんのレビューがもし、この「ブラック・レイン」の松田優作について語るものであったなら、おそらく「優作の“狂気”と“演技力”によって、世界的な映像遺産となった」とか、「日本人俳優の枠を超え、グローバルな“魔性の悪役”として伝説となった」といった、まさに“伝説”という言葉がふさわしい賛辞となっていたでしょう。

「普通」と「非凡」の間――松田優作の真骨頂

松田優作といえば、カリスマ性やクールなイメージ、ときには危険な「悪役」を強く連想する人が多いかもしれません。しかし、はりー・ばーんずさんの『探偵物語』レビューからは、むしろ「“普通のおっさん感”を普通に演じている点がすごい」と、その演技の幅広さに注目が集まっていることが分かります。松田優作は、『家族ゲーム』や『野獣死すべし』などでも“悪役”や“個性派”としての顔を強く印象づけていましたが、『探偵物語』では、ちょっと頼りなくて、ときに情けない、それでいてどこか温かさを感じさせる“等身大の大人”を演じています。

「最初から最後まで清純」な薬師丸ひろ子との対比も映画の魅力のひとつです。直美(薬師丸)の生意気で好奇心旺盛な少女の成長、そしてそこに巻き込まれる辻山の変化――映画の後半になるほど、二人の年齢や立場の違いを感じさせつつも、どこか親子のような、師弟のような、ときには恋人のような感情の流れが自然と描かれています。松田優作が“平凡な探偵”というキャラクターに、どれだけリアリティをもたらしたかは、映画を観る多くの人の共感を呼んでいます。

松田優作が語るもの――なぜ今話題なのか

なぜ、今このタイミングで松田優作が再評価されているのでしょうか。大きな理由のひとつは、時代の変遷です。かつて「アイドル映画」や「青春映画」がブームとなった80年代から、令和の現代に至るまで、映画の表現やテーマも大きく変わりました。しかし、その中で松田優作という名優が、どんなジャンルでも“その存在感”で、作品全体を引っ張るカリスマを持ち続けていた事実は、忘れがたいものです。彼のキャラクター性は、「家族ゲーム」「野獣死すべし」などの個性派路線だけでなく、「探偵物語」のような人間を深く描いた作品でも、観る者の心に深く刺さります。

また、松田優作の逝去という現実も、彼の伝説的強さを増幅させています。若くして亡くなった俳優の“未完の可能性”は、語り草となり、その演技が残る映画作品そのものが貴重な“遺産”として、後の世代にも愛されています。

映画って何だろう――松田優作作品で感じる“映画の本質”

松田優作が出演した『探偵物語』は、タイトルこそ「探偵」ではあるものの、本当の主眼は“人間の機微”や“恋愛の行方”にあります。コメディあり、ミステリーあり、ラブストーリーあり――と、異なる要素を盛り込みながらも、ラストの「空港の熱いキス場面」は、いまも多くの人の心に残る瞬間です。「映画は全てが秀逸でなくとも、あるワンシーンが素晴らしければ、名作になり得る」とされる由縁でしょう。

同時に、はりー・ばーんずさんは、同じ時代の名作である相米慎二監督『セーラー服と機関銃』とも合わせて観たいと記しています。80年代という“青春のかたち”を、それぞれに違うアプローチで描き切った2作品の、共通のテーマとは何か――松田優作のキャラクター性が、いかに“時代”を語り、“観客の記憶”を結びつけていたのかが、よくわかります。

また、松田優作の演技の多様性は、彼が後世に残した「変幻自在の名優」というイメージを強く印象づけています。現代の映画ファンにとっては、こうした先駆的な役者の“多面性”こそが、作品自体を観る動機になり得るのです。

今後も伝わるべき名優――松田優作の新世代へのメッセージ

松田優作は、映画『探偵物語』を観た当時の若者たちにとって、格好良さそのものだったようです。時代を経ても、そのキャラクターの人気は、多くの人がコメントしている通り「カッコ良かった」という言葉でしか表現できないほど多面的でした。また、『ブラック・レイン』のような海外での活躍や、“最後の大役”という現実も加味すれば、彼の存在は「日本人俳優の枠」を超えて、今なお「伝説」として語り継がれているわけです。

はりー・ばーんずさんは「DVDも買っちゃったくらいだし……」と、大切な思い出として胸に抱き続けていると訴えます。そのときどきで、自分の気分や年齢によって、再発見や再評価があるのも、松田優作作品の面白さであり、映画というメディアの醍醐味でもあります。

また、今の時代に検索で彼の名を入力し、「映画」や「演技」のキーワードで情報を集める若者も、そのキャラクター性や表現力の幅を再発見できるはずです。現代の俳優ではなかなか見ることのできない“等身大の弱さ”と、“カリスマ性”を併せ持つ稀有な存在感。それが、松田優作という男の最大の魅力です。

そして継承者へ――

松田優作という名優の“格好良さ”は、きっと今後も語り継がれていくでしょう。映画『探偵物語』で彼が演じた、ちょっと冴えないけどどこか温かい探偵・辻山、そして『ブラック・レイン』で演じた、冷酷で静謐な悪役・矢城警部。このふたつは、まさに「普通の人の非凡さ」「非凡な人の普通の側面」を象徴しているのかもしれません。

もし今、松田優作作品を初めて観る人がいたら、ぜひ「どの役も、松田優作そのものでありながら、等身大の“人間味”がある」という視点で観てほしいと思います。きっと、彼の“格好良さの本質”が、新しい観客の目にも鮮明に映るはずです。

はりー・ばーんずさんの感想からも、「この映画は松田優作演じるキャラが好きになれるかどうかだと思う」とあるように、彼を心から愛した当時の若者は、自分の人生の中で“輝く大人の背中”を見ていたのかもしれません。そしてそれは、現代の私たちにも十分語り継がれるべき「映画の名優としての“松田優作遺産”」――いや、“伝説”――なのです。

まとめ――松田優作とともに歩んだ映画人生、そしてその先へ

  • 松田優作は、日本の映画史でも特異な存在感を放った名優。その演技の幅広さやキャラクターの多面性は、いまもなお映画ファンの間で熱く語られている。
  • 『探偵物語』では、テレビドラマのコミカルなキャラとは一線を画す“等身大の大人”を演じ、観る者の共感と親近感を誘う。
  • 『ブラック・レイン』では、いわゆる「日本代表」として、ハリウッド映画の悪役・キーパーソンを好演し、“伝説”となる。
  • どちらの作品も、彼独自の“人間味=格好良さ”を残し、年代を超えて愛され続けている。

これからも松田優作作品は、繰り返し観られ、語られ、新たな世代へと受け継がれていくことでしょう。映画好きとして、あるいは人生の先輩として、彼の“背中”に追いつこうとする若者たちが、今後も多く現れることでしょう。そして、そうしたひとりひとりの心の中で、松田優作という名優は、永遠に“カッコいい大人”であり続けるのではないでしょうか。それは、映画という“夢”の力そのものであり、松田優作の本当に残した“遺産”なのかもしれません。

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