自民党新総裁・高市早苗氏誕生で注目される給付金政策

2025年10月4日、自民党総裁選の決選投票が行われ、高市早苗氏が第29代総裁に選出されました。決選投票では小泉進次郎氏と争い、高市氏が185票を獲得し、156票の小泉氏を上回って勝利しました。これにより、10月15日に召集される臨時国会で日本初の女性総理大臣が誕生する見込みとなっています。

今回の総裁選では、物価高対策や給付金政策が大きな争点となりました。特に国民の関心を集めているのが「国民一律給付金はどうなるのか」という点です。石破政権が表明していた国民1人あたり2万円の一律給付金は実現するのか、それとも別の形での支援策が打ち出されるのか、多くの国民が注目しています。

国民一律給付金の実現可能性

結論から言えば、石破政権が掲げていたような国民1人あたり2万円の一律給付金は実現が難しいとみられています。高市新総裁は総裁選で積極財政と物価高対策を強調していましたが、一律給付金ではなく、より効率的な支援策として「給付付き税額控除」の導入を掲げています。

一律給付金が見送られる理由として、財源の問題が大きく挙げられます。全国民に一律で給付を行うには莫大な予算が必要となり、財政負担が大きくなります。そのため、本当に支援が必要な層に効率的に支援を届けられる制度として、給付付き税額控除が注目されているのです。

給付付き税額控除とは何か

給付付き税額控除とは、所得税から一定額を控除し、納税額の少ない低所得者に対しては控除しきれなかった分を現金給付で補う制度です。この制度の特徴は、所得に応じて支援の度合いが変わる点にあります。

具体的には、一定の所得以下の方に対して税額控除を行い、そもそも納税額が少ない、または納税していない低所得世帯に対しては、控除額との差額を現金で給付するという仕組みです。これにより、一律給付よりも少ない財源で、本当に困っている中低所得層を効果的に支援できるとされています。

住民税非課税世帯は1人あたり4万円もらえるのか

野党第一党である立憲民主党が提示している給付付き税額控除の原案では、1人あたり4万円の給付が基本となっています。この金額は、住民税非課税世帯など所得税を納めていない、または納税額が少ない世帯が対象となる想定です。

ただし、この4万円という金額はあくまでも野党の原案であり、実際に導入される制度の具体的な設計は新内閣が発足するまで明らかになっていません。給付額や対象者の範囲、所得基準など、詳細な制度設計はこれから議論されることになります。

3党協議の進展

注目すべき点として、2025年9月26日には自民党、公明党、立憲民主党の3党による協議が行われています。給付付き税額控除については、与野党を超えて前向きな姿勢が示されており、制度導入に向けた議論は加速する見込みです。

総裁選で高市氏と最後まで争った小泉進次郎氏も給付付き税額控除を公約に掲げていたことから、党内でも支持が広がっています。このような状況を考えると、給付付き税額控除の導入は現実味を帯びていると言えるでしょう。

高市新総裁が掲げる物価高対策

高市新総裁は10月4日の就任会見で、物価高対策について具体的な方針を示しました。給付付き税額控除に加えて、以下のような対策を打ち出しています。

ガソリン・軽油価格の引き下げ

高市氏はガソリンと軽油の暫定税率廃止の法案を臨時国会に提出すると表明しました。施行までの間は、既存の基金を活用して価格を引き下げる方針です。これは、物価高の中でも特に国民生活に直結するエネルギー価格への対応として、早急に実施される見込みです。

中小企業への支援

赤字企業や小規模事業者が賃上げ税制を活用できない現状に対して、高市氏は交付金を活用し、自治体から補助金を出す仕組みを検討すると述べています。また、農林水産業への支援も急務として位置づけられています。

医療・介護施設への緊急支援

病院の7割が赤字に陥り、介護施設の倒産が過去最多となっている状況を受けて、補正予算で緊急に対応するとの方針を示しました。これらの施設は国民の生活に欠かせないインフラであり、早急な支援が必要とされています。

給付付き税額控除の課題と今後のスケジュール

高市新総裁は給付付き税額控除を「中低所得層を支援する有効な方法」と評価する一方で、制度設計には数年単位の時間が必要だと述べています。これは、給付付き税額控除が単なる現金給付とは異なり、税制全体に関わる複雑な制度だからです。

制度設計の難しさ

給付付き税額控除を実施するには、個人の所得情報を正確に把握し、適切な控除額や給付額を計算するシステムが必要です。マイナンバー制度などの情報連携インフラが基盤となりますが、セキュリティや個人情報保護の観点からも慎重な設計が求められます。

また、どの所得層までを対象とするか、控除額や給付額をいくらに設定するか、年収基準をどう定めるかなど、決めるべき事項は多岐にわたります。これらの詳細について、政調会で検討を進める意向が示されています。

当面の対応策

給付付き税額控除の本格導入には時間がかかるため、それまでの間の緊急対策として、補正予算による支援が検討されています。高市氏は会見で「すぐ対応できることをまず実施する」と述べており、財源については税収の上振れ分や基金の残高を組み合わせる考えを示しています。

消費税減税の行方

物価高対策として一部で期待されていた消費税減税については、高市新総裁は慎重な姿勢を示しています。「自民党税調で多数意見とならず、公約にも盛り込まれなかった」と述べる一方で、議論の継続自体は否定しませんでした。

消費税減税は国民の負担を直接的に軽減できる施策ですが、国の財源に与える影響が大きく、また減税の恩恵が高所得層にも及ぶため、低所得層への支援としては効率が良くないという指摘もあります。このため、当面は給付付き税額控除を中心とした支援策が進められる見通しです。

企業や個人事業主への影響

高市政権の政策は、企業経営者や個人事業主にとっても注目すべき内容となっています。特に「ものづくり補助金」や「新事業進出補助金」などの既存の補助制度が今後どう変わるのかは、事業計画に直結する重要な要素です。

高市氏が掲げる積極財政の姿勢からは、企業への支援策も拡充される可能性があります。特に賃上げを実施する企業への支援や、中小企業向けの補助金制度の充実が期待されています。

まとめ

高市早苗新総裁の誕生により、日本の経済政策は新たな局面を迎えます。国民1人あたり2万円の一律給付金は実現が難しいとみられますが、その代わりに給付付き税額控除という、より効率的な支援策の導入が進められる見込みです。

住民税非課税世帯などの低所得層に対しては、野党案では1人あたり4万円の給付が想定されていますが、具体的な制度設計はこれからとなります。制度の本格導入には数年単位の時間がかかるため、それまでは補正予算による緊急支援が実施される予定です。

ガソリン・軽油価格の引き下げや、医療・介護施設への支援、中小企業への補助など、多岐にわたる物価高対策が打ち出されており、今後の具体的な施策の展開が注目されます。新政権の政策が、物価高に苦しむ国民生活をどのように改善していくのか、引き続き注視していく必要があるでしょう。

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